
ストレスチェック見て終わり?──認知機能で読み解く高ストレスの正体
ストレスチェックは実施が目的ではない。認知機能の型で読み解くと、数値の裏に隠れた本当のSOSが見えてくる。
受けて終わりの形骸化
年に1回のストレスチェック。多くの企業で義務化されてから数年が経つが、正直なところ受けたけど何も変わらないと感じている従業員がほとんどだろう。産業保健の関係者に聞いても同じ答えが返ってくることが多い。形だけ回しているという現場の声は根強い。
高ストレス者と判定された人のうち、実際に医師面談を受ける割合は10%に満たない。残りの90%はスコアだけ見てまあ大丈夫かで終わりだ。集団分析の結果も人事部のフォルダに眠っていて、具体的なアクションに繋がっていない組織がとにかく多い。
なぜ活かされないのか。理由のひとつは、ストレスチェックの結果がストレスが高い/低いという一元的な尺度でしか読まれていないからだ。高ストレスのスコアが同じ50点でも、何がそのスコアを押し上げているのかは人によってまるで違う。同じ50点のAさんとBさんに同じフォローをしても、片方にしか効かない。それどころか逆効果になることすらある。
弊社の診断データを分析しても、同じ高ストレス判定を受けた人のストレス源が認知機能のタイプによって4つのクラスターに分かれることが確認できている。ストレスチェックの数値に認知機能の視点を重ねないと、的外れなフォローしかできない。ここに気づいている企業はまだ少ない。
OS別ストレスの出方
ストレスの表出パターンが認知タイプごとに違う。ここを押さえないと、せっかくのチェック結果が使いものにならない。以下の4タイプは特にパターンが鮮明だ。
Fe型:感情を吸って爆発
Fe(外向的感情)型は周囲の感情を自然に感知して吸収してしまう。チーム内の不満や緊張を敏感に感じ取って、知らず知らずのうちにストレスを蓄積する。チェック結果では人間関係や職場の支援の項目が突出して高くなる傾向がある。
厄介なのは、本人が自分にストレスが溜まっていると自覚していないケース。他者のケアに忙しくて自分のケアを後回しにする。限界を超えたとき、突然爆発するか、突然動けなくなる。メンタル不調の早期サインでも触れたが、Fe型の危険信号はいつも元気な人が急に無口になるパターンだ。周囲はその変化に気づくのだが、本人に聞いても大丈夫ですとしか言わない。
Xでも共感疲労で検索すると、Fe型っぽい方の投稿がたくさん出てくる。人の相談に乗るのが好きなのに最近それすら億劫になってきた──これはかなり危険な兆候だ。
Ti型:静かに孤立する
Ti(内向的思考)型はストレスを内側で処理しようとする。論理で感情を制御するのが得意だから、チェックのスコア上は意外と低いことがある。自分のストレスを分析して、合理的に対処しようとする。
しかしスコアが低い=大丈夫ではない。Ti型は助けを求めるという行動のハードルが非常に高い。自分で分析して自分で解決するのがデフォルトだから、SOSを出す前に限界を突破してしまう。突然の休職や退職で周囲が驚くのはこのパターン。あの人が辞めるなんて──と言われるが、本人の中では長い間限界だった。
Ti型のストレスは外から見えないのが最大の難点だ。チェックの数値も正常範囲に収まることが多いから、制度的にはキャッチできない。1on1の質問設計を変えないと拾えない層になる。
Se型:環境で劇的に変わる
Se(外向的感覚)型のストレスは環境依存度が極端に高い。良い環境(自由度が高い、身体を動かせる、変化がある)では元気いっぱいだが、拘束的な環境(デスクワーク中心、ルーティン固定、管理が細かい)では急速にストレスが溜まる。
チェック結果の時系列を見ると、異動や上司交代のタイミングでスコアが激変するのがSe型の特徴だ。平均値で見ると普通に見えても、振れ幅が大きい。前回30点で今回70点、みたいな変動がSe型では珍しくない。
Se型はストレスの原因を自覚していることが多い。自由がない、動けない、同じことの繰り返しで死にそう──言語化は明確だ。問題は、それを上司に伝えても環境を変えてもらえないケースが多いこと。
Ni型:最悪の自動再生
Ni(内向的直感)型は、まだ起きていないリスクを無意識に予測し続ける。これが慢性化すると不安の項目だけが異常に高くなる。現在の業務に問題がなくても、半年後に組織改編があったら、この案件が失敗したらという最悪シナリオが脳内で勝手に再生される。
バーンアウト予防の設計でも指摘しているが、Ni型のバーンアウトは目に見える過労ではなく、見えない不安の慢性疲労から始まることが多い。身体的には元気なのに、なぜか常に疲弊している。このパターンは周囲からも本人からも見えにくい。
