異常に緊張しやすい性格の正体──「失敗を自動シミュレーション」する脳のバグ
みんなの前、たった数十人の前で数分だけ話すことになっただけで、前日の夜から心拍数が異常に跳ね上がり、浅い呼吸のまま一睡もできずに朝を迎える。 いざ本番の日、壇上に上がってマイクを握った瞬間に、全身の血の気が一気に引いて頭の中が真っ白になる。手から異常な量の冷や汗が吹き出し、持っている資料の紙がガクガクと音を立てて震え始める。それに気づいてさらにパニックになり、声は裏返ってうわずり、自分でも何を言っているのか全くわからなくなってくる。 なんとかこの異常なまでに緊張しやすいポンコツな性格を治したい、落ち着け、深呼吸しろと意識すればするほど、息の吸い方がわからなくなり、さらに過呼吸気味になってパニックが無限に加速していく地獄。
日々の生活の中で、このような過剰な緊張のループにどれだけの方が人知れず苦しみ、出勤の朝の電車の中で、このままどこか見知らぬ土地へ逃げ出したいという強い衝動と一人で戦っていることでしょうか。 知恵袋や匿名の悩み相談掲示板を深夜に覗いてみると、単なるあがり症なんていう生易しい言葉では到底片付けられないほどの、切実な恐怖や絶望が毎日のように書き殴られています。そこには必ずどうして自分だけが他の人のように普通に、平気な顔で振る舞えないのだろうという深い自己嫌悪が重くねっとりと張り付いています。
もしあなたが同じように、人前で震える自分をずっと恥じて苦しんでいるのなら。 HRの現場で、そして数多くのメンタルヘルスの残酷なリアルに触れてきた私の立場から、まず一番に、確信を持ってお伝えしたい極めて重要な事実があります。
あなたが異常に緊張してしまうのは、あなたが能力の低い、メンタルが弱い人間だからでは絶対にありません。 むしろ、あなたの脳に生まれつき備わっている危機回避の防衛センサーが、他の何も考えていない鈍感な人たちよりも、何十倍も異常なほど高性能に作られてしまっているからです。
今回は、精神論で手のひらに人を何回書けだとか、深呼吸すれば治るよなどという無責任で浅はかなアドバイスは一切しません。 なぜあなたの心と体は、大切な場面でそこまで強烈にフリーズして裏切ってしまうのか。その原因を、16タイプの性格OS(認知機能の仕組み)というロジカルな観点から、情赦なく解剖していきましょう。
なぜ私たちは異常に緊張し、体が言うことを聞かなくなるのか
人間の脳の古い構造として、緊張というのは本来、自分の命を守るためのただの原始的なアラート機能です。 数万年前の原始時代において、目の前に突然巨大なライオンが現れたら、命を守るために心拍数を爆発的に上げ、思考を停止させて筋肉に大量の血液を送り込み、今すぐ戦うか全力で逃げるかの極限状態に強制的に体をセットする必要がありました。これが生理学的な緊張の正体です。
しかし現代のオフィスや学校の教室の前では、当然ですが本物のライオンは現れません。 しかし、大勢の冷ややかな視線や、初対面の相手からの評価という他者からの冷酷なノイズが、あなたの扁桃体(不安や恐怖を感じる部位)において、ライオンに首を噛み切られるのと同じレベルの生存の危機として瞬時にインプットされてしまっているのです。
もしここでおかしな発言をして失敗したら、こいつは使えないやつだと思われ、私の居場所は本当になくなってしまうのではないか。絶対にミスをしてはいけない、完璧でなければこの集団から排除されて社会的に殺されるに違いない。
震えを無理に抑えよう、落ち着こうと意識すればするほど、脳の原始的な防衛センサーは、あ、いま主人がこれだけ気にして焦っているということは、よほど命の危険が迫っている大ピンチなんだな!と完全に盛大に勘違いし、さらに大量のアドレナリンとコルチゾール(ストレスホルモン)をあなたの血管へドバドバと分泌させます。これが、頭が真っ白になって何も言葉が出なくなり、呼吸が浅くなる、あの中毒性のある恐ろしいパニックの地獄のループです。
では、なぜそこまで過剰なアラートがサイレンのように鼓膜を破る勢いで鳴り響いてしまうのか。 それは、あなたの心の利き手(性格OSの情報処理の極端な癖)が、特定のベクトルに向かってあまりにも強烈に機能しすぎているからです。16タイプのOS別に、その恐ろしいバグの発生源を見てみましょう。
全16タイプ別・異常緊張を引き起こすOSのエラー
1. 最悪の未来を幻視するOS:Ni(内向直観)主導グループ
INFJ(提唱者)、INTJ(戦略家)
