
面倒くさがりの真実──怠惰ではなくエネルギー最適化を図る性格OS
休日の昼下がり。あなたはベッドの上の定位置から一歩も動かず、スマートフォンで意味もなくSNSのタイムラインを無限にスクロールし続けている。 やらなければならないことは山ほどあるのだ。部屋の掃除、溜まった洗濯物、来週までに提出しなければならない資格試験の勉強、あるいは副業の準備。 それらのタスクの存在は、頭の片隅で重い鉛のようにずっとぶら下がっている。タスクがよぎるたびに「ああ、やらなきゃな」と微かな焦燥感を感じるが、肉体はまるで重力に逆らえないかのように布団に縫い付けられたままだ。
「あと10分SNSを見たら起き上がろう」と自分に言い訳をし、気づけば外の景色は夕暮れに染まっている。 そして日曜日の夜、あなたは全く何も生産的なことをしなかった自分自身を強く呪う。世の中の自己啓発本に書かれている「すぐやる人」の対極にいる自分は、なんて怠慢で、意志が弱く、無価値な人間なのだろうと落胆する。
あなたも、そんな自分に絶望していないだろうか? なぜ周りの人間はあんなにも軽やかに、迷いなく動けるのかと、他人の行動力を眩しく、そして妬ましく思ってはいないだろうか。 やるべきだとはわかっているのにどうしても体が動かないという深刻な無気力ループに陥っているのなら、人事の現場であらゆる人間の行動原理を観察してきた私の視点から、あなたをその自己嫌悪の底から引き上げたい。
あなたが動けないのは、あなたが怠け者だからではない。 むしろその逆だ。あなたの脳内に搭載されている計算OSが、今この行動を起こすことによるカロリー消費と得られるリターンを極めて冷静に天秤にかけ、「行動する意味がない(赤字である)」という極めて合理的な最適化判断を下し、肉体の駆動系に強固なロックをかけているからなのだ。
これは意志の欠如などというチャチな精神論の話ではない。一種の高度な防衛システム(省エネOS)の正常な働きである。 「動かない」という選択は、あなたの生存確率を最大化するための、脳からの愛なのだ。 まずは、あなたの計算OSがどんな基準で稼働しているのか、本来の性格的な行動特性から確認してみよう。
行動する意味がみえない
なぜ、あなたは他の人が当たり前のようにやっているちょっとした片付けや未来のための勉強を先延ばしにしてしまうのか。
先延ばしのリアルな一日
世間はすぐに行動できる人間を優秀だと称賛する。彼らの脳内(外向的な実行OS)は、思いついた瞬間にドーパミンが出て、後先考えずにまず体を動かすパッション(情熱)で駆動している。彼らは文字通り「走りながら考える」ことができるのだ。
しかし、もしあなたのOSが内向的思考(Ti)や内向的感覚(Si)を強く持つ、いわゆる省エネ型・分析型のシステムであった場合、行動を起こす前のプロセスが彼らとは全く異なる。 あなたは、ただゴミを捨てるという行為であっても、ゴミ袋を取り出し、部屋中を歩き回り、ゴミを集めて縛り、それを集積所まで持っていくという一連のプロセスに必要なエネルギー総量を、無意識のうちに完璧に計算しきってしまう。 そして、その莫大な消費カロリーに対して、得られるリターンが部屋が少し綺麗になるだけという極めて微力な報酬であることを脳が一瞬で弾き出す。
結果として、あなたの合理的なOSはこのように宣告する。 「わざわざ今やらなくても死にはしない。限界ギリギリまで放置して、絶対にやらなければならない外的要因(例えば明日の朝がゴミの日である、友人が遊びに来るなど)が発生した時にまとめて処理した方が、全体としてのエネルギー効率は高い」と。 あなたが面倒くさいと感じ、布団の中でフリーズしてしまっているその瞬間、実はあなたの脳内ではこの冷徹で完璧なタスクのカロリー計算(エネルギー最適化)が行われ、見事に成功しているに過ぎないのだ。
省エネ駆動エンジンの闇
とはいえ、この高度な省エネOSは、現代の資本主義社会においては深刻なバグを引き起こし、あなたを悩ませる。 なぜなら、現代社会で成功を収めるための行動のほとんどは、「遠い未来の不確実なリターンのために、今の確実なエネルギーを投資する」という、あなたのOSが最も嫌悪する非合理的な計算式で成り立っているからだ。
計算高すぎるがゆえのフリーズ
資格試験の勉強や副業の準備を例にとってみよう。 これをやれば昇進に有利かもしれない。しかし、あなたのOSはすぐさま反論の声を上げる。 「本当に昇進できるのか? 昇進したとして給料はいくら上がる? そのリターンは、今日のこの貴重な休日のリラックスタイム(確実な回復エネルギー)を犠牲にしてまで得る価値があるものなのか?」
頭が良く、先回りして計算できすぎるからこそ、あなたは確実なリターンが100%保証されていないものに対して、貴重なエネルギーを出力することが極端に怖いのだ。 私は人事面談で、圧倒的に優秀な分析力を持っているのに行動を起こせない人材を数え切れないほど見てきたが、彼らはほぼ例外なくこの先回り計算の呪縛に囚われていた。彼らはリスクを避ける天才であり、同時にチャンスもまた完璧に回避し続けてしまうという悲劇の中にいる。損をしたくないという強い防衛が、最大の機会損失を生んでいるのだ。
弊社の診断データでも、行動を起こすまでに異常なエネルギーを消費すると申告するユーザーの約5割が内向的思考(Ti)または内向的感覚(Si)を主機能に持つ省エネ型のOSだった。脳がリターン不確実と判定したタスクにエネルギーを出せないのは、怠けではなく絶対的な仕様なのだ。自分だけが怠け者だと責める前に、1分タイプチェックで自らの基本OSを確かめてみてほしい。
