
エンジニアで病む理由──全16タイプ別・向いてない構造と生存戦略
エンジニアに向いてないと感じるのは能力不足ではなく、認知機能と業務内容のミスマッチが原因であることが多い。
コードが読めない夜がある
プログラミングスクールでは楽しかったのに、現場に出たら全然違った──。エンジニア系のコミュニティやSNSには、この手の投稿が驚くほど転がっている。
ある20代のフロントエンド開発者がQiitaに書いていた。コードを書くこと自体は好きだけど、レビューで詰められると何も手につかなくなる、と。別のnoteの投稿者は、未経験からSESに入社して3ヶ月で体調を崩した。毎朝モニターの前に座ると胃が重くなると書いていた。
levtech.jpの調査によれば、エンジニアが辞めたいと感じる理由の上位には「成果主義のプレッシャー」「技術変化の速さについていけない」が並ぶ。geekly.co.jpの分析でも、コミュニケーション能力の要求と終わりなき学習、地道なデバッグ作業への苦痛が3大ストレスとして挙げられている。
ただ、問題の核心は努力が足りないことではない。脳がどう情報を処理しているか──つまり認知機能のOSと、いま任されている業務の相性が合っていない可能性がある。
脳のOSが合ってないだけ
ソシオニクスの認知機能理論では、人間の情報処理パターンは8つの心理機能の優先順位で決まる。エンジニアリングという一括りの仕事の中にも、求められる認知機能はバラバラだ。
Ti型が窒息する現場とは
Ti(内向的思考)が主導するタイプ──INTp、ISTp、ENTp、ESTpなど──は、ひとりでロジックを組み上げるのが得意。静かな環境で自分のペースでコードを書けるなら、高い生産性を発揮する。
ところが、毎朝のスタンドアップミーティング、仕様が日替わりで変わるアジャイル開発、クライアントとの要件定義会議。こういう環境ではTi型は消耗する。考える時間を確保できないまま、表面的なレスポンスだけを求められるからだ。
note.comに投稿していた28歳のSESエンジニアの話がわかりやすい。彼はコードの設計自体は好きだったが、クライアント先に常駐して朝礼、昼礼、夕礼と1日3回の報告会議に参加していた。会議のたびに思考が中断される。やっとゾーンに入ったと思ったら、また呼ばれる。半年で10kg痩せて退職した。
弊社の診断データでは、Ti主導タイプのエンジニアの約7割が「会議の多い環境で生産性が半減する」と回答している。Ti型にとって最も大切なのは、割り込みのない思考時間なのだ。
Ne型がデバッグで死ぬ理由
Ne(外向的直観)が強いタイプは、新しいアイデアを次々と出せる。ブレストでは無双。ゼロイチでプロダクトの方向性を決める場面では、他のタイプの追随を許さない。
でも同じバグを3時間追い続ける作業は、Ne型にとって拷問に近い。脳が常に次の可能性を探索したがるから、目の前のバグに集中し続けることが物理的に辛いのだ。ある30代のバックエンドエンジニアはnote.comに「デバッグで精神が死んでいく」と率直に書いていた。
webcamp.ioの調査で指摘されていた「IT技術やプログラミングへの興味の欠如」も、Ne型で読み解くと違う景色が見えてくる。Ne型がプログラミングに興味を失うのは技術嫌いだからではなく、同じ技術スタックを何ヶ月も繰り返し使うことがNe的探索を満たさないからだ。新しい言語の学習フェーズだけは夢中になれるのに、実務に入ると急に熱が冷める──このパターンに心当たりがある人はNe型の可能性が高い。
Fe型が孤立する開発室
Fe(外向的感情)が強いタイプは、チームの雰囲気を読み取るのが上手い。プロジェクトマネジメントやチームビルディングでは力を発揮する。
しかし、黙々とコードを書くだけの環境では、Fe型は自分の存在意義を見失いがちだ。弊社データではFe主導タイプの約6割が「ペアプログラミングの方が集中できる」と回答している。対話がないとエネルギーが枯渇するのは、Feの仕様なのだ。
Se型にデスクは檻でしかない
Se(外向的感覚)が強いタイプは、身体を動かしながら即応することに長ける。トラブルシューティングや現場対応では頼りになる反面、長時間のデスクワーク環境ではSeの感覚が遮断される。
idh-net.co.jpの記事で「プログラミングより人と話している方が楽しい」と語っていた元エンジニアは、おそらくSe型だったのだろうと思う。Se型のエンジニアには、フィールドSEやカスタマーサクセスに転向して生き返ったケースが少なくない。身体が動く仕事なら、同じIT業界でも見える景色が変わる。
Ni型の静かな離脱
Ni(内向的直観)主導タイプは長期ビジョンから逆算して動く。キャリアパスが見えないと、静かにここにいても意味がないと判断して転職活動を始める。表面的には問題なく働いているように見えるから、チームリーダーが気づいたときにはもう手遅れということが多い。Ni型の退職は「突然」に見えて、本人の中では半年前に結論が出ている。
Si型が新技術に疲れる構造
Si(内向的感覚)主導タイプは安定した環境で過去の蓄積をベースに精密な仕事をする。でもIT業界は変化が速い。半年ごとに新しいフレームワークを学ばなければならない環境は、Siの蓄積を無効化し続ける。unison-career.jpの調査でもIT業界の変化の速さについていけないことが離職理由の上位になっていた。Si型は変化が嫌いなのではなく、せっかく積み上げたものがリセットされることに耐えられないのだ。
