
エンゲージメントは性格で変わる──認知機能別の本当のモチベーション源泉
エンゲージメントサーベイのスコアが低い人は、やる気がないのではなく、測定の物差しと認知の型が噛み合っていないだけかもしれない。
サーベイで見えない本音
毎四半期、エンゲージメントサーベイを全社員に配布する。結果が返ってきて、営業部は高い、開発部は低い。低い部署にマネージャーが呼ばれて改善計画を出せと言われる。
これ、24年人事の現場にいて何度も見てきた光景だ。そして何度も思ってきた。このサーベイ、本当にエンゲージメントを測れているんだろうかと。
多くのエンゲージメントサーベイは、仕事に情熱を感じていますか、チームの一員として誇りを持っていますか、のような質問で構成されている。これに5段階で答えるわけだが、認知機能のタイプによって、この質問への反応がまるで違う。
Fe型(外向的感情)は場の期待を読んで高めに回答する傾向がある。チームのために頑張りたいと思っていることとエンゲージメントの高さは、実はイコールではないのだが、Feの仕様として肯定的に回答してしまう。
Ti型(内向的思考)は逆だ。情熱を感じていますかと聞かれても、情熱という言葉の定義が曖昧だと感じて中間値を選ぶ。仕事に没頭していても、それを情熱と呼ぶかどうかは別の問題として処理している。
弊社の分析では、Ti主導型のエンゲージメントスコアはFe主導型と比較して平均0.8ポイント低かったが、実際の離職率に有意な差はなかった。つまりスコアの低さは不満ではなく、設問との相性の問題だった可能性が高い。
認知機能別の火の点け方
Te型の裁量と成果
Te(外向的思考)型のモチベーション源泉は、明確な目標と裁量だ。何を達成すべきかが定義されていて、そこに到達するための方法を自分で選べる環境で最も力を発揮する。
逆にTe型のモチベーションを下げるのは、プロセスの過剰管理。日報を詳細に書け、毎時間の作業内容を報告しろ、という環境はTeの効率追求エンジンにとって耐え難い。結果は出すからやり方は任せてほしい、がTe型の本音だ。
Te型のマネジメントで有効なのは、OKR(Objectives and Key Results)のような目標管理フレームワーク。何をいつまでにを明確にして、Howは委ねる。認知機能別のフィードバック設計で書いたように、Te型へのフィードバックは成果ベースで端的に伝えるのが鉄則。
Fe型の承認と所属
Fe型のモチベーション源泉は、チームへの貢献実感と承認だ。自分の存在がチームにとって意味があるという感覚。
Fe型のエンゲージメントが下がるのは、自分の貢献が見えなくなったとき。裏方の調整業務をいくらやっても誰にも気づかれない、という状況が続くと静かに消耗していく。数字に表れない貢献を可視化する仕組みが、Fe型のエンゲージメント維持には不可欠だ。
1on1で効くのは、あなたがいてくれて助かっているという具体的な場面の共有。こないだのクレーム対応、チームの雰囲気が悪くならなかったのはあなたのおかげだ──このレベルの具体性が必要。1on1の性格タイプ別設計で詳しく書いている。
Ti型の論理と深さ
Ti型のモチベーション源泉は、知的刺激と深い理解。表面的な作業を繰り返すのではなく、なぜそうなるのかを掘り下げられる環境で火がつく。
Ti型のエンゲージメントが下がるのは、意味のない会議と浅い議論が多い環境だ。何も決まらない定例会議に毎週1時間を費やすのは、Tiにとって認知資源の浪費以外の何物でもない。
Ti型のマネジメントでは、技術的な深掘りの時間を業務として認めることが重要。20%ルールのような研究開発の自由時間は、Ti型に対して最も費用対効果の高い投資になる。
注意すべきは、Ti型は口頭でのフィードバックより、書面でのフィードバックの方が処理しやすいということ。1on1で口頭で指摘されても即座にレスポンスできず、後から考えてから反論したくなるのに時すでに遅し、というパターンがTi型にはよくある。
Se型の刺激と変化
Se(外向的感覚)型のモチベーション源泉は、変化と新しい挑戦だ。同じ作業の繰り返しはSe型を殺す。
Se型のエンゲージメントが急落するのは、ルーティンワークが定着したとき。入社直後はすべてが新鮮で意欲的だったのに、3ヶ月で慣れて半年で飽きて1年で辞めたい。これはSe型の典型パターンだが、飽きではなく刺激不足がーンアウトへ直結しているケースも多い。
Se型のマネジメントでは、定期的なジョブローテーションや新しいプロジェクトへのアサインが効く。同じ部署にいても、半年ごとに担当業務を変えるだけでSe型の離職リスクは大幅に下がる。仕事が続かない性格パターンで書いたSe型の構造を理解しているかどうかで、マネジメントの質が変わる。
