
リーダーに向いてないは思い込み。16タイプ別、あなたが自然体で輝けるリーダーシップの見つけ方
マネジメント層の育成面談を千人規模でやってきて痛感するのは、「優秀なプレイヤーが、必ずしも自分の型に合ったリーダーシップを知っているわけではない」という残酷な事実だ。
💡 関連記事: 16タイプの基本的な仕組みや仕事への活かし方については、『16タイプ性格診断で分かる才能と適職』で詳しく解説しています。
昇格を告げられた日の夜、恵美さん(34歳)がまずやったのは、本屋に駆け込むことだった。
「リーダーの教科書」「最強のチームを作るマネジメント術」「カリスマ性を身につける7つの習慣」——ビジネス書の棚から片端5冊を抱えてレジに走り、その日のうちに2冊読み切った。
恵美さんには理由があった。入社10年、丁寧な仕事ぶりと穏やかな人柄で信頼を集めてきた。一人ひとりの話をじっくり聞いて、困っている人がいたらそっとフォローに入る。派手さはない。でも恵美さんがいるチームは不思議と空気が良くて、メンバーが辞めない。上司はそこを見込んでリーダーに抜擢した。
ところが、買ってきた本を読めば読むほど、胸の奥がざわつく。
「リーダーはビジョンを語れ」 「強い決断力で組織を引っ張れ」 「孤独に耐えるメンタルを持て」
……全部、私と真逆じゃないか。
翌週から、恵美さんは本に書いてあることを忠実にやってみた。朝礼で声を張ってビジョンを語った。声は震えた。言葉は空を切って、メンバーの表情はどこか困惑気味。会議では「リーダーなんだから即断しなきゃ」と焦って結論を急ぎ、考えが浅いまま出した方針を翌日からひっくり返すことが増えた。
3ヶ月後、恵美さんはトイレの個室で泣いていた。 「私、やっぱりリーダーに向いてない」
布団の中で何度もそう呟いて、密かに降格を願い出ようかと真剣に悩んでいた。
でもこれ、恵美さんが悪いんじゃない。本が悪い。というか、世のリーダーシップ論の99%が前提にしている理想のリーダー像が、恵美さんにとっては完全にサイズ違いの服だった。 noteには、初めてマネージャーになった人の切実な体験談がありました。『ビジネス書にあるような「ぐいぐい引っ張るリーダー」になろうとして、自分を偽り続けた結果、適応障害一歩手前までいきました。自分みたいな内向的な人間は、上に行くべきじゃなかったんだと毎日自分を呪っていました』
実際、うちで取っている膨大な組織診断データでも、自分の性格タイプに合わない「理想のリーダー像(例えばカリスマ型)」を無理に演じてチームを崩壊させるケースが非常に目立つ。
ビジネス書が描く理想のリーダーの正体
冷静に見てほしい。世の中で語られるデキるリーダーの特徴。
大きなビジョンを情熱的に語れる。即断即決。大勢の前で堂々とプレゼンできる。カリスマ性で人を惹きつける。孤独に耐えられる鋼のメンタル。
これ、ソシオニクスの16タイプで見ると、外向的で、論理重視で、決断が速いタイプ——たとえばLIE(起業家)やSLE(征服者)みたいな一部の性格タイプが自然体で出せるスタイルでしかない。
16あるうちの、せいぜい3〜4タイプ。
残りの12タイプの人間はリーダーに向いてないのか? そんなわけがない。
問題はリーダーシップの定義が狭すぎること。日本の企業文化は声が大きい人=リーダーという価値観で長く動いてきた。その結果、本当は素晴らしいリーダーの才能を持っているのに、たまたまそれが声の大きいタイプじゃなかっただけで自分は向いてないと思い込んでいる人が、そこらじゅうにいる。
あなたのタイプには、あなたのリーダーシップがある
性格タイプを大きく4つに分けると、それぞれにまったく違う輝き方のリーダーシップが見えてくる。
直感×思考タイプの人は、大きな絵を描くのが上手い。「3年後にうちのチームはここにいるべきだ」と見通す視座の高さが武器になる。日常の細かい業務指示は苦手かもしれないけれど、チームが向かうべき方向を示し続けるナビゲーターとして、メンバーに安心感を提供する。
感覚×思考タイプの人は、安定感と正確さでチームを守る。マニュアルを整備し、プロセスを整え、誰がやっても品質が保たれる仕組みを作ることが天才的に上手い。このタイプの真価は、平常時じゃなくてトラブルが起きた瞬間に出る。他のメンバーがパニックになっているとき、冷静に事実だけを整理して「まず今やるのはこれ」と指示を出せる。地味に見えるけど、いないと確実にチームは崩壊する。 X(旧Twitter)でもこんな投稿が共感を集めていました。『「カリスマ性ゼロでごめんね」と言いながら、私たちが一番ミスしやすい業務のフロー図を黙々と完璧に整備してくれた前上司(おそらくESTJ)。あの人がいなくなった後、チームが3ヶ月で崩壊して、本当のリーダーシップとは何かを思い知った』
直感×感情タイプの人は、ストーリーの力で人を動かす。「このプロジェクトは、誰かの人生をこう変えるんだ」——そんな物語を語れる。一人ひとりの心に火をつけるのが得意だから、メンバーが「この人のためなら頑張りたい」と自発的に動き出す。カリスマ型とは違う、もっと温かくて、もっと深い影響力。 あるエンジニアのブログには『数字しか見ない前のマネージャーの時は全員が「どう手を抜くか」しか考えてなかった。でも今のマネージャー(INFP気質)は「この機能が実装されたら、ユーザーは絶対喜ぶよね」と嬉しそうに語るから、不思議とみんな徹夜してでも良いものを創ろうとする』というエピソードがありました。
