
自分の「トリセツ」を作ろう。チームの生産性を劇的に上げる相互理解のアプローチ
人事担当者やマネージャー陣を含め、何百、千人単位で話を聞いてきて行き着く結論はいつも同じだ。チームがギスギスするのは「メンバー同士の思考のクセの違い」がブラックボックスになっているから、ということに尽きる。
💡 関連記事: 16タイプの基本的な仕組みや仕事への活かし方については、『16タイプ性格診断で分かる才能と適職』で詳しく解説しています。
「新しい家電、説明書を見ずにとりあえずボタンを押す派」ですか? それとも「端から端までマニュアルを読んでから電源を入れる派」でしょうか。
家電なら、壊れてもサポートセンターに電話すれば済みます。 でも、これが生身の人間(職場のチームメンバー)だったら? リセットボタンもサポートセンターもありません。
新しいプロジェクトが立ち上がるたびに初対面のメンバーが集められ、関係構築の時間もなくいきなり成果を求められる。そんな場面が当たり前になった今、お互いのトリセツ(取扱説明書)を持っていないことのリスクは、想像以上に大きいのです。
いま、先進的な組織で注目されているのが、「自分のトリセツを作ってチームで共有する」というアプローチ。そのメリットと、性格診断を使った具体的な作り方をお話しします。
最強チームに共通する「トリセツ共有」
同じ職場で机を並べて仕事をしていると、私たちはどうしても「自分の持っている常識や感覚は、他人も同じように持っているだろう」という無意識のバイアス(思い込み)に陥りがちです。
たとえば、朝礼の場でマネージャーから「みんな聞いてくれ、昨日の〇〇さんのあの神がかったクレーム対応、本当に最高だったよ!」とチーム全員の前で大々的に褒められたとします。 これを聞いて、「やった!みんなの前で承認されて、モチベーションが爆上がりした!今日も頑張るぞ!」とエネルギーが満ち溢れるタイプの人もいれば。 「うわっ……人前で変に持ち上げられて目立つのは、プレッシャーになるし本当に勘弁してほしい。評価してくれるなら、1on1のミーティングでこっそり伝えてほしかった……」と、逆に身縮みしてテンションが下がってしまうタイプの人もいます。
これはどちらの感覚が間違っているわけでもありません。ただ単に心地よいと感じる刺激の種類が違うだけなのです。しかし厄介なことに、こればかりは外側から観察しているだけでは、なかなかその本質を見抜くことはできません。
「良かれと思ってやったことが、信じられないほど完全に裏目に出た」というチーム内の悲しいすれ違いは、往々にしてこうした隠れた地雷や褒められ方の好みが、事前にお互いの間で共有されていないことが原因で起こります。
noteのエッセイでも、リモートワーク特有のこんな悲劇が語られていました。 『チャットで「承知しました。」と必ずマル(句点)付きで送ってくる上司に対し、「怒ってるのかな…」と毎日胃を痛めていた私。半年後の飲み会で実は「チャットは感情を抜いてドライに送るのがマナー」という上司独自の美学だったことが判明し、この半年間の私の心労を返してくれと崩れ落ちそうになりました』
だからこそプロジェクトの初期段階で、「実は私ってこういう人間なんです」「仕事でこういう環境を用意されたり、こういう接し方をされた時が、一番良いパフォーマンスを発揮できます」と、あらかじめ自分の特性を言語化してテーブルのど真ん中に出しておく。 この自己開示による前提条件のすり合わせというプロセスこそが、心理的安全性が高く、メンバー全員がのびのびと才能を発揮できるチームを作るための根幹となるのです。
トリセツに盛り込む4つの必須項目
いざトリセツを作ろうとなったときによくある失敗が、「休日は映画が好きです」「真面目な性格です」なんて、飲み会の自己紹介になってしまうこと。 それでは仕事には使えません。
実務で機能するトリセツには、自分の考え方のクセや感情の動き方にまで踏み込む必要があります。職場での伝わらないストレスの正体も、実はこのクセを知らないまま働き続けていることが原因のことが多いのです。 具体的には、次の4つの項目を言語化してみてください。
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最大のパフォーマンスが出る条件(強み・大好物なシチュエーション)
- 例:「ブレスト会議で、ゼロから突拍子もないアイデアを大量に出すフェーズなら任せてください。逆にルールがカッチリ決まっていると萎縮します」
- X(旧Twitter)ではこんな声も。『「僕は放置されると不安になるので、1日1回は進捗確認のメンションを下さい。逆にマイクロマネジメントは死にます」って新人が最初に宣言してくれて、お互いめちゃくちゃ仕事しやすくなった』