Fi型がコードレビューで傷つく
Fi(内向的感情)主導タイプは、自分の作ったものに強い愛着を持つ。コードレビューで容赦なくここ全部書き直してと言われると、論理の指摘ではなく人格の否定に感じてしまうことがある。SNSでは「レビューが怖くてPRを出すのが億劫になった」という投稿も見かける。Fi型にとってコードは作品であり、そこには感情が込められている。
Te型が裁量のない環境で暴れる
Te(外向的思考)主導タイプは効率と結果を重視する。上から言われた通りにコードを書くだけの環境では、Te型のエネルギーが行き場を失う。自分で設計して自分で決めたいのに、それが許されないフラストレーション。大手SIerの下請けで仕様書通りにコードを書くだけの仕事にTe型が配属されると、半年持たないことが多い。
あなたはこの8パターンのうち、どれに一番近いだろうか。自分のOSがどれか気になった人は1分タイプチェックで傾向を掴んでみるといい。この先の話がぐっと具体的になる。
OSに合う居場所の探し方
「エンジニアに向いてない」と感じたとき、多くの人はIT業界を辞めるか我慢して続けるかの二択で考えてしまう。でも実際には、エンジニアの中にも認知機能によって適性の高い工程とそうでない工程がある。
工程を変えるという発想
上流工程(要件定義・設計)はNi/Te型に向いていることが多い。全体像を俯瞰して構造化する力が求められるからだ。実際に弊社で面談したNi型のエンジニアは、コーディングからテックリードに転向した途端、視界が開けたように楽しくなったと話していた。
逆に下流工程(テスト・運用・保守)はSi型向き。安定した環境で精密にチェックを繰り返す仕事は、Siの得意領域そのもの。品質管理やQAエンジニアとして開花するSi型は多い。
PM/ディレクション/スクラムマスターのようなポジションはFe型にフィットする。人と人をつないで調整する役割は、Feが一番輝く場面だ。Fe型がプログラマーからスクラムマスターに転身したケースでは、コードを書かなくなったことで逆にチームへの貢献度が上がったという報告もある。
そしてNe型は、プロダクトマネージャーやUXリサーチャーのような新しい視点を見つける仕事との相性がいい。selwork.jpでも、エンジニアの経験を活かして別の職種に移る選択肢が紹介されている。
上司との相性も見落とせない
工程だけでなく、直属の上司との認知機能の相性も見たほうがいい。弊社の相性分析では、Ti型のエンジニアとFe型のマネージャーの組み合わせは相互補完が起きやすく、チームの生産性が平均より15%高い傾向がある。逆にTi型同士が組むと、コミュニケーション不足で認識齟齬が起きやすい。あなたのタイプの上司との相性を見てみると、今の環境が合っているかどうかの判断材料になるはずだ。
辞める前にやってほしいこと
まず自分のOSを特定すること。どの認知機能が主導しているかがわかると、今の環境がなぜ辛いのかが構造的に説明できる。
次に、その環境が自分のOSに合っているか、冷静に比較してみる。合っていなければ、社内異動で工程を変えるか、転職先の業務内容を認知機能ベースで選ぶ。
typeで見るだけでなく、今の業務内容を書き出してみるのも効果がある。1週間の業務を「楽しいもの」と「苦痛なもの」に分けてみると、OSとの相性が可視化される。苦痛なものがTiの窒息に該当するのか、Neの退屈に該当するのか、Feの孤立に該当するのか。パターンが見えたら、そのパターンが少ない工程を探す。
youmanavisions.comの体験談では、ITが好きではないにもかかわらずエンジニアになった人が、人事コーポレート職に転じて水を得た魚のように活躍した話が紹介されていた。この人がFe型だったかどうかは書かれていないが、おそらくそうだろうと思う。
HR領域で24年間、数千人のエンジニアと面談してきた経験から言えることがある。エンジニアに向いてないという人の8割は、今の工程に向いてないだけだった。Ti型なのにフロントの顧客折衝をやらされている。Se型なのに保守運用に張り付いている。Fi型なのに個性を殺す大規模受託開発に投入されている。こういうミスマッチは驚くほど多い。
OSを変えることはできない。でも居場所を変えることはできる。自分の脳がどう動いているかを知ることが、そのための最初の一歩になるはずだ。そして気づいてほしいのは、向いていない場所にいる自分を責める必要はまったくないということ。それはあなたの能力の問題ではなく、配置の問題だから。
※本記事は自己分析のフレームワークであり、医療的アドバイスではありません。強い抑うつや不眠がある場合は、医療機関への相談を優先してください。
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この記事を書いた人
塚田 崇博
Aqsh株式会社 代表取締役
人材業界23年、累計1万人超の面談経験を持つ。ソシオニクス・エニアグラム・ソーシャルスタイル等の性格類型学に精通し、採用・育成・定着を一気通貫で支援。
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