
【企画職に向いてない理由】──アイデアが出ない・通らない性格の正体
誰もが憧れる花形の部署である企画部やマーケティング部。 激しい競争を勝ち抜いてようやく念願だった異動の切符を手に入れたはずなのに、毎回の企画会議の時間が針のむしろのように感じられる。ブレストの場で気の利いたクリエイティブなアイデアを一つも出せずに愛想笑いをしてやり過ごし、周りの同期が次々と華々しいプロジェクトを立ち上げていくのを横目に、自分には決定的に企画のセンスがないのだと一人で絶望する。 この焦りと自己嫌悪のループこそが、企画職に向いていないと現場で密かに悩む人たちの抱えるリアリティです。
私たちはHRの現場で何千というキャリア面談を行ってきましたが、実は企画・マーケティング職からバックオフィスや営業への異動を自ら希望するケースは非常に多いです。 そこで語られるのは、自分はクリエイティブな人間ではなかったという深い敗北感です。 しかし、これまでのキャリアを捨てるような決断を下す前に、本当にそうなのかをどうかもう一度考えてみてください。センスという極めて曖昧な言葉で片付けてしまう前に、企画という仕事が要求する複雑な情報処理プロセスと、あなたの生まれ持った性格情報処理システム(OS)の間に起きているエラーの正体を見極める必要があります。
企画職という幻想
そもそも、世の中の学生や他部署の人間が抱いている企画職という華やかなイメージと、実際の泥臭い業務内容にはとてつもない乖離があります。 ゼロから天才的なひらめきで誰も見たことがないものを生み出し、世の中をアッと言わせる。まるで気まぐれなアーティストのような仕事を想像しがちですが、現実の企画職の仕事の大部分は、極めて泥臭い社内政治と根回し、緻密なExcelでの予算シミュレーション、そして頭の固い上層部を納得させるための隙のないロジック構築で構成されています。
つまり、企画職という一つのポジションには、大きく分けて発散(常識にとらわれずアイデアを広げる)と収束(それを現実の制約の中に落とし込み、予算とスケジュールを引いて構造化する)という相反する二つの能力が同時に求められるのです。 これは、人間の認知機能からすると、右脳と左脳を限界までフル回転させながら反復横跳びをするような、極めて負荷の高いアクロバットな芸当です。 この二つのフェーズのどちらかで、特定の方の性格OSが完全にエンストを起こしてしまう。それが、あなた自身が向いていないと感じる根本的な理由です。
なぜアイデアが出ない
では、16タイプ性格診断でベースとなる認知機能の観点から、具体的に企画の現場でどのようなエラーが起きているのかを解剖していきましょう。 一口に向いていないと言っても、アイデアが出なくて苦しむ人と、アイデアは無限に出るのに形にならなくて評価されない人の間には、全く異なるOSのバグが存在しています。
Si型の限界と苦悩
ホワイトボードの前で行われるブレスト会議で、最も苦しい思いをしているのが内向的感覚(Si)を主体とするSJ型(管理者タイプ)の人々です。 彼らのOSは、過去の事実、実績、成功パターンといった確固たるデータをベースにし、現実をミスなく正確に運用することに最適化されています。 ところが企画会議では、とにかく今までやったことがない突拍子もないアイデアを出せと無茶振りをされます。これはSi型にとって、ハードディスクに存在すらしない未知のデータを無理やり出力しろと脅されているようなもので、システムはエラーを起こして完全に沈黙するしかありません。
彼らは決して思考停止してサボっているわけではありません。誰かが突拍子もない突飛なアイデアを出した瞬間に、その予算はどうやって通すのか、法務の確認はクリアできるのか、現場のリソースは絶対に足りないといった現実的なリスク(エラー)を脳内で瞬時に数十個も検知しています。 しかし、それを口にすれば「せっかくの発散の場に水を差すな、だからお前は堅物なんだ」と嫌な顔をされることがわかっているため、결局何も言えずにただエネルギーだけを激しく消耗していくのです。
NP型の実行エラー
一方で、アイデア出しのフェーズでは水を得た魚のように輝くのが、外向的直観(Ne)を主体とするNP型(探求者タイプ)の人々です。 彼らはAという既存のものとBという全く無関係のものを組み合わせて新しいCを作るという連想ゲームの天才であり、彼らの発言一つで会議の場を圧倒的に盛り上げ、イノベーションの種の活気を作り出すことができます。 ところが、彼らの企画が賞賛され「すごくいいね、では来週までに詳細な実行スケジュールと予算案を引いて、関係各所の根回しをして承認をとってね」という重たい実行フェーズに移った途端、彼らの目の光は死に絶えます。
