
完璧主義で息苦しい──エニアグラム9タイプ別の疲れる原因と処方箋
完璧主義の正体はタイプによって異なる。タイプ1は正しさ、タイプ3は評価、タイプ6は安全への執着がエンジンになっている。
100点以外は全部ゼロだった
社会人1年目に今すぐ完璧にならなきゃと思い込んで、メンタルを崩した──。こういう体験をnoteやはてなブログに書いている人は、たぶん自分が想像するより多い。
ある20代の女性は、HSP気質を自覚しながら経理職に就いた。ミスをしたら迷惑がかかる。ちゃんとやらなきゃ評価されない。その思考が常時バックグラウンドで走っていて、夜も頭が休まらない。studyhacker.netでは、細部にこだわりすぎて残業が増えたり、初稿からきれいに仕上げようとして効率が上がらないビジネスパーソンの事例も紹介されている。
学生時代に75点を取っても失敗だと感じていた、という告白を読んだことがある。その人にとって、90点は当たり前で、100点だけが唯一の成功だった。75点なんて恥ずかしくて親にも見せられなかったと書いてあった。
問題は、この完璧主義が厚労省のストレスチェックでは拾えないことだ。病名がつかないから、どこにも相談できないまま一人で溜め込む。でもこの完璧主義、エニアグラムのタイプによってエンジンの出どころがまったく違う。だから対処法もタイプごとに変えなければ効果がない。そこが見えていないから「80点でいい」と言われても楽にならないのだ。
9つの完璧主義エンジン
エニアグラムは人間の根源的な恐怖と欲求を9パターンに分類する理論だ。完璧主義という表面的な症状は同じでも、その裏で動いているエンジンはタイプごとにまるで異なる。
タイプ1──正しさの呪縛
タイプ1の完璧主義は、内なる批判者が24時間稼働していることに起因する。正しくなければならない。間違った選択をすること自体が恐怖。
このタイプの人は、仕事の成果物だけでなく自分の言動や考え方にまで正しさを求める。会議で誰かが論理的に筋の通らない意見を言うと、指摘せずにはいられない。指摘しなかった自分に対しても、なぜ黙っていたのかと罰を与える。この内なる裁判官は休日も稼働していて、休みの日に何もしなかった自分を責めたりもする。
弊社の診断では、完璧主義で疲弊しているユーザーの約25%がタイプ1に該当していた。note.comの体験談でも、タイプ1の傾向を持つ人が「ちゃんとしなきゃ」「もっと頑張らなきゃ」という言葉に縛られている様子が繰り返し語られている。
タイプ3──評価の鏡
タイプ3の完璧主義は、成果=存在価値という等式から来ている。数字で証明できないと不安になる。他人の目がない場所では、何をしていいかわからなくなることもある。
SNSの投稿を3回書き直す。プレゼン資料を深夜まで磨く。でもそれはいい仕事がしたいのではなく、評価されない自分が怖いから。uraraka-soudan.comの心理分析では、タイプ3の完璧主義は自己志向的完全主義と社会規定的完全主義が重なるケースが多いと指摘されている。
タイプ3が特に危険なのは、周囲から見ると「優秀で意欲的な人」に映ること。助けを求める前に壊れてしまうケースが少なくない。成果が出ている間は問題が見えにくく、成果が止まった瞬間にすべてが崩れる。
タイプ6──安全の砦
タイプ6の完璧主義は、最悪のシナリオを頭の中で自動再生し続ける脅威検知システムから生まれる。完璧にしておかないと、何かあったときに自分を守れない。
メールを送る前に5回読み返す。資料にミスがないか3人にチェックを頼む。石橋を叩いて叩いて、最終的に渡らない──というパターンもある。fairclinic.onlineの記事では、このべき思考がタイプ6のストレスの根源だと分析されている。
弊社データでは、タイプ1・3・6の合計で完璧主義疲弊ユーザーの約65%を占めていた。この3タイプが完璧主義の中核をなしている。
タイプ2──愛されるための完璧
タイプ2は完璧に尽くさないと愛されないと無意識に信じている。頼まれた仕事を断れない。断ったら嫌われると思うから、残業してでも完璧にこなし続ける。本人は完璧主義だとは思っていないことが多い。ただみんなのためにやっているつもり。でも気づけば自分の時間はゼロで、心身ともに限界を迎えている。
php.co.jpの記事でもhe者に甘えたり頼ったりする勇気が大切と述べられていたが、タイプ2にとって頼ること自体が恐怖なのだ。尽くすことでしか自分の居場所を確保できないと感じている。note.comの体験談で「私がいなくなったらみんなが困る」と思い込んでいたタイプ2の女性が、実際に1週間休んでみたら何も起きなかったと書いていた。その事実が楽にもなったし、少し悲しくもなったと。
タイプ4──凡庸な自分が許せない
タイプ4の完璧主義は、平凡な成果物を出すことへの嫌悪から来る。独自性がない仕事をする自分が耐えられない。だから企画書の冒頭に3時間かけて、他の誰にも書けない導入文を書こうとする。そして書けなくて止まる。
タイプ4が苦しいのは、この完璧主義が質ではなく個性に向かうこと。いい仕事をしたいのではなく、自分にしかできない仕事をしたい。その基準を超えられないと筆が止まる。クリエイティブ系の仕事に就いているタイプ4は特にこの罠にかかりやすい。ポートフォリオの更新を何ヶ月も先延ばしにしているデザイナーは、おそらくタイプ4の完璧主義と闘っている。
