
MBTIの結果が毎回変わる──ブレるのはあなたじゃなくテストの方だ
性格診断の結果がやるたびにコロコロと変わってしまい、自分は一貫性のない多重人格なのではないかと本気で悩んでいる人がいます。でも、どうか安心してください。結果が変わるのはあなたの精神状態が不安定だからではなく、世の中に溢れている無料の「自己申告型テストのシステム構造」そのものに原因があるんです。 なぜブレるのかという仕組みを知り、ブレない本当のコアを見つける方法を人事のプロの視点から解説します。
先月と今日で結果が違う絶望
日曜の深夜、布団の中でぼんやりとスマホを開き、またしてもあの16タイプの性格診断をやっている。これで3回目。 先月の仕事がうまくいっていた時はINFPだった。先々月のひどく落ち込んでいた時はINFJだったはずだ。そして今回の結果はENFJ。見事に3回やって3回とも全く違うアルファベット4文字が画面に表示された……。
キャリア面談に来られたある女性は、泣き出しそうな顔でこう打ち明けてくれました。「3つの違うサイトで受けたら3つとも違うタイプが出てきて、なんだか笑えてきちゃって。私って、一体何者なんでしょうか。芯がないから毎回結果が変わるんですよね」
彼女のように、やるたびに結果が変わることで、まるで自分という人間の核がドロドロに溶けていくような不安を覚える人は本当に多い。 知恵袋などの悩み相談を見ても、「自分探しのために診断をやるたびに結果が変わります、本当の自分はどれなんでしょうか」という切実な問いが溢れかえっています。
でも、その不安は完全に的外れです。結果がブレているのはあなたの性格そのものではなく、あなたが答えた表面的なテストのほうなんですから。
質問が曖昧すぎる構造的欠陥
多くの人が夢中になっている無料診断サイトのほぼすべてで採用されているのは、「はい・いいえ」で答える自己申告型の質問紙テストです。
「あなたはパーティーなどの集まりで積極的に知らない人に話しかけますか?」 こういう質問が何十問も続きますよね。でも、少し冷静に考えてみてください。この質問の前提条件、あまりにもガバガバで曖昧すぎないでしょうか?
「パーティー」というのは一体何人規模を想定しているのか。地元の地味なツレばかりの飲み会なのか、それとも外資系企業主催のギラギラした見知らぬ人間だらけの立食パーティーなのか。「積極的に」という言葉の基準はどこにあるのか。5人に話しかけたらもう積極的といえるのか、それとも会場の全員と名刺交換しなければ積極的とは認められないのか。
全く同じ質問文であっても、その時あなたの脳裏にフッと浮かんだ具体的な場面一つで、答えは180度変わってしまいます。 月曜の朝、満員電車で他人の汗の匂いに完全に体力を奪われた後に受けたら、間違いなく内向的で人間嫌いな回答が激増する。逆に金曜の夜、気の置けない友人と最高に美味いピザを食べて笑い転げた後に受けたら、信じられないほど外向的でポジティブな回答になる。
あなたの生まれ持った性格が変わったわけではありません。テストに答える瞬間に想起したシチュエーションという「変数」が変わっただけなんです。 (※なぜこれほどまでに質問紙テストがアテにならないのか、そのより深い構造的・心理的欠陥については 無料診断テストが当たらない理由 で詳しく解説しています)
そもそも別テストを受けている事実
ここで根本的な大前提を整理しておかなければなりません。多くの人が「これがMBTIだ」と信じて疑わずに受けているあの有名なテストは、実は公式のMBTIの理論とは全くの別物です。
日本でおそらく最も親しまれているであろうあの有名な無料性格診断サイト。あのサイトのカラフルなキャラクターの結果を見て「自分はINFPです」と名乗っている人は無限にいます。しかし、そのサイトの公式の解説ページを隅々まで翻訳して読むと、「自分たちの診断はユングのMBTI理論には基づいていない」とはっきりと明記されているんです。
あのサイトは、現在最も科学的根拠があるとされるビッグファイブ理論をベースに自社開発されたもの。一方で本家のMBTIは、ユングの心理学的類型論が出発点です。16タイプ入門記事でも触れているように、OSの基礎となっている言語そのものが違うんですね。
つまり、「Aの診断サイトで受けたらINFPという結果が出て、Bの診断サイトを使ったらINTJだった、結果がブレて困る」という悩みは、そもそも前提からして間違っています。英語のTOEICテストと数学のセンター試験で取れた点数が違ったと言って、「私の学力はブレている」と騒ぐ人間はいないですよね。それと全く同じことなんです。
気分と願望で答えが上書きされる
人間は無意識のうちに、社会から求められる正解や「こうありたい」と願う理想の自分の姿を引き寄せて回答を選んでしまう生き物です。
本当の休日は誰とも口を利かずに一人で暗い部屋にいたいのに、「社交的でアクティブな人間のほうが社会人として望ましい」とどこかで感じているため、少し強い自分を演じて「はい」を選んでしまう。 夏休みの宿題を最終日まで放置するタイプなのに、「計画的に動く人間のほうが仕事ができそうだ」という強烈な憧れから、無意識に見栄を張って「計画的」寄りのチェックボックスをクリックする。
面談に来たある就活生が言っていた言葉が、この現象を完璧に表していました。 「転職活動の真っ最中に息抜きで診断を受けたらESTJ(幹部)になったんです。普段の怠惰な自分は絶対INFPなのに。これ、企業の面接モードの人格が漏れ出てますよね」