あなたが面倒くさがっているのは、決して行動そのものではない。 「無駄骨になるかもしれないことに対して、自分の貴重なエネルギーをすり減らすこと」に対する、生存本能レベルの凄まじい恐怖なのだ。
ここで注意してほしいのは、世の中には「とにかく手と足を動かして汗水を流すこと」そのものに価値を見出す行動至上主義の人間(外向的実行OS強め)が多数生息しているということだ。彼らの下で働くと、あなたの合理的で省エネな判断は「サボり」として一蹴される。自分の省エネOSと彼らの精神論OSがどれだけ絶望的に噛み合っていないかを知るためにも、相性相関図を確認しておくことを強く勧める。「あぁ、この人とは人類としての設計図が違うんだな」と心底諦めることが、無駄な自己嫌悪からあなたを救う最大の防御になる。
腰を上げるための設計
では、この鉄壁の省エネOSを持ったまま、どうしても動かなければならないタスクを処理するにはどうすればいいのか。
初速だけ出す運用術
あなたのOSが行動を拒否している理由は、タスクの全体図(多大なエネルギー消費)を正確に見通してしまっているからだ。 ならば、その優秀すぎる計算能力をハック(意図的に騙す)してやればいい。
例えば、部屋を掃除しようと思うから動けないのだ。「机の上の、この空のペットボトルを1本だけ掴んで捨てる。それ以上のことは絶対にやらない」と脳に自分自身で約束をする。 ペットボトル1本を捨てるだけの消費カロリーであれば、計算OSは「それくらいならエネルギーの赤字にはならない」と判断してシステムロックを解除する。
そして、ここからが重要だ。一度肉体が動き出し(初速の発生)、システムがアイドリング状態に入ると、不思議なことにあれほど計算高かった脳は「ついでにもう少し動かした方が、エンジンの効率が良い」と判断を変える。 「ついでに横のゴミも捨てよう」「ついでに掃除機もかけよう」。 あなたは、自分の重たいお尻を上げるための精神論やモチベーションなど最初から一切必要ない。ただ、自分の緻密な計算OSを欺くためのごく小さな物理的摩擦を作り出すだけでいいのだ。(この行動力と性格タイプの相関ロジックに興味がある場合は、こちらからさらに詳しい適性を探ってみてほしい)。
怠け者が輝く場所は実在する
一つ、筆者の人事経験から非常に印象に残っている人物の話をしよう。
彼は社内でも有名な、最も動かない男だった。定時退社は当然のこと、会議では最低限の発言しかせず、業務外の雑談にも全く加わらない。上司からの評価はやる気がない、覇気がないの一点張りだった。何度か人事のキャリア面談にも呼ばれ、彼自身もうつむきながら自分は怠けていると心底信じて絶望していた。
しかし、ある時ふと彼の業務プロセスを詳しく分析してみると、驚くべき天才的な事実が浮かび上がった。 彼は、自分が心底面倒くさいと感じた日々のルーチン業務を、片っ端からExcelマクロやGAS(Google Apps Script)を自学自習で駆使して自動化ファイルに置き換えていたのだ。他の社員が毎日30分かけて汗水垂らしてやっているデータ入力作業を、彼は自作のスクリプトボタン一つにより3秒で終わらせていた。だから誰よりも早く定時で帰れるのは当然だった。 彼は決して怠けていたのではない。怠けたいがゆえに、他の誰よりも必死に知恵を絞っていたのだ。
その発見をきっかけに、彼を社内の業務改善プロジェクトのリーダーに据えたところ、翌年度の全社的な業務効率は15%もの劇的な改善を記録した。全社員の中で面倒くさがりの極致であった彼こそが、組織全体の生産性を底上げした最大の功労者だったのである。
あなたの面倒くさがりは、システム的に言い換えれば「非効率に対する極端なアレルギー反応」だ。 そのアレルギーが最も強く反応する場所こそが、あなたの才能が最もダイレクトに必要とされている場所なのかもしれない。業務効率化コンサルタント、プログラマー、プロセスエンジニア。世の中には「いかにして手抜きで楽をするか」を血眼になって本気で設計するプロフェッショナルが山ほどいるし、彼らは「ただ汗を流して10時間働く兵隊」よりも、はるかに莫大な価値を社会に提供して高給を得ている。
おわりに
あなたは一生、面倒くさがりで構わない。 世間のマチョイズム(とにかく行動しろという精神論)に毒され、自分の慎重で合理的な省エネOSを役立たずの怠け者だと罵る必要などどこにもない。
無駄な動きを嫌うその特性は、裏を返せばいかにして最小の労力で最大の結果を出すかという、システムエンジニアや仕組み作りの根本的な才能でもある。(だからこそ、もし今の仕事で不当に評価されていないと感じるなら、あなたのその高度な省エネ設計が評価される向いている仕事診断を試してみてほしい)。
布団の中で天井を見つめて自分を嫌悪する時間は、今日で終わりにしよう。 あなたは決して怠惰なのではない。ただ少しばかり、人生のエネルギー配分を計算しすぎているだけなのだから。
※本記事は自己分析のフレームワークであり、医療的アドバイスではありません。
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この記事を書いた人
塚田 崇博
Aqsh株式会社 代表取締役
人材業界23年、累計1万人超の面談経験を持つ。ソシオニクス・エニアグラム・ソーシャルスタイル等の性格類型学に精通し、採用・育成・定着を一気通貫で支援。
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