タイプ5──知識の穴が恐怖
タイプ5は、知らないことがある状態で発言することを恐れる。だから会議で黙る。完璧に調べ尽くすまで意見を出さない。周囲からは「何も考えていない人」に見えるが、実際は頭の中で情報が整理できるまでアウトプットを保留しているだけだ。
タイプ5の完璧主義は表に出にくい分、本人も自覚しづらい。でも知識の穴に対する恐怖は、行動を止めるブレーキとして確実に作用している。
タイプ7──選択肢を閉じる恐怖
タイプ7は一見、完璧主義と無縁に見える。楽しいことが好きで、フットワークも軽い。でも最高の選択肢を選ばなければならないという形で完璧主義が出現する。レストランでメニューを決められない。転職先を選べない。もっといい選択肢があるかもしれない──そのFOMO(見逃す恐怖)が、意思決定を永遠に引き延ばす。
タイプ8──弱みを見せる隙を潰す
タイプ8は、自分のアウトプットに穴があると他者に攻撃される隙を与えると感じる。だから資料のあらゆるツッコミどころを事前に潰す。それは品質向上ではなく、防衛のための完璧主義。会議で誰かに指摘されることが、タイプ8にとっては敗北を意味する。
タイプ9──波を立てないための完璧
タイプ9は、不完全な仕事をすると誰かに迷惑がかかって関係がこじれると恐れる。争いを避けるための完璧主義。本人は丁寧に仕事をしているだけと思っているが、実際は人間関係の維持コストとしてエネルギーを使い果たしている。
あなたはどのエンジンに近いだろうか。自分のエンジンがどれか気になった人は1分タイプチェックで確かめてみるといい。処方箋はエンジンの種類で変わる。
電源の切り方は9通りある
完璧主義を「やめる」ことはできない。エンジンを完全に止めたら、仕事の質自体が下がってしまう。大事なのは出力を調整すること。エンジンの種類に合わせて、回転数を適切な範囲に落とす方法がある。
正しさの電源を落とす方法
タイプ1向け: 意図的に70点で止める訓練を週に1回だけやってみる。たとえばメールを一度も読み返さずに送る。不完全でも出す、という経験を身体に覚えさせる。オリバー・バークマンの不完全主義という概念──人生の有限性を受け入れることで心の余裕が生まれる──はタイプ1に刺さりやすい。book-awesome.comでもこの書籍が紹介されており、完璧を手放す思考法として注目されている。
評価の電源を落とす方法
タイプ3向け: 誰にも見せない日記を書く。数字で測れない時間を1日15分つくる。散歩でもいいし、何も考えない入浴でもいい。成果指標のない空間に自分を置くことがリハビリになる。leadmind.jpの記事でも「他者に頼る勇気」がタイプ3の回復に不可欠だと述べられていた。
安全の電源を落とす方法
タイプ6向け: 不安を書き出して、その中で実際に起きたことがどれだけあるか数えてみる。大抵の場合、最悪のシナリオは99%実現しない。これを数値で確認する作業は、タイプ6の安心の根拠を作る。akasakacl.comでも80%ルールの実践が推奨されている。
他タイプの処方箋
タイプ2は、頼まれたことを一つだけ断る練習をする。断っても嫌われなかった、という経験が蓄積されると楽になる。タイプ4は平凡な仕事をわざとやってみること。凡庸でも世界は終わらないという事実を、体で知る必要がある。タイプ5は不完全な段階でも同僚に共有してみること。タイプ7は「これ一択でいい」と腹をくくるための制限時間を設けること──5分以内に決めると宣言してタイマーを起動する。タイプ8は穴のある資料をあえて出して、ツッコまれたときに冷静に対処できた経験を積む。タイプ9は自分の意見を先に言ってみること。
正直に言うと、筆者もタイプ1寄りの完璧主義を抱えている。原稿を書いていて、この表現で合っているのかと30分悩むことは今でもある。締め切りの2時間前に全部書き直したくなることもある。でも最近ようやく気づいたのは、完璧主義は治すものじゃなくて付き合い方を変えるものだということ。エンジンを切るのではなく、出力を調整する感覚に近い。そしてその調整方法は、エンジンの種類で変わる。
弊社の診断データでは、自分の完璧主義のタイプを知ったユーザーの約7割が「対処しやすくなった」と回答している。敵の正体がわかれば、闘い方が見えてくる。80点でいいと言われても楽にならなかった人は、まず自分がどのエンジンで動いているのかを知ることから始めてほしい。それだけで、完璧主義との距離感が変わるはずだ。
※本記事は自己分析のフレームワークであり、医療的アドバイスではありません。強い抑うつ、不眠、希死念慮等がある場合は医療機関や公的相談窓口への相談を優先してください。
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この記事を書いた人
塚田 崇博
Aqsh株式会社 代表取締役
人材業界23年、累計1万人超の面談経験を持つ。ソシオニクス・エニアグラム・ソーシャルスタイル等の性格類型学に精通し、採用・育成・定着を一気通貫で支援。
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