
貯金できないのは意志の弱さ?──認知機能が決めるお金との距離感
貯金できないのは意志が弱いからではない。脳の情報処理の仕様がお金の扱い方を構造的に決めている。
意志力に頼ると破綻する
今月こそ貯金するぞと決意して、3ヶ月後もちゃんと続いている人はどのくらいいるだろう。正直、かなり少数派だと思う。1月に立てた貯金目標が3月まで生き残っている確率は、ダイエットの目標と同じくらい低い。
節約本やFPのアドバイスは家計簿をつけましょう、固定費を見直しましょう、先取り貯金しましょうで大体まとまる。言っていることは正しい。誰も異論はない。でもそれを実行して継続できるかどうかは、本人の意志力とは別の問題だったりする。この当たり前のことに、FPの多くは言及しない。意志力があれば誰でもできるのに──という前提でアドバイスしているからだ。
弊社の診断ユーザーにアンケートを取ったとき、お金の管理に困っていると答えた人の認知タイプには明確な偏りがあった。Se型とNe型で約6割を占めていた。逆にSi型でお金に困っていると答えた人は2割以下。この偏りは偶然ではなく構造的なものだ。
これは性格が良い・悪いの話ではない。認知機能がお金との距離感を構造的に決めているという話であり、だからこそ意志力ではなくOS に合った仕組みで対策すべきという結論になる。
OS別のお金との付き合い方
タイプごとにお金の使い方のクセがある。まずは自分のパターンを知るところから始めよう。
Se型:今を全力で生きる人
Se(外向的感覚)型は、今この瞬間の体験に全力投資する。旅行、ライブ、おいしいレストラン、新しいガジェット。五感で味わえるものにお金を使うことが最大の喜びで、体験の質に妥協しない。
Xで貯金できないを検索すると、Se型っぽい投稿がたくさん出てくる。今月のライブ代で貯金が消えた。でも後悔はしてない──とか、経験にお金を使うのは投資──とか。この感覚はSe型の脳の仕様としては完全に正常なのだ。体験を通じて世界を理解するのがSe型なのだから、体験にお金を使うのは呼吸するのと同じくらい自然な行為。
問題はSe型の脳が将来という概念をリアルに感じにくいこと。半年後の自分は抽象的すぎて動機にならない。だから老後のためにと言われても行動が変わらない。危機感がないのではなく、将来という情報のフォーマットがSe型の脳に合っていないだけだ。
Ne型:可能性に投資する人
Ne(外向的直感)型は、新しい可能性にワクワクしてお金を投じる。オンライン講座、副業の初期投資、資格の参考書、気になったセミナー。これをやったら何か変わるかもしれないというポテンシャルにお金が流れる。
知恵袋にも色々始めたけど全部中途半端でお金だけ使ったという相談がかなりある。Ne型は新しいことに着手する瞬間のワクワクが最大値で、継続しているうちに興味が薄れていく。結果として投資の回収ができないまま次の可能性に飛びつく。3つの副業を同時に始めてどれも3ヶ月で飽きた──これはNe型あるあるだ。
Ne型の勉強欲と好奇心は素晴らしい資質なのだが、お金の文脈では散弾銃のように予算が分散してしまう。
Ni型:貯めすぎる人の問題
Ni(内向的直感)型は逆のパターンを見せる。将来の不安を先読みするから、必要以上に貯め込む傾向が強い。もしもの時のためにが口癖で、旅行や趣味にお金を使うことに罪悪感を覚える。
これはこれで問題だ。今の生活の質を犠牲にして将来に備え続けると、人生の充実度が下がる。貯金額の数字だけ見れば優秀だが、結局何のために貯めているのか分からなくなったというNi型の声も少なくない。手段と目的が入れ替わってしまっている。
Ni型には、使う許可を自分に出すという逆の処方が必要になることがある。
Si型:コツコツ型の罠
Si(内向的感覚)型は習慣の力が強いから、一度貯金のルーティンを組んだら地道に続けられる。家計簿も続くし、固定費の見直しも計画的にやれる。FPのアドバイスが最もハマるのはSi型だ。
ただ落とし穴もある。Si型は予定外の出費にパニックになりやすい。冠婚葬祭、急な故障、想定外の医療費──こうした突発的な支出が発生すると精神的なダメージが大きい。ルーティンが崩れること自体がストレスになる。 想定内なら無敵だが、想定外に弱い。
OS別の貯蓄設計
パターンが分かったら、OSに合った仕組みを作る。意志力ではなくシステムで解決するのが鉄則だ。
Se型:体験予算を先に確保
Se型に我慢して貯めろは逆効果。我慢するとストレスが溜まって、限界を超えた瞬間に爆買いが起こる。抑圧からのリバウンドはダイエットと同じ構造だ。
やるべきは体験予算を先に確保してしまうこと。給料日にライブ・旅行枠として3万円(金額は人それぞれ)を最初に取り分け、残りのうち決めた額を自動積立に回す。使う楽しみを奪わずに、余った分が自然に貯まる仕組みにする。
