
好きで始めたWebデザインが辛い──センスの欠如ではなく「思考OS」が焼き切れる構造
「綺麗なサイトを作るのが好きで、一生懸命ポートフォリオを作ってデザイナーになったのに。今は仕事用のMacの画面を開くだけで、動悸と吐き気が止まらない」
キラキラとしたクリエイティブ職に憧れ、スクールに通い、晴れてWebデザイナーの肩書きを手に入れた若者たち。しかし彼らの多くが、入社からたった数年以内に「私にはデザインのセンスがない」「この仕事に向いていない」と深い自己否定のどん底に陥り、業界からひっそりと姿を消していく。
知恵袋やデザイナー系の匿名のコミュニティには、「クライアントの素人丸出しの修正指示が辛い」「1pxのズレを何度も指摘されるのがしんどい」「自分の作りたいものが全く作れず、ただのオペレーターになっている」という、血を吐くような悲鳴が日々投稿されている。
ここで、あなたを苦しめる残酷な真実を言おう。 あなたがWebデザイナーとして日々削られ、限界を迎えているのは、「デザインのセンス」が足りないからでは絶対に、断じてない。
Webデザインという仕事の現場における本質が、「自由でアーティスティックな芸術創造」などではなく、「クライアントの曖昧で情緒的な要求を論理(Te)で翻訳し、それを画面上のピクセルという超ミクロの規律(Si)へと狂気じみた精度で落とし込む、極めて胃の痛くなるような接待実務」だからだ。
あなたの脳の作動OS(情報処理プロセス)が、この特殊で理不尽なプロトコル群に適合しておらず、毎日エラーを吐き出し続けている。ただそれだけのことなのだ。
まるで奴隷のような修正・手戻りの地獄
未経験者が「Webデザイン」と聞いて想像する、自由でクリエイティブな世界。それは実際の現場とは、光と闇ほどもかけ離れている。
実務であなたを待ち受けているのは、クライアントや上司からの「なんかもっと、パァっと明るくして!」「文字を目立たせつつ、でも下品にならない上品な感じで」「ここはとりあえず全部赤文字の明朝体で!」といった、言語化を完全に放棄した暴力的な要求(無理難題)の嵐だ。 彼らはデザインの原則など1ミリも理解していない。デザイナー側は、この「パァッと」という呪文を、「ではベースカラーを#FF9900のトーンに変更し、セクション間の余白を24pxで統一し、フォントウェイトを…」と、血も涙もない冷徹なソースコードとデザインルールの世界へと、己の精神をすり減らしながら翻訳しなければならない。
しかも地獄は、一度作ったら終わりではない。完成間際、納品の前夜になって「社長がやっぱりココを星型に変えたいって言ってるから、よろしく」という、これまでのデザインシステム(全体調和)を一発で木っ端微塵に破壊するような理不尽極まりない修正依頼が平気で飛んでくる。
この時、もしあなたが「自分の感性や内面の美しさ」を絶対的な価値として表現したいと願っているFi(内向的感情)やNe(外向的直感)主導のタイプであれば、その精神的ダメージは計り知れない。
「なぜこの計算し尽くされた美しい余白を、こんなダサい宣伝バナーで潰さなければならないのか」 「私の感性を、そして費やした徹夜の時間を全否定された」
彼らは、クライアントからの修正依頼を単なる「業務上の仕様変更」として受け流すことができない。「自分の存在そのものへの攻撃」として真正面から受け止めてしまうのだ。そして、若手社員が静かに退職していく理由でも強烈に解説したように、「こんな醜くてダサいバナーを作るために、私はデザイナーになったんじゃない」と絶望し、静かに心を閉ざし、Adobeのソフトウェアを永遠に閉じるのである。
クリエイティブ現場で摩耗するOSたち
では、具体的にどの性格OSが、Webデザインの実務フローのどのフェーズで「フリーズ状態(焼き切れ)」を起こすのか。
弊社のユーザーデータ(職種とストレスの相関システム)で可視化された、典型的な限界突破パターンを解剖する。自分がどの壁にぶつかっているのか、過去の記憶と照らし合わせてほしい。
Ne/Fi型(発散の才能と、規律という拷問)
ENFp、INFPなど、直感(Ne)と感情(Fi)を主導機能とするタイプは、ゼロから新しいあっと驚くようなアイデアを発散させたり、ユーザーの感情を揺さぶる「コンセプト」や「世界観」を妄想したりする才能には非常に長けている。
しかし彼らは、「あらかじめ決まったルール(グリッドシステムやコーディング規約)に厳格に従って、淡々と1pxのズレもなく完璧に配置していく」という、内向的感覚(Si)の世界に入った瞬間に、異常なほどの疲労と、息が詰まるような退屈を感じる。