彼らのOSは、現在起きている表面的な現象から一つ先の未来を予測し、最適解を導き出す能力に異常に長けています。本来なら天才的なビジョンを描く戦略家の証ですが、これが人間関係のプレッシャーや緊張というバグと結びつくと、自分自身を切り刻む恐ろしいギロチンの刃となって自らの首に向かってきます。
プレゼンや面接の本番直前、彼らの脳内では、スーパーコンピューターのような信じられないほどの高速処理で、考えうる最悪の事態の自動シミュレーションが勝手に始まっています。 もし最初の挨拶で噛んでしまったらどうする? そしたら全員が一斉に冷たい目をしてこちらを見るだろう。あの上司は絶対に呆れてため息をつくはずだ。その後なんとか挽回しようと焦って的外れなことを言えば、さらに場の空気は凍りつく。そしてこのプロジェクト自体が完全に空中分解し、私はこの部署で使えない人間という烙印を一生押され、会社での居場所は完全になくなり、私のキャリアは悲惨で惨めな終わりを迎える──。
まだマイクすら握っていないし、誰も何も喋っていないのに、彼らの脳はすでに自分の永遠のキャリアの終焉という凄惨極まりない悲劇を、4K映画のように鮮明に体験し終えてしまっているのです。脳内に搭載された防衛センサーが、遥か先の未来の絶望まで見通しすぎるあまり、これから起こりうるすべてのバッドエンドの衝撃を一瞬で同時に引き受けてしまい、システムがその負荷に耐えきれずに熱暴走してフリーズ(頭が真っ白になる)する。これがこのグループの、未来からやってくる緊張のメカニズムです。
2. 過去の失敗トラウマが丸ごと蘇るOS:Si(内向感覚)主導グループ
ISFJ(擁護者)、ISTJ(管理者)
このOSの持ち主は、過去の経験や事実を、写真のアルバムのように緻密に保存することに長けています。普段は絶対に致命的なミスをしない堅実で優秀な人たちです。 しかし、ひとたび過去に、人前で大きな恥をかいた、あるいは声が震えてマイクの音が震え、全員にクスクスと笑われたという強烈なトラウマデータが保存されてしまうと、同じようなシチュエーションに立った瞬間、その過去の重いデータが強制的に、一切の痛みの劣化なく鮮明に脳内にフラッシュバックされます。
あ、今のこの張り詰めた静寂、嫌な空気。中学校の全校集会で大失敗して笑われた時の、あの心臓が止まりそうな空気と完全に同じだ。 そう認識した瞬間、現在の機能としてはどんなに大人で準備万端であったとしても、当時の無力で強烈なパニックに陥り何もできなかった小さな頃の自分へと、スイッチ一つで完全に強制リンクされ拉致されてしまいます。 過去の嫌な記憶のデータベースがあまりにも詳細グラフィックで保存されているがゆえに、大人の現在の自分までその記憶のバックドラフト(爆発)に丸ごと飲み込まれ、過去と全く同じ異常な動悸と手足の震え、そして視界の狭窄が突然やってくるのです。
3. 他人の冷たい視線の痛みを強制受信するOS:Fe(外向感情)主導グループ
ENFJ(協力者)、ESFJ(支援者)
彼らが本番で最も恐怖を感じるのは、自分のスピーチが上手くいくかどうかそのものではなく、失敗したことによって、他人が自分に向ける冷ややかで残酷な感情です。 このグループは場の空気を読み取り、他人の感情の波に自分を同調させる(Fe)ことで生きています。そのため、大勢の前に立った時、聴衆の中にたった一人でも、極度につまらなそうにあくびを噛み殺した人や、一瞬だけ不快そうに眉間にしわを寄せた人がいると、そのネガティブな感情の矢が心臓に一直線に深々と突き刺さります。
あ、今、私に失望した。話がつまらないと思われた。みんな私のことを見下しているに違いない。 という鋭い刃物のような痛みを秒速で受信し続け、その精神的ダメージの蓄積に耐えきれなくなって心臓の鼓動が限界突破します。相手はただ昨日の寝不足で半分寝ていただけかもしれないのに、他人の微細な表情の変化をすべて自分のせいとして無意識に処理してしまうこの呪いのような高性能な共感センサーが、彼らをパニックの沼へと引きずり込みます。
4. 準備不足や「想定外」の事態で崩壊する思考OS:T(思考)主導グループとSe(外向感覚)グループ
INTP(論理学者)、ESTJ(管理者)や、ESTP(勝負師)、ESFP(パフォーマー)
