
マネジメントが苦手な管理職の正体──プレイヤーから抜けられない認知構造
マネジメントが苦手だという管理職の多くは、実はマネジメント能力が低いのではなく、認知機能のモード切替ができていないだけだ。
なぜ優秀なプレイヤーほど苦しむのか
日本企業の管理職の大半は、プレイヤーとして優秀だから昇進している。営業成績がトップだった人が営業課長になり、技術力が高かったSEがチームリーダーになる。これが日本の昇進の基本構造であり、問題の根源でもある。
ところが管理職に就いた途端、あれほど得意だった仕事が全然うまくいかなくなる。
リクルートマネジメントソリューションズの調査でも、新任管理職が