彼らにとっての限界点は、「永遠に続く修正のループとパターン出し」だ。 「A案とB案とC案、とりあえず全部のパターンでボタンを配置してみて」と言われる。彼らの脳内メモリは「無限に広がる可能性の処理」に特化しているため、細かい分岐を強いられるとオーバーヒートを起こす。修正が三回も続けば、「もうどうでもいいから、社長の好きなように赤文字のクソデカフォントにしてくれ。私はもう何も考えたくない」と思考停止(ガス欠)を引き起こし、すべてを投げ出したくなる虚無感へと直行する。
Ti主導(果てしない微調整と、非論理への殺意)
一方、ISTpやINTjなど、内向的思考(Ti)を中心に据えるタイプは、少し事情が異なる。彼らは「デザインを通じた論理的・構造的な問題解決」を愛している。「なぜこのボタンがこの位置にあるべきか」「なぜこの余白が必要なのか」を完璧なロジックで説明できる彼らのデザインは、非常にユーザービリティが高く洗練されている。
しかし彼らのOSが轟音を立てて焼き切れるのは、「論理の全く通じない感情的なフィードバック(Feの無知な暴力)」に直接さらされた時だ。
「ボタンの配置は人間工学的な視点移動の観点から、ここが最適です」とロジックを立てて説明しても、クライアントの担当者が「いやー、わかるんだけど、気分的にもうちょっと右上がいいんだよね。私の直感で」と鶴の一声で覆す。そしてそれを防波堤となって止めるべきディレクターが「お客さんがそう言ってるから、よろしく頼むわ」と丸投げしてきた時。
こうした理不尽な「非合理と知性の欠如」が目の前で繰り返されると、Ti主導のデザイナーは強烈な徒労感と、ある種の殺意に近い怒りに襲われる。 「こんなバカバカしい茶番(論理の破壊)に、私の高性能な思考OSを使う意味などどこにもない」
彼らはある日突然「限界」を迎え、理不尽な人間(クライアント)の世界から完全に足を洗い、一切人間と関わらなくて済むバックエンドのエンジニアやデータアナリストなどに完全転向してしまう事例が、業界では後を絶たない。
職種を変えず「ポジション」を変えるというハック
もしあなたが今、IllustratorやFigmaのアイコンを見るだけで溜め息が出るのなら。 それはあなたが「デザイナー失格」なのではなく、あなたのOSが得意な領分(フロントエンドか、ディレクションか、アートワークか)を無視して、すべてを一人でやろうとしている(あるいはやらされている)からに他ならない。
環境を変えるための、生存戦略の選択肢は明確に2つある。
1. 「調整の地獄」から「技術の城」への逃避
あなたがもし、コードを書いたり、ピクセル単位の整理(Si)や論理構築(Ti)は好きだが、クライアントとの曖昧なコミュニケーションが死ぬほど嫌いなら、フロントエンドエンジニアやUI実装のスペシャリストに完全特化する道を考えよう。 クライアントの機嫌を取る泥臭いディレクションは、それが息をするようにできるTe増やFe主導の別の「人間」に完全に任せ、あなたは自分の城(論理的なコードと完璧なレイアウトの世界)に深く引きこもるのだ。
2. 「作業の地獄」から「上流のコンセプト」への逃避
逆に、あふれるアイデア(Ne)を出すのは得意だが、ちまちました1pxの修正作業やコーディング作業をしていると気が狂いそうになるなら、逆に一段上の「Webディレクター」や「アートディレクター」へポジションを移すべきだ。 あなたはコンセプトと要件だけを固め、あとの「実務としてのデザイン・コーディング作業」は、それが職人仕事として苦にならないSi/Ti主導のメンバーに権限移譲する。プレイヤーが管理職で壊れるミスマッチの逆のパターンであり、あなたは実務から手を引くことで生き返る。
自分の劣等機能(一番苦手なOS)を無理にアップデートしようとして、デザインスキルやコミュニケーション能力の向上に投資し続けるのは、精神を破壊する最悪の悪手である。
Webデザイナーに向いていないと絶望したからといって、すべてを投げ出して全く違う業界に転職する必要はない。同じWeb業界・クリエイティブ業界内でも、あなたのOSが「息を吸うように当然に、無意識にできること」だけを切り取って勝負できるポジションは、必ず存在する。
「自分にはセンスがない」と一人で暗い部屋で泣くのはもうやめよう。 あなたはただ、向いていない「処理プロトコル(作業工程の全て)」を単独で無理やり動かして、自分自身の脳を拷問にかけているだけなのだから。
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この記事を書いた人
塚田 崇博
Aqsh株式会社 代表取締役
人材業界23年、累計1万人超の面談経験を持つ。ソシオニクス・エニアグラム・ソーシャルスタイル等の性格類型学に精通し、採用・育成・定着を一気通貫で支援。
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