そして感覚×感情タイプ。恵美さんが本来持っていたのが、まさにこれ。
チームの空気を読み、メンバー同士のちょっとした摩擦を察知して、全員が心地よく働ける環境を作る。派手じゃない。数字で見える成果にも直結しにくい。でもこのタイプのリーダーが率いるチームは、心理的安全性が圧倒的に高い。メンバーが本音を言える。アイデアを出せる。失敗を恐れずに挑戦できる。
「私のチーム、なんかうまく回ってるんだけど、自分が何を貢献してるのかよく分かんない」
調整型リーダーはよくこう言う。でもね、そのなんかうまく回ってる状態を空気のように作り出すことが、他の3タイプには逆立ちしてもできない、途方もない才能なんだ。 Yahoo!知恵袋の悩み相談にもこんな声が。『「お前のチームはぬるい、もっと厳しく詰めろ」と上層部から怒られてから、無理してメンバーに厳しく当たるようにしました。結果、チームの雰囲気は最悪になり、エース社員が退職。自分が本来持っていた強みを自分で殺してしまったと激しく後悔しています』
綾さんが会議室で起こした静かな革命
綾さん(38歳)。IT企業のプロジェクトマネージャー。
内向的で、人前で話すのが苦手。会議では自分から発言するより、腕組みをして黙ってメンバーの話を聞いている時間のほうが長い。前任のリーダーはバリバリのカリスマ型で、会議の90%を一人で喋り倒し、メンバーを圧倒的な熱量で引っ張っていくタイプだった。
綾さんは、その影にずっとコンプレックスを抱えていた。
リーダーに就任して最初の全体会議。メンバーたちは「綾さんも前任みたいに何か熱いことを語るのかな」と身構えていた。
綾さんが言ったのはこれだけだった。 「今日は私より、みんなの話を聞きたいです。一人ずつ、今思ってることを何でも言ってください」
しかも形式的な質問じゃない。前の週の1on1で聞いた個人的な悩みを踏まえて、「〇〇さん、この前話してた△△の件、その後どう?」と、一人ひとりに向けた問いかけをした。
最初の1ヶ月、正直うまくいかなかった。会議の空気がふわっとして「これで本当に大丈夫か?」と綾さん自身も不安だった。でも2ヶ月目あたりから、空気が変わり始めた。それまで会議で一言も発さなかった入社2年目の子が、恐る恐る手を挙げて「あの、自分の案なんですけど……」と言い出した。
半年後。綾さんのチームの顧客満足度は、前任者時代を大きく上回っていた。
声の大きいリーダーの影で黙っていた人たちの頭の中には、ずっと温めていたアイデアがあった。でも言い出せなかった。綾さんの聞く力が、その蓋をそっと開けた。 SNSでもこんな気づきが共有されていました。『「喋らないリーダー」になってからの方が、なぜかチームの売上が上がった。自分が正解を出さなきゃいけないというプレッシャーを手放して、「私には分からないから教えて」とメンバーに頼るようになってから、みんなが自発的に考えて動く無敵のチームになりました』
これは立派なリーダーシップだ。世のビジネス書には載っていない種類の。
リーダーだからこそ気をつけたいバイアス
確証バイアスの記事で書いた通り、人間は自分と同じタイプの人間=優秀と無意識に判断する。これがリーダーの立場になると、かなり危険な力を持つ。
戦略家型のリーダーが、部下にもビジョンを語れと求める。でもその部下が実務家型だったら、ビジョンを語ることよりも目の前の数字を1円の狂いもなく合わせることに誇りを持っている。能力の差じゃなくて、大切にしているものの順番が違うだけ。
性格タイプ別のコミュニケーション術でも触れたけれど、自分と違うフィルターで世界を見ている相手を能力が低いと判断するのは、脳の自動反応だ。リーダーという権力を持つと、この誤認が部下の評価やキャリアを左右するほどの破壊力を持ってしまう。
だからこそ、人の上に立つ人間は真っ先に自分がどれほど偏った目で世界を見ているかを知る必要がある。部下の性格タイプ別マネジメント術の記事も、よかったら読んでみてほしい。
恵美さんの今
恵美さんは本棚のビジネス書を全部、段ボールにしまった。
代わりに始めたのは、毎朝メンバー一人ひとりにおはよう、昨日のあの件どうだった?と声をかけること。朝礼でビジョンを叫ぶ代わりに、先週頑張っていた人の名前を挙げて「ありがとう」と伝えること。
会議の進行は相変わらず上手じゃない。プレゼンも緊張で声が裏返ることがある。
でもチームの離職率はゼロ。四半期の目標も3期連続で達成している。
リーダーに向いてないは、思い込みだった。自分に合わないスタイルを真似していただけだった。
あなたのリーダーシップは、まだ見つかっていないだけかもしれない。
無数の中間管理職の苦悩を見てきて思うけれど、最強のリーダーシップなんて存在しない。ただ「自分らしく勝てる型」があるだけだったりする。
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この記事を書いた人
塚田 崇博
Aqsh株式会社 代表取締役
人材業界23年、累計1万人超の面談経験を持つ。ソシオニクス・エニアグラム・ソーシャルスタイル等の性格類型学に精通し、採用・育成・定着を一気通貫で支援。
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