結果を活かすフォロー設計
ストレスチェックの結果をOS視点で読めるようになったら、フォローの設計も変わってくる。同じ高ストレス者でもアプローチを変えるだけで、フォローの成功率が格段に上がる。
集団分析にOS分布を重ねる
部署ごとの集団分析結果を見るとき、その部署のOS分布と重ね合わせてみてほしい。たとえばFe型が多い部署で人間関係の高ストレスが多いなら、それは関係性の悪化ではなく、Fe型同士の感情共鳴による過負荷かもしれない。Fe型はお互いの感情を増幅し合うから、チーム全体のストレスが連鎖的に上昇することがある。
逆にTe型が多い部署で仕事の量の高ストレスが出ているなら、業務量自体は適正でも、成果へのプレッシャーが相互に強化されている可能性がある。Te型は周囲の成果水準に自分を合わせようとするから、暗黙の競争が発生しやすい。
同じスコアでも解釈が変わるという点が重要だ。数値だけ見てもダメで、その数値がどの認知プロトコルから生成されたかを読まないと、対策が的外れになる。
OS別の面談質問を設計する
高ストレス者面談の質問を一律にするのは効率的に見えて実は非効率だ。
Fe型には最近、誰かのために頑張りすぎていることはないかとダイレクトに聞く。本人は自覚がないことが多いから、具体的な場面を引き出す質問が必要だ。
Ti型には論理的に考えて、現在の状況で非合理だと感じる構造は何かと聞く。感情ではなく構造として語ってもらったほうが本音が出る。辛いですかと聞いても大丈夫ですしか返ってこない。
Se型には今の環境でもっと自由にできたら何をしたいかを聞く。制約を外したときの理想から、現状のストレス源が逆算で浮かび上がる。
Ni型には最近、頭から離れない不安はあるかを聞く。未来への不安は本人にとって当たり前すぎて見過ごしている場合がある。言語化する機会を作ることが重要だ。
環境改善のアクション設計
チェック結果×OS分析でストレス源が特定できたら、環境改善のアクションもOS別に設計する。
Fe型には感情の遮断時間の設計(集中タイムの確保、チャットの通知オフ時間の設定)。Ti型には自律的に動ける裁量の付与(マイクロマネジメントの排除)。Se型には物理環境の改善(立ちデスク導入、外出業務の割当て、会議の短縮)。Ni型には定期的な不安の整理機会(1on1で最悪シナリオを一緒に整理する)。
エンゲージメント向上策とも連動させれば、ストレス低減とモチベーション向上を同時に設計できる。チーム内の認知スタイルの相性パターンを上長が把握していれば、部下へのケアの精度も上がるはずだ。
経営層への説明材料
ストレスチェック×認知OS分析の導入を経営層に上申する場合、ROIの話は避けて通れない。メンタル不調による休職1件のコストは、代替人員の確保・業務の引き継ぎ・生産性低下を合算すると年間300-500万円程度と推計されている。
認知OS分析の導入コストが仮に1人あたり数千円だとすれば、休職を年間1件防ぐだけで投資回収が成立する。しかも認知OS分析は一度実施すればデータが残るから、異動のたびに再利用できる。ストレスチェックの度にOS分布を重ねて分析するだけで、フォローの精度が年々向上していく。
厚労省もストレスチェックの集団分析結果を職場環境改善に活用するよう求めているが、具体的な活用方法が分からないという企業の声は根強い。認知OS分析は、その具体的な活用方法のひとつとして非常に筋がいい。なぜなら、集団分析の数値に意味づけを与えて、アクションに変換できるフレームワークだから。
個人的には、ストレスチェック制度が形骸化している最大の原因は、数値を読み解くフレームワークがないことだと思っている。数値だけ出してもアクションに繋がらない。認知OSはそのフレームワークになり得る。
ストレスチェックの結果をフォルダに眠らせるのは、健康診断の結果を見ずに捨てるのと変わらない。数値の裏にあるOSパターンを読むところから、使えるデータに変わる。せっかく毎年コストをかけて実施しているんだから、活かさないと意味がない。
※本記事は自己分析のフレームワークであり、医療的アドバイスではありません。強い抑うつや不眠、希死念慮等がある場合は医療機関や公的相談窓口への相談を優先してください。
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この記事を書いた人
塚田 崇博
Aqsh株式会社 代表取締役
人材業界23年、累計1万人超の面談経験を持つ。ソシオニクス・エニアグラム・ソーシャルスタイル等の性格類型学に精通し、採用・育成・定着を一気通貫で支援。
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