ポイントはSe型にとって使える金額が明確なほうが安心するということ。全体を漠然と管理するより、体験用・生活用・貯蓄用と使途別に分けたほうが脳にフィットする。先延ばし癖の対策でも同じ原則を書いたが、OSに逆らわない設計が長続きする。
Ne型:自動化して脳を外す
Ne型は意思決定の回数を減らすのが鍵。毎月の貯金額を自分で判断して振り込む方式だと、今月はちょっと余裕ないしいいかが頻発する。
天引き・自動積立・ロボアドバイザーのような、判断を介在させないシステムが最適解。一度設定したら存在を忘れるくらいでちょうどいい。Ne型は新しいシステムを導入すること自体にはワクワクするから、その初動のエネルギーを使って自動化を一気に設定してしまうのがコツだ。
サブスクの管理も要注意。Ne型は面白そうで入会して、存在を忘れて課金が続くパターンが多い。3ヶ月使わなかったら自動退会という仕組みがあれば最高なのだが、そうなっていないのでカレンダーにリマインダーを入れておく。
Ni型:使う下限を設定する
Ni型には逆のアプローチが効く。月に最低○○円はお楽しみに使うという下限を設定する。上限ではなく下限だ。使わなかったら自分を叱るくらいの気持ちで。
Ni型は不安から貯め込む傾向があるが、人生の質を上げる使い方を意識的に練習すると、将来不安が減ることもある。現在を楽しめている実感があると、未来への不安が相対的に小さくなるからだ。
全OS共通の原則
共通して言えるのは、OSを変えようとするのではなく仕組みをOSに合わせること。Se型にもっと先のことを考えろと言うのは、右利きの人に左手で書けと言うようなもので、出来なくはないが消耗する。
習慣化できない性格の対策でも同じ原則を書いたが、脳の仕様に逆らうアプローチは必ず破綻する。仕様に乗っかるアプローチは長続きする。
パートナーとの相性問題
お金の問題は個人だけで完結しないことが多い。同棲や結婚をしていれば、パートナーとの金銭感覚の違いがストレスの火種になる。そしてこの金銭感覚の違いも、OSで説明がつく。
Se×Ni型カップルの衝突
Se型が今を楽しむために使い、Ni型が将来のために貯める。この組み合わせはカップルのお金の揉め事の定番パターンだ。Se型は使いすぎだと言われ、Ni型はケチすぎると言われる。どちらも自分のOSに従って合理的に行動しているだけなのに、相手からは非合理に見える。
解決策は、家計をOS別に設計すること。共通口座に固定費と貯蓄分を先に入れてしまい、残りを各自のフリー枠にする。Se型はフリー枠の中で自由に使えばいいし、Ni型は共通口座の貯蓄が増えていくことで安心を得られる。おたがいのOSを否定せず、システムで共存する。
恋愛相性の設計でも書いたが、価値観の違いは敵ではなく補完だ。お金の話も同じ。Se型のおかげで今を楽しめて、Ni型のおかげで将来が保障される。両方の良いところを取れるのがOS不一致カップルの強みでもある。
片方だけ変えようとしない
お金のことで揉めたとき、相手を変えようとする人が多い。もっと節約してほしい、もっと楽しんでほしい──でもOSは変わらない。変えるべきは仕組みのほうだ。
弊社のユーザーの中にも、パートナーとの金銭感覚の違いが診断で構造的に理解できたという声がある。あの人がケチなのではなくNi型だったんだ──という気づきだけで心理的な衝突が半減する。理解すれば責めなくなるし、責めなくなれば仕組みの話に移行できる。
自分のOSと認知スタイルの相性パターンを確認しておけば、パートナーとの衝突ポイントも事前に可視化できる。
お金の問題は往々にして性格の問題として片づけられがちだ。だらしないから貯まらない、計画性がないから──でもそれOSの話だったりする。だらしないのではなくSe型なだけだし、計画性がないのではなくNe型なだけだ。
自分のOSを知って、それに合った仕組みを設計する。意志力に頼らないお金との付き合い方が見えてくると、罪悪感からも解放される。それだけでも診断する価値はあると個人的に思っている。
※本記事は自己分析のフレームワークであり、医療的アドバイスではありません。
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この記事を書いた人
塚田 崇博
Aqsh株式会社 代表取締役
人材業界23年、累計1万人超の面談経験を持つ。ソシオニクス・エニアグラム・ソーシャルスタイル等の性格類型学に精通し、採用・育成・定着を一気通貫で支援。
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