Ni型のビジョンと意義
Ni(内向的直観)型のモチベーション源泉は、仕事の先にある意味と長期的なビジョンだ。今やっている作業が3年後の何に繋がっているのかが見えないと、Ni型のエンジンは回らない。
Ni型のエンゲージメントが急落するのは、日々の業務が場当たり的に変わる環境だ。中長期の方向性が見えないまま、目の前のタスクだけが降ってくる。Se型にとっては刺激的でも、Ni型にとっては認知的な拷問に近い。
Ni型に効くのは、年に一度の目標設定ではなく、四半期ごとのビジョン共有だ。この部署は3年後にこうなっているべきで、今四半期はそのうちのここをやるという全体における位置づけを明示する。エニアグラムの動機エンジンで書いたタイプ4やタイプ5の内発的動機はNi型と重なりやすく、意味のない作業はエネルギーの無駄遣いになる。
Fi型の価値観一致
Fi(内向的感情)型のモチベーション源泉は、自分の価値観と仕事の整合性だ。
Fi型は給与が高くても、会社のやっていることが自分の価値観に反していると感じたら激しくモチベーションが下がる。逆に給与が平均以下でも、仕事の意義に共感できていればエンゲージメントは高く維持される。
Fi型のエンゲージメントサーベイのスコアは、組織への忠誠度ではなく仕事の意義への共感度を反映していることが多い。この違いを理解せずにスコアを読むと、誤解だらけの施策を打つことになる。
サーベイの3つの落とし穴
Ti型のスコアが低い理由
前述の通り、Ti型は設問の言葉遣いにこだわる。情熱という主観的表現に対して数値評価を求められることに、そもそも違和感を持っている。中間値を選ぶのは不満の表明ではなく、正確に答えようとした結果だ。
Ti型のスコアを正しく読むには、定量データだけでなく自由記述欄のコメントを重視すること。Ti型は自由記述には本音を精緻に書く傾向がある。スコアは中間だがコメントに改善提案が並んでいたら、それはエンゲージメントが高い証拠だ。
Fe型のスコアが高い理由
Fe型のスコアが高いのは本当にエンゲージメントが高いからとは限らない。無記名のサーベイでも、Fe型は回答する瞬間にチームへの配慮が発動する。低い点をつけたら組織のスコアが下がる→チームに迷惑をかける、という計算が自動で走る。
Fe型のエンゲージメントの真のバロメーターは、サーベイのスコアではなく休日の過ごし方だ。仕事のことを考えずに休めているか。人と会う約束を避け始めていないか。バーンアウトの認知パターンで書いたFe型の初期サインと照らし合わせてほしい。
数値の裏を認知で読む
サーベイ結果を認知機能の分布と重ね合わせると、見えなかった構造が見える。
開発部のスコアが低いのは、Ti型とNi型が多い部署で、設問形式との相性が悪いだけかもしれない。営業部のスコアが高いのは、Fe型とSe型が多くて回答バイアスが上振れしているだけかもしれない。
これに気づかずに開発部だけ改善計画を書かせるのは、測定ミスに基づく不公平な介入だ。
私が前職で実際にやった失敗がまさにこれだ。開発チームのエンゲージメントスコアが全社最低だったので、改善プログラムを入れた。チームビルディングのワークショップ、1on1の頻度増加、フリーアドレス化。全部やった。結果、スコアは0.2ポイントしか上がらなかった。
後から振り返ると、そのチームはTi型とNi型で構成されていて、そもそもスコアが低く出る認知構成だった。フリーアドレスに至っては一人で集中する場所がなくなって逆効果。やるべきだったのはサーベイの設問を認知タイプ別にカスタマイズするか、スコア以外の指標(離職率、プロジェクト達成率、自由記述の内容分析)で評価することだったのだ。
部下のモチベーション管理の記事でも書いたが、マネージャーが部下の認知機能を理解しているかどうかで、同じサーベイデータから引き出せるインサイトの質が桁違いに変わる。
自分のチームメンバーの認知機能の傾向を把握することが、サーベイを本当に使える武器にするための第一歩。数字だけ追いかけていると、エンゲージメントの正体を見失う。
※本記事はマネジメント改善のための参考情報であり、特定の個人を評価するものではありません。
あなたのタイプの「相性」を見てみませんか?
上司や部下、同僚との関係に悩んでいるなら、タイプ別の相性パターンがヒントになるかもしれません。
この記事をシェアする

この記事を書いた人
塚田 崇博
Aqsh株式会社 代表取締役
人材業界23年、累計1万人超の面談経験を持つ。ソシオニクス・エニアグラム・ソーシャルスタイル等の性格類型学に精通し、採用・育成・定着を一気通貫で支援。
診断ロジックの説明を見る →