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著しくパフォーマンスが落ちる条件(弱み・絶対に踏んでほしくない地雷)
- 例:「ルーチンワークの細かいミスチェックを延々とやっていると、文字通り死んだ魚の目になります。できれば得意な方にお願いしたいです」
- SNSには『実はHSP気質で、雑然としたオフィスだと電話の声が気になって全く集中できない。イヤホンOKの許可をもらえただけで、嘘みたいに生産性が上がった』という切実な声もよく見かけます。
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情報伝達(コミュニケーション)の希望するスタイル
- 例:「チャットツールでの連絡は、時候の挨拶は不要です。結論とデータだけを箇条書きで端的にポンと送ってもらえるのが、個人的には一番理解が早いです」
- 逆に非同期コミュニケーションを巡る叫びもバズっていました。『「電話の方が早いから」と突然かけてくる上司。こっちは思考が完全に中断されて元の状態に戻るのに30分かかる。「急ぎ以外はテキストで」とトリセツに明記したい』
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フィードバック・評価の受け取り方
- 例:「私に改善点がある場合は、気を使って遠回しに伝えるのではなく、ロジカルに『ここがこうダメだ』とズバッと言い切ってもらった方が、感情的にならずに消化しやすいです」
- Yahoo!知恵袋にはこんな悩みが寄せられています。『「もう少し柔らかく言ってほしい」と泣き出す後輩にどう指導していいかわからない。私としては事実を伝えているだけなのに』。これも相手の仕様を知らないことで起きる悲劇です。
いかがでしょうか。これらが共有されているだけで、一緒に働くときのストレスが劇的に下がりそうな気がしませんか? しかし、これらを自分で白紙の状態からゼロベースで言語化するのは、意外と至難の業です。なぜなら、自分自身の思考回路やクセは、自分にとっては呼吸するように当たり前のことすぎて、わざわざ特徴として認識しづらいからです。
自分のことが一番わからない問題を、どう乗り越えるか
少し脱線しますが、「自分のトリセツを書いてください」と言われて、スラスラ書けた人を私はほとんど見たことがありません。
自分の強みは何かと聞かれて、「特にないです」と答える人。多いですよね。でも実は特にないのではなく当たり前すぎて気づいていないだけだったりする。
たとえば、会議でいつも要点をサッと整理してくれる人。本人は「こんなの誰でもできるでしょ」と思っている。でも周囲は「あの人がいるだけで話がまとまるから助かる」と感じている。
逆に、自分の弱みは大体の人がよく分かっている。「プレゼンが苦手」「細かい数字のチェックが嫌い」とか。でもそれがなぜ苦手なのかを掘り下げられる人は少ない。
ここに性格診断の価値があります。16タイプの診断を受けると、「あなたは直感型だから、既存ルールの中で細かく動くよりも、ゼロからアイデアを生み出す場面の方が力を発揮する」といった、自分では言語化できなかった特性が言葉になって返ってくる。
この言語化された自分こそが、トリセツの骨格になるわけです。
診断で「見えない自分」を言語化する
そこで強力な助っ人として活躍するのが、ソシオニクスやユング心理学などの確かな理論に基づいた16タイプ性格診断のフレームワークです。
時間をかけて診断アンケートに回答するだけで、「あ、自分はまさに思考のプロセスがこのパターンだ!」「言われてみれば、あの状況でいつも凄まじいストレスを感じていたのは、自分の特性に合っていなかったからなんだ」というように、ずっとモヤモヤしていた自分の輪郭が、すっきりと整理された的確な言語として見事に可視化されます。
少し手前味噌になりますが、私たち「Aqsh Prisma」がお届けしている診断ツールでは、単なるポピュラーな性格の傾向をお伝えするだけにとどまりません。 ユーザーの最適な稼働環境(働き方)や動作不良を起こす要因(弱点)、スムーズな通信手順(周囲との接し方のコツ)といった、まさにそのまま取扱説明書としてチームの自己開示に使える高い粒度のアウトプットを提供することに徹底的にこだわっています。
待望の新機能:PDFトリセツ作成・保存機能のリリース
そして今回、ユーザーの皆様や数多くの導入企業様からの熱いご要望にお応えし、ご自身の診断結果をA4サイズのレイアウトに最適化された取扱説明書(PDF)として、ワンクリックで保存・印刷できる機能を正式にリリースいたしました!