彼らのやる気の源泉は、新しい可能性を脳内で想像することそのものに全振りされているため、それが現実の地味なエクセル作業や関係者への説明などという事務作業に落ちた瞬間に、完全に興味の対象外となってしまうのです。 結果として、大口をたたいて風呂敷を広げるだけ広げておいて最後まで畳めない、途中で飽きて人に投げ出してしまう無責任な人間というレッテルを貼られ、せっかくのクリエイティビティを持ちながらも企画職としての社内評価を著しく落としてしまいます。 仕事が長続きしないキャリアの悩みに見られるように、このタイプの飽きっぽさは悪意ではなく、単に次の刺激を求める直観エンジンの仕様なのです。
Te型の構造化の壁
さらに別のパターンとして、外向的思考(Te)が強いエリート層の人々の見えない壁があります。 彼らは組織の目的から逆算して、最短距離で効率的な計画を立てる能力に長けています。しかし、効率やKPIの分かりやすさを重視しすぎるあまり、生み出す企画がことごとく「どこかの他社事例ですでに見たことがある、穴はないけれど全く面白みのない優等生的なもの」にしかならないという悩みを密かに抱えがちです。
不確実な遊び心や、どう転ぶかわからない無駄といったノイズを、彼らのOSは非効率だとして直感的に排除してしまいます。そのため、稟議は無難に通しやすいけれど、市場に熱狂を生み出せない企画を量産してしまいます。 クリエイティブなプロフェッショナルが集まる場で、「君の企画は枠にはまりすぎている」「AIが出したみたいだ」と評価されることは、プライドの高いTe型にとって非常に屈辱的であり、これが企画職に対する深い自信喪失へと直結していくのです。
向いてない時の処方箋
私はセンスがないのだ、凡人なのだと結論づけるのはまだ早すぎます。 企画という巨大なプロセスの中で、自分がどのフェーズで躓いているのかが分かれば、戦い方はいくらでも変えられます。
アイデアは編集である
まず、ゼロから全く新しいものを生み出さなければならないというアーティストの呪縛から自分自身を解放してください。 特にアイデア出しで苦しむSi型の人にとって、アイデアとは無から有を生み出す魔法ではなく、既存の成功例や全く違う業界の事例という過去の膨大なデータを引っ張ってきて、自社の文脈に当てはめる「編集作業」だと捉え直すことが重要です。 自分に突拍子もない発想力がないのなら、世の中の面白い事例を誰よりも大量にアーカイブし、「あの業界のあの事例の構造を、そっくりそのままこっちの企画に転用できませんか」と提案する。それは立派な企画の形であり、堅実なデータに基づいている分、上層部の承認も圧倒的に得やすいというあなただけの武器になります。
別のフェーズで輝く
風呂敷を畳めず実行フェーズで失速するNP型の人は、自分の弱点を克服しようと苦手なExcelの勉強や泥臭い進行管理を一人で頑張るのではなく、自分のアイデアを形にしてくれるTe型やSJ型の相棒(優秀な参謀)を社内で見つけることにリソースを割いてください。 企画は天才的な一人がすべてを完結させる必要はありません。 発散と収束という相反するプロセスを、異なる性格OSを持つチームメンバーで完全に分担するだけで、互いの強みが爆発的に活きるようになり、弱点はカバーされます。
自分のOSを知る
自分がどの思考プロセスを得意とし、どこでエンストを起こすのか。 仕事に向いてない理由の解剖の中でも繰り返し解説していますが、自分という乗り物の得意な勝ちパターンを知ることがすべての起点となります。
花形の部署だから、世間体が良いからという虚栄心だけで、自分のOSに合わない役割を無理して演じ続ける必要はありません。 もしあらゆる防衛策を試し、チームでの分業を試みてもなお心が死んでいくのなら、企画職というカードを潔く手放すこともまた、一つの勇気であり高度な生存戦略です。 あなたというOSが最もスムーズに駆動し、誰にも無理なく、息をするように価値を生み出せる場所は、必ず他にあるのですから。
※本記事は自己分析のフレームワークであり、医療的アドバイスではありません。強い抑うつや心身の不調が続く場合は、専門の医療機関や公的相談窓口への受診を優先してください。
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この記事を書いた人
塚田 崇博
Aqsh株式会社 代表取締役
人材業界23年、累計1万人超の面談経験を持つ。ソシオニクス・エニアグラム・ソーシャルスタイル等の性格類型学に精通し、採用・育成・定着を一気通貫で支援。
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