
企画職に向いてない証拠──正解を探す病とNeの窒息
企画職に向いていないと思い始めたなら、問題はアイデアの枯渇ではない。あなたの脳が「正解」を探し始めた瞬間に、企画に必要な「遊び」の回路が死んでいるのだ。
枯渇しているのはアイデアではない
転職サイトの口コミで企画職の挫折を検索すれば、アイデアが枯渇して毎日が地獄だという悲鳴が山のように発掘される。しかし、彼らの生態を深くヒアリングすると、残酷な真実が浮かび上がる。彼らに、プライベートの趣味や旅行のプランニングについて尋ねてみるがいい。誰もが狂ったように無限のアイデアを出力し、天才的な段取りを息を吸うように組んでみせるのだ。
つまり、彼らのアイデアを無から有へ生成する機能自体は1ミリも壊れてなどいない。完全に焼け焦げているのは、会社という特定のIPアドレスからクリエイティビティを出力するための通信ポートただ一つである。
SNSのタイムラインで発見したある企画職の絶望の吐露が、このバグの正体を完璧に暴いていた。企画会議で上司から、その施策でKPIはいくら積めるのかと冷徹に問われた瞬間、自分の脳内で巨大なブレーカーが落ち、その後の記憶が白紙になるというのだ。これこそが、他者の正解を探そうとして自分のOSを物理破壊する病の正体である。
ブログ記事でも同様の告白が散見される。企画書を通すたびに、他社での成功事例(前例)の添付を強要されるという地獄。前例を参照した瞬間、それはもはや企画ではなく単なる劣化コピーの作業でしかない。この憤りはクリエイターとして極めて正常だ。しかし、組織の論理とはリスクの完全な排除であるため、Te型(外向思考)やSi型(内向感覚)の管理職が前例を要求するのはシステムとして極めて真っ当な挙動でもある。才能や努力の問題ではなく、Ne型(外向直観)のクリエイターと、保守的な組織のOSが根底から断絶しているだけの構造的事故なのだ。
匿名相談サイトに溢れる企画職を辞めたいという悲鳴に対し、回答者たちは決まって、インプットの量が足りないからもっと休日に市場調査をしろという脳筋のアドバイスをぶつけている。これはSi/Te型の最適解であって、Ne型にとっては猛毒でしかない。Ne型のOSが停止しているのはデータ不足が原因ではない。アウトプットした瞬間に論理と数字のナイフで切り刻まれる物理的・心理的環境によって、生成AIそのものがプロンプトを拒絶している状態なのだ。
正解最適化がNeを殺す
Ne型の遊びの回路
Ne(外向直観)は可能性を拡散する認知機能だ。一つのテーマから無数の方向に枝を伸ばし、まだ存在しない組み合わせを探索する。企画職に必要な「ひらめき」の多くは、このNe的な連想の遊びから生まれる。
Ne型のOSは、制約が少ない環境で最大のパフォーマンスを発揮する。ブレインストーミングの序盤、何を言っても否定されない時間、「とりあえず出してみよう」のフェーズ。ここでNeは自由に走り回って、本人も予想しなかったアイデアを引っ張り出す。
ところが現実の企画会議という密室では、初手から予算、工数、CPAといった冷酷な制約が首に巻き付けられる。客観的リテラシーの管理者たるTeやSiが支配する会議ブロックにおいて、Ne型のOSは酸素を絶たれたように出力をゼロへと落とす。管理者にとって制約は仕事のスタートラインだが、Ne型にとって制約は、脳と直結した手足を物理的に切断されることに等しい。
正解探索というクリエイターの死
クリエイター職の摩耗と適性の論考とも直結するが、企画職で精神をすり減らす人間の大半は、入社直後には誰も思いつかない天才的なNeの閃きで高く評価されていたはずである。しかし組織の摩擦に削られるうち、いつの間にか他者の決めた正解を探しに行くTi/Te的な探索アルゴリズムへと強制上書きされてしまう。
正解探索の恐ろしさは、過去の成功ログという安全な手札だけを切り貼りし、絶対に傷つかない論理的な方程式を組もうとすることだ。数字と前例という絶対防御の盾。しかし、最大のパラドックスが存在する。真に世の中を熱狂させる企画の価値とは、論理的に正しいことではなく、狂気的なまでに面白いことなのだ。正解はExcelの関数から自動生成できるが、他人の心を動かす面白さは、制約のないNeの無責任な遊びの暴走からしか生まれない。管理者の顔色を伺い、怒られないための正解を探し始めた瞬間、その人間は企画者としてはすでに死亡している。