使い方は非常にシンプルです。診断完了後にアクセスできる自分のタイプ詳細ページから、画面下部にあるこのタイプの取扱説明書(PDF)を作成というボタンを押すだけ。
- ご自身の思考の得意・不得意が一目でわかるパラメーター(レーダーチャート)
- 他のタイプとの最高の相性・要注意な相性の関係性マップ
- ビジネスにおけるミッションや、本来の力を発揮しやすい適職の方向性
これらが綺麗にデザインされた、たった1枚のPDFレポートとしてすぐに出力されます。リモートワーク中の画面共有で見せ合ったり、新しいプロジェクトのキックオフミーティングで配布資料として配ったりと、様々な用途でご活用いただけます。
共有した瞬間にトリセツは動き出す
ひとりで診断を受けて、自分のタイプを知る。それだけでも十分に価値がありますが、本当に威力を発揮するのは、チーム全員がお互いのトリセツを持ち寄った瞬間です。
あるIT企業で実際にあった話。新プロジェクトのキックオフで、メンバー5人がそれぞれのトリセツを印刷して持ち寄った。性格タイプ別のコミュニケーション術で解説したように、人と人の摩擦の多くは解像度の低い理解から生まれる。
「私、人前で褒められるの苦手なんです。個別にSlackでメッセージもらえると嬉しい」 「僕は細かいルールを最初に明示してもらった方が動きやすいタイプ」 「私は逆で、ガチガチにルール決められると窮屈になるから、ある程度自由にやらせてもらえると助かる」
たった30分のすり合わせで、この先何ヶ月も続くかもしれないすれ違いや摩擦のリスクが一気に下がった。マネージャーいわく、「今までで一番立ち上がりがスムーズだったチーム」だったそうです。
トリセツは作るだけでなく共有することで、はじめて本当の力を発揮します。
まずは、自分の仕様を読むところから
チームでの相互理解は、まず自分自身のトリセツを自分で読み込んで、受け入れることから始まります。
「事務作業が苦手だったのは、才能がないからじゃなくて、そういう『仕様』の人間だっただけなんだ」 そう割り切れると、不思議なほど心が軽くなります。疲れが取れないの正体の記事でも書いた通り、苦手なことで悩むのではなく、得意なことでチームに貢献する。その切り替えが、明日からの仕事への向き合い方を変えてくれます。
職場に新しいメンバーが加わったときや、チームの空気がどこか停滞していると感じたとき。 お互いのトリセツを持ち寄って、ゲーム感覚ですり合わせる時間を作ってみてください。
おそらく、その小さな一歩が、チームを大きく変えるきっかけになります。
自分のトリセツを配る。たったそれだけのことで、チームの空気は想像以上に変わるものだ。
🔗 あわせて読みたい
- 🔗 キャリアにおける性格診断の活用法については、『16タイプ性格診断で分かる才能と適職』もぜひご覧ください。 ※本記事は自己分析のフレームワークであり、医療的アドバイスではありません。
これは宣伝みたいになってしまうけれど、独自のテスト運用で「16タイプベースのトリセツ」を導入したチームは、笑っちゃうくらい心理的安全性スコアが跳ね上がったりする。
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この記事を書いた人
塚田 崇博
Aqsh株式会社 代表取締役
人材業界23年、累計1万人超の面談経験を持つ。ソシオニクス・エニアグラム・ソーシャルスタイル等の性格類型学に精通し、採用・育成・定着を一気通貫で支援。
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