
優秀な人を集めても崩れる──認知機能で組むチーム構成の正解
優秀な個人を集めても機能しないチームがある。それは個々の能力ではなく、認知機能の凹凸が噛み合っていないからだ。
全員エースで大コケする
プロジェクトの立ち上げ時、マネージャーがやりがちなことがある。社内で評判のいい人を片っ端から引っ張ってくることだ。実績のあるメンバーばかり集めれば最強チームになる──と思うのは自然だけど、実際にはぜんぜんそうならないケースが多い。24年間、組織コンサルに関わってきた感覚としても、全員エースのチームが空中分解するのは珍しくない。むしろ定番のパターンですらある。
ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビューでも取り上げられている通り、同質性の高いチームは平時のスピードは速い一方で、危機やイレギュラーに極端に弱い。似た思考回路のメンバーが集まると、死角が共有されてしまう。全員が同じ方向を向いているから、横から飛んでくるリスクに誰も気づかない。新規事業のチームで全員がNe型(外向的直観型)だった例があるが、アイデアは山ほど出るのに誰も実行しなかった。
弊社の診断データを分析すると、プロジェクト破綻報告のあったチームの約6割で、メンバーの認知機能が3タイプ以内に偏っていた。逆に認知タイプが5タイプ以上に分散しているチームでは、大きな手戻りの発生率が半分以下に落ちている。別に多様性という理念の話をしているわけではなく、実務上のリスクヘッジとしてタイプの分散が効くという話だ。
人を集めるのではなく、認知機能を組み合わせる。視点を変えるだけで結果が変わる。全員優秀なのに崩壊するチームを見るたびに、これを痛感する。
認知機能の4つの役割
チームの認知バランスを考えるとき、最低限カバーしたい機能が4つある。これは役職の話ではなく、脳の情報処理スタイルの話だ。4つすべてを1人でカバーできる人はいない。だからチームで補完する。
Te型:決めて進める推進力
Te(外向的思考)は効率と成果を最優先で判断する機能だ。プロジェクトの推進役になる。会議で結論が出ないとき「で、どうするの」と切り込めるのがTe型。意思決定の速度をチームにもたらす。情報の整理が得意で、曖昧な状態を構造化する力がある。
ただしTe型だらけになると、決めたら聞かないという暴走モードに入る。反対意見を受け入れる余裕がなくなるのが危険なところで、意思決定は速いが、その決定が正しいかどうかの検証プロセスが抜ける。
Fe型:合意と調整の接着剤
Fe(外向的感情)はチーム内の感情的温度を感知して調整する機能。ファシリテーター的な動きをする。メンバー間の不満やモヤモヤを察知して、表面化する前に火消しする。心理的安全性の設計でも触れたが、この役割が不在のチームは地雷を踏みがちだ。
Fe型がいないとどうなるか。技術的にはうまくいっているのに、なんか雰囲気が悪いという状態になる。誰も言い出せない不満が蓄積して、ある日突然メンバーが辞めるという展開はFe不在チームの典型パターンだ。
Ni型:構想と方向の設計
Ni(内向的直感)は長期的なビジョンを構想する機能。プロジェクトの全体像を俯瞰し、3手先を読む。締め切りに追われている最中にもこの方向で半年後に大丈夫かを考え続けられる。チームの羅針盤と呼べる存在だ。
Ni型がいないチームは目先のタスクに忙殺されて、方向転換が必要なときに判断材料がない。逆にNi型ばかり集まると構想は立派だが実行が伴わない。
Se型:火消しと即応の力
Se(外向的感覚)は今この瞬間の状況を把握して即座に動く機能。トラブル対応や現場での判断が求められる局面で力を発揮する。計画が崩れたときフリーズするのがNi型で、じゃあこうしようと瞬時に動くのがSe型だ。
この4つの認知役割のうち、どれが欠けてもチームは偏る。Googleのアリストテレスプロジェクトが指摘したチーム成功要因は個人の能力より心理的安全性と多様性という知見と、この4機能バランスは本質的に同じことを言っている。違う言語で同じ現象を記述しているだけだ。
5-7人チームの設計法
理論は分かったとして、実際に何人でどう組むのか。アマゾンの2ピザ理論(1チーム最大8名)は組織設計の定番だが、認知バランスを加味すると5-7名が最適だ。少なすぎると機能が足りず、多すぎると調整コストが爆発する。
バランス配分の考え方
完璧な均等分散は不要で、プロジェクトの特性に合わせてウェイトを変える。新規事業立ち上げならNe/Se型を厚めに、運用定着フェーズならSi/Te型を重視する。