弊社の性格診断データでも、Neを主機能に持つユーザーの7割が、絶対的な自由が担保された空間でしか自身のパフォーマンスは発揮されないと数字で証明している。つまり、安全性を担保しようとする環境の重圧そのものが、企画力を殺す猛毒である。
Ne型とSi型の行動ログの違いは残酷なほどに明確だ。例えば店舗への集客企画というタスク。Si型は過去のビッグデータを参照し、クーポン配布という絶対に失敗しないが無風の施策を提出する。対してNe型は、メニューを全部裏返して注文させる日などの、常軌を逸した狂ったアイデアを10個叩きつける。Siの企画は安全だが誰も感動しない。Neの企画は10個中9個が完全な産業廃棄物だが、残りの1個に世界をひっくり返すイノベーションが潜んでいる。しかし、前例のない廃棄物を見る能力を持たない管理職は、その9個のゴミを見た段階でNe型の人格ごと否定して潰してしまう。
数字化の要求がもたらす完全な沈黙
私がHRの現場で目の当たりにした最も残酷なケースがある。規格外のアイデアマシンだった若手エースが、リーダーに昇格した途端に完全な無能へと転落した。原因は明白だった。肩書きから来る絶対に失敗してはならないという重圧が、彼の脳内のNeに堅牢なファイヤーウォールを構築してしまったのだ。
上司からの、で、それ確実に見込める数字の根拠はあるの?という悪意のない確認。Te型にとっては呼吸と同じ確認作業だが、Ne型にとってはこの一言が、自らの想像力への全否定という致命的なエラーコードとして処理される。数字の裏付けを永遠に問われ続けたNe型の脳は、やがて生存戦略として、過去の実績が証明されている安全な無難案だけを自動生成するようになる。それはもう企画ではなく、誰でもできる単純な事務作業の下請けである。
そして真の地獄はここから始まる。その無難でつまらないコピペ企画が会議で即座に承認された時、上司は「お前もようやくビジネスの数字が読めるようになったな」と最高の賛辞を送るのだ。Ne型にとって、自分の魂を手放して適当に捏造した丸い案が評価されることほど、精神を深く破壊する拷問はない。誰も真似できない突飛な拡張性という最大の武器を窓から捨てさせられ、マニュアル通りの定型作業をこなす機械に成り下がったことで称賛を浴びる。この狂った評価システムこそが、才能あふれるNe型を自分には才能がないという絶望的な自己否定へと追い詰めている真犯人である。
評価会議の密室で、この殺戮ショーを私は何度も目撃してきた。Te型のマネージャーは必ずこう言い放つ。あいつのアイデアは突飛なだけで実現可能性がゼロだ、ビジネスマンとして完全に失格だと。しかし、その突飛なゴミの山の中にこそ、数億円の価値を生む原石が眠っていたのだ。Te型管理職が本来果たすべき役割は、その歪な原石を拾い上げて市場に出せる形に論理武装(研磨)してやることである。それなのに、原石の形が最初から整っていないこと自体を激怒して責め立てる。その結果、その社員は二度と怒られないためだけの、ツルツルに磨かれた無価値な小石しか提出しなくなる。部署の会議は波風立たずに平穏に進むようになるが、会社としては未来のイノベーションの芽を完全に摘み取っているという、最も恐ろしい組織のガンである。
自分がNe型かTe型か分からない人は、あるいは上司のOSを知りたければ1分タイプチェックで確認してみてほしい。
企画OSを再起動する
正解探索を一旦停止する
もしあなたが今、深く絶望して企画職の引退を考えているなら、真っ先に自分のOSの動作ログを確認せよ。あなたの脳は、ワクワクするような狂った面白さではなく、絶対に怒られない正しい解答を探しに行くモードに切り替わっていないか。
死にかけたNeを強制再起動させるための唯一のコマンドは、完全に無価値なゴミアイデアを生成する権限を、自らの脳に再付与することである。こんなものを出したら絶対に稟議で殺されるという企画を、脳内で検閲して消去する前に物理的なメモ帳にダンプしろ。他人の目は一切気にするな。Neという機能は、出力の絶対量に比例してのみ奇跡のクオリティを生み出す。ノイズの母集団を極限まで引き上げた先にしか、神がかった天才の閃きは存在しない。