普段は感情に流されず理路整然と話すPやTのグループも、緊張と無縁なわけでは決してありません。 T(論理・思考型)のグループは、自分が完全にコントロールできる盤石なロジックの上では無敵ですが、想定外の不条理なクレーム質問をされたり、自分の準備したシステムの論理破綻を会議の場で突かれた瞬間、コントロールの喪失という未知の恐怖に一気にパニックを起こすことがあります。 また、普段は陽キャとして明るいSe(外向感覚)グループは本番の空気を楽しむ天才ですが、それゆえに当日アドリブでいけるっしょ!と甘く見て一切の準備を怠り、いざ蓋を開けて壇上に立って大勢の視線を浴びてから、自分の底の浅さに直面して頭が真っ白にショートする、という自業自得に近いパニックをよく経験します。
治すのではなく、防衛センサーの音量を力技で下げる生存戦略
いかがでしょうか。あなたが異常に緊張して冷や汗を流してしまうのは、あなたがメンタルが弱いからではありません。未来の破滅を誰よりも正確に予測しすぎるから、過去の手痛いミスを鮮明に記憶しすぎているから、他人の冷たい感情に並外れて敏感すぎるから。つまり、人間社会で生きていくための防衛機能がハイスペックすぎるから起きるバグなのです。
ですから、明日からいきなり緊張しないような無敵の鋼のメンタルの人間になろうとか、この臆病な性格を完全に治そうという無謀なアプローチは今日で金輪際捨ててください。 あなたをこれまで残酷な社会から守ってきた高性能なセンサーをぶっ壊して、ただの鈍感なサイコパスになろうとするのは、あなたの優しさや才能を殺すことです。やるべきことは、センサーのボリューム音量を、少しだけ意図的に下げる狡猾なハックです。
具体的な戦略としては以下のようなものがあります。
1. 最悪の未来を紙に書き出し、確率論(Te的アプローチ)で殴る
頭の中で最悪の未来がシミュレーションされて止まらない(Niの暴走)なら、それを一度すべてノートに書き殴ってみてください。言葉を噛んだら即クビになるのか?いいえ、なりません。どんなに人前で恥をかいても、夕方には全員忘れてスマホゲームをしながら酒を飲んでいます。自分の脳内で肥大化した巨大なバケモノを、現実の確率論という刃で切り刻んで小さくするのです。
2. 私は極度に緊張していますと、先に全て白状する(Feの解放)
他人の目が怖い人ほど、完璧な大人として自分を取り繕おうとして自滅します。しかし、一番最初に手が震える状態でマイクを持ち、ごめんなさい、私ものすごく緊張しやすい性格で、今すごく足が震えていて見苦しいかもしれませんが……と冒頭で言ってしまうと、不思議なことに聴衆は、冷ややかな目から、頑張れと応援する温かい親のような目へと一変します。これで、受信する感情のノイズが劇的に良性のものに変わり、パニックは急速に収束に向かいます。
3. 安心できる避難所(ホーム)を見つけ、そこでだけ戦う
最終的に、緊張しやすい人が最も最高のパフォーマンスを発揮できるのは、自分がどんな言い間違いや失敗をしても、絶対に冷たい目で評価しない人たちのコミュニティに囲まれている時です。戦う場所を絶対に間違えないでください。 自分にとって深く安心できる人間関係(相性の良い相手)の構造を知り、そういった味方が周りにいる環境(ホームベース)を築くことこそが、異常な緊張から解放されるための最も根本的な解決に繋がります。
総括という名の免罪符:あなたのその震える声は、真面目さの証明である
本番前に吐き気で胃が痛くなるのも、声が震えるほどパニックになるのも、それはあなたがその場から逃げ出さず、真面目に正面から自分の責任と向き合おうとしているからです。 どうでもいい適当な仕事であれば、人は緊張なんて絶対にしません。怒りや悲しみも同じですが、あなたの感情の暴走は全て愛情と責任感の裏返しなのです。
どうか、震える自分を弱い人間だと毛嫌いしないでください。それはあなたの誠実さの証明そのものです。 自分の性格OSの強い防衛本能とうまく付き合いながら、無理に鈍感な誰かになろうとせず、あなたなりの等身大の震えた言葉で伝えてみてください。その不器用な一生懸命さこそが、流暢で綺麗すぎるスピーチよりも、誰かの心を強く打つことがあるのですから。
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この記事を書いた人
塚田 崇博
Aqsh株式会社 代表取締役
人材業界23年、累計1万人超の面談経験を持つ。ソシオニクス・エニアグラム・ソーシャルスタイル等の性格類型学に精通し、採用・育成・定着を一気通貫で支援。
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