「面接モードが漏れている」という表現は非常に的確です。要するに、その時の痛切な自己イメージの願望が、回答にそのまま鏡のように反映されているだけ。自分はどうありたいかという生々しい欲求が、本当の自分はどうであるかという素のデータを強引に上書き保存している状態です。
ブレない診断を見つける条件
では、何を手がかりにして自分の本当の設計図を探し出せばいいのでしょうか。
その究極の鍵は、自己申告の「行動ベース」での確認を完全に捨て去り、「認知機能」という脳のOSの作動順序を見ることです。
行動は気分や疲労度、その日の財布の中身の金額で簡単に変わります。しかし認知機能、つまり「あなたの脳が外界からどういう順番で情報を飲み込み、どのような手順で処理して判断を下すか」という根源的な優先順位は、気分やストレスごときでは絶対に揺るぎません。 アプリケーション(今日とる行動)は毎日インストールと削除を繰り返して変わるが、根底でそれを動かしているOS(情報の処理方法)は一生変わらないのです。
たとえば、内向的直観(Ni)という機能をメインエンジンとして使う人は、目の前の具体的な事実や数字の羅列よりも、その物事の裏に隠された抽象的な意味や未来のパターンを無意識のうちに直感的に掴もうとします。 この異常なまでの抽象化への偏りは、上司に怒られて疲労困憊のときでも、面接で自分を大きく見せようとしているときでも絶対に変わらない。表面的な対応や態度が変わったとしても、情報を処理する順番の癖だけはコンクリートのように一定しています。
当サイトで採用しているソシオニクスは、このユングの原流に情報代謝という独自の理論を加えて進化させたものです。8つの情報要素(認知機能)がどういう順番であなたの脳内で作動するかだけでタイプを完全に分類する。行動の自己申告ではなく、情報処理のハードウェアの構造を見る。だから、結果が日によってブレるということが理論上起こり得ないのです。
単一の診断から抜け出す
もう一つ、自己分析の解像度を爆発的に上げるテクニックがあります。それは一つの診断結果にすべてを依存せず、アプローチの違う複数の理論を掛け合わせること。
ソシオニクスが情報の処理構造を見る「ハードウェアの分析」だとするなら、エニアグラムは人間の欲求と恐怖の根源を見る「ソフトウェアの分析」です。
この2つを二次元の軸にして掛け合わせると、今までのモヤモヤが一気に晴れるほど精度の高い自己分析が完成します。 たとえば同じINFPの認知構造を持つ人間でも、エニアグラム4番の業を背負った人と、9番の業を背負った人では、社会の中でとる行動パターンはまるで別人のように違います。 4番は自分の独自性と美意識に異常にこだわり、他人と違うことに価値のすべてを見出す。一方で9番は争いと摩擦を何より恐れ、調和を重視して自分の意見を泥の中に抑え込む。
単一の診断テストでは決して捉えきれないこの微妙な個体差が、掛け合わせることで初めて立体的に浮かび上がるのです。
診断結果というレッテルを使い潰す
24年間人事として何万人という人間の生々しい感情とキャリアに向き合ってきた私から、最後に正直に言ってしまいましょう。 この世のどこを探しても、あなたという人間を1ミリの狂いもなく完璧に表現できる性格診断など永遠に存在しません。
どんなに優れた診断理論にも必ず死角はあるし、数十年の人生で複雑に絡み合った人間の本性を、たった4文字のアルファベットの枠にすべて詰め込めるわけがない。16タイプというのはあくまで16種類のOSのベースモデルであって、同じINFPの型番でも、その人が生きてきた環境によってインストールされている初期アプリの構成は全く違う。当たり前のことですよね。
自己分析において本当に価値があるのは、正確なアルファベットの羅列を血眼になって探し当てることではありません。自分の認知の偏りという危うい癖を、メタ的に理解することです。
自分はどういう情報に無意識に食いつきやすいのか。どういう理不尽な判断基準で動いているのか。何をしているときに最高のパフォーマンスを出し、どんな環境に置かれたときに最も精神エネルギーをすり減らして死にそうになるのか。
インフルエンサーが発信するタイプのレッテルやステレオタイプは、ただの入り口の看板にすぎません。INFPだのENFJだのという記号の違いよりも、「自分がいつ輝き、いつ壊れるのか」という具体的な生存パターンのデータを知るほうが、あなたのリアルな人生において100倍実用的で価値がある。
診断テストは、自分を窮屈な箱に閉じ込めるための呪いではありません。不安定で壊れやすい自分という乗り物を、少しでも安全に遠くまで運転するための取扱説明書を書くための、ただのツールです。 自分の認知の優先順位と、心の奥底で何を恐れ何を求めているのかさえ正確に把握できていれば、今日の無料テストの結果が何文字にブレようが、あなたの人生が揺らぐことはもう二度とないはずです。
※本記事は心理学的な知見と現場での人事サポート経験をもとに執筆していますが、強い自己喪失感や無気力感が続く場合は、心身の限界を超えているサインです。速やかに心療内科や公的相談窓口への相談を最優先してください。
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この記事を書いた人
塚田 崇博
Aqsh株式会社 代表取締役
人材業界23年、累計1万人超の面談経験を持つ。ソシオニクス・エニアグラム・ソーシャルスタイル等の性格類型学に精通し、採用・育成・定着を一気通貫で支援。
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