かつて私が担当したある凄腕の広告プランナーは、国の予算が絡む巨大なナショナルクライアントの専属になった途端、完全にアイデアの出力が停止した。失敗した瞬間に数億円が吹き飛ぶという恐怖と、分厚いKPIの壁によって、彼のNeは完全に焼き切れていた。私は彼を、予算はゼロだが責任と自由だけは完全に担保されたドブ板の新規事業チームへと強制左遷させた。結果、たった3ヶ月で彼の狂気的なアイデア生成能力は完全に元通りに再起動したのだ。失うもののない自由な遊び場。ただそれだけの環境変数で、OSは生き返る。
あなたが今、死の正解探索モードに陥っているかを判定する明確なリトマス紙がある。企画を考えている時に、この構成なら前に通ったパターンに近いと演算した瞬間、それはNeが死んでSi(過去ログの参照)に乗っ取られている。上司のA部長が好みそうな見せ方はどうだったかと考えた瞬間、それはFe(他者の顔色伺い)の防衛本能だ。本物のNeの起動プロセスは、これ絶対に面白いからやろうという本能が先行し、上司や予算の説得はすべて事後処理でなんとかするという暴走の順序である。この処理順序が逆転しているなら、あなたの才能は今まさに組織の論理によって窒息死させられている最中だ。
劣悪なサーバーからの退避基準
あなたの才能そのものが欠落しているのか、それとも今接続している組織というサーバーの環境変数が腐っているのかを、冷徹に切り分けよ。
Webデザイナーの摩耗構造の分析ともリンクするが、クリエイティブの適性というものは、個人のOS単体のスペックだけで決定されるものではない。OSと動作環境の完全なマッチングによる変数だ。利益と予算を至上命題とするTe(実行・管理)特化型の巨大組織の中に放り込まれれば、どれほどの天才的なNe型でも数ヶ月で肺に水が溜まり死亡する。しかし同じ人間が、すべてがカオスで前例など一つも存在しないスタートアップに移籍した瞬間に、世界を獲るプロデューサーへと変貌するのだ。
見極めるための判定基準は3つだ。第一に、仕事以外の遊びや趣味において、狂ったアイデアが今でも湧き出ているか。湧いているならあなたのOSは全く壊れていない。第二に、苦痛の根源はアイデアを出す作業そのものか、それとも出した案を無能な管理者に採点される会議の場か。後者なら組織の問題だ。第三に、今のフロア内に、心の底から才能を尊敬できる企画者が一人でも生息しているか。誰もいないなら、そこはそもそもクリエイティブが生存できる土壌要件を満たしていない。
性格タイプで読む仕事の隠れストレスを併読し、自分のOSが組織のどの有毒なガスにアレルギー反応を起こしているかを正確に特定せよ。
確かな正解のない荒野を愛せるか
最後に究極の問いを投げる。あなたは、誰かが用意した安心できる過去の正解ではなく、バッシングを浴びるかもしれない誰も見たことのないカオスを愛せるか。その荒野にワクワクできるのなら、あなたは間違いなく企画職という生き方を続けるべきだ。もし恐怖のほうが勝つなら、あなたのOSはクリエイティブという不確定変数の多い処理に向いていない。
しかし、そこに優劣はない。自分のOSの仕様に最も合致したインターフェースで戦うことが、人生の燃費を最適化する。企画の世界で挫折したとしても、そこで身につけた正解を探しに行く論理的思考力(Ti/Te)は、マーケターやPMに転身した際に、あなたの武器を最大化するブースターとして確実に機能する。
だが、もしあなたがまだこの狂った企画の世界で血を流して戦い続ける覚悟があるのなら。今すぐやるべきはインプットの勉強などではない。あなたのいびつで狂った最高の原石をゴミだと否定せず、面白がりながら、上司を黙らせる数字と論理のロジックツリーへと翻訳して綺麗に組み立ててくれる、超優秀なTe型のパートナー(通訳者)を死ぬ気で探し出せ。企画という巨大な魔法は、一人の脳内では絶対に完結しない。自分のバグを愛し、一緒に社会実装してくれるバディを見つけ出すこと。それこそが、異端の才能を持つあなたがこの世界で生き残るための、唯一の最強の戦術である。
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この記事を書いた人
塚田 崇博
Aqsh株式会社 代表取締役
人材業界23年、累計1万人超の面談経験を持つ。ソシオニクス・エニアグラム・ソーシャルスタイル等の性格類型学に精通し、採用・育成・定着を一気通貫で支援。
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