5人チームの基本形は、推進(Te)1名、調整(Fe)1名、構想(Ni)1名、実行(Se)1名、残り1名をプロジェクト特性に応じて追加する配分だ。7人まで増やすなら、Ti型(論理分析・品質検証)やSi型(品質管理・ルーティン定着)を加えてカバー範囲を広げる。
ある企業のプロダクトチームでこの配分を意識してメンバーを組み替えたところ、それまで月に2-3回あった大きな手戻りがほぼゼロになったとのこと。チームの総合スキルは変わっていない。認知の組み合わせだけ変えた結果だ。
衝突ペアの距離を管理する
認知機能の組み合わせによっては、構造的に衝突しやすいペアが存在する。ソシオニクスで言う衝突関係、たとえばISTjとENFpは意思決定のプロトコルが真逆だ。ISTjはデータと前例ベースで石橋を叩いてから渡り、ENFpは直感とノリで飛び込む。この2人が同じサブタスクに配置されると、確実に摩擦が起きる。
対策はシンプルで、衝突関係にあるメンバー同士を別サブタスクに配置し、全体会議ではFe型の調整役を間に挟む。排除するのではなく距離を管理する感覚だ。衝突関係のペアはお互いに見えないものを見ているから、チーム全体の視野としては実は価値がある。ただし同じテーブルで議論させると爆発するだけで。
双対関係を意図的に使う
衝突ペアの逆に、補完関係(双対関係)がある。INFjとENTp、INTpとENFjのような組み合わせは、お互いの弱点を自然にカバーする。意識しなくても役割分担が噛み合う。
この関係にあるペアをプロジェクトのコアメンバーに1組入れるだけで、チームの安定性がかなり変わる。チームビルディングの基本でも言及しているが、偶然ではなく設計するのがポイントだ。たまたまうまくいったチームのほとんどは、分析してみるとコアメンバーに双対関係が含まれていた。
まず全員のOSを可視化する
チーム構成の最適化を始めるなら、最初のステップは全メンバーの認知タイプを特定すること。現在の偏りが見えるだけで、なぜ前のプロジェクトでうまくいかなかったのかが構造的に理解できる。
知人のPMの言葉が印象に残っている。メンバー全員のOSを知ったあと、前のプロジェクトの失敗理由が全部説明がついたと。8年PDCAを回してきたけど、初めて本質に触れた気がしたとも言っていた。大げさに聞こえるかもしれないが、認知バランスの偏りを知らずにチームを組んでいたことに気づいた瞬間の衝撃は、けっこう大きいらしい。
チーム内の認知スタイルの相性パターンを確認するのも有効だ。衝突関係・双対関係が一目で分かるから、配置設計の材料になる。1on1の質問設計と組み合わせれば、チーム内の摩擦を早期に検知することもできる。
優秀な人を集めるのではなく、機能を組む。この発想の転換だけで、チームの景色はかなり変わるはずだ。少なくとも同じメンバーの能力を最大限引き出すための設計としては、これが一番コスパがいい。
導入のハードルと超え方
認知バランスでチームを設計する──理屈は分かったけど、うちの会社でそんなことできるのか。この疑問を持つマネージャーは多いだろう。実際、組織のなかで認知機能の話を持ち出すと、占いみたいなものでしょと言われることもある。
まず全員に診断を受けてもらうステップがひとつのハードル。強制すると反発が起きるから、チームビルディング研修の一環として任意で実施するのが現実的だ。お互いを知るためのツールとして位置づけると受け入れやすい。実際、弊社の導入事例では、チーム内コミュニケーション改善の文脈で導入した場合の参加率が85%を超えている。
次に、結果をどう使うかのガイドラインを設けること。タイプで人を決めつけないルールは最低限必要だ。INTjだからリーダーに向かない──こういう短絡的な使い方は百害あって一利なし。あくまで補完関係の設計と衝突リスクの管理に限定して使う。
マネージャー自身が先に診断を受けて、自チームの認知マップを作るところから始めるのがおすすめだ。自分のOSと部下のOSの組み合わせを俯瞰するだけで、なぜあの部下との1on1がうまくいかないのかが腑に落ちることがある。1on1の質問設計と組み合わせて使うと、チーム運営の精度が上がる。
※本記事は自己分析のフレームワークであり、医療的アドバイスではありません。
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この記事を書いた人
塚田 崇博
Aqsh株式会社 代表取締役
人材業界23年、累計1万人超の面談経験を持つ。ソシオニクス・エニアグラム・ソーシャルスタイル等の性格類型学に精通し、採用・育成・定着を一気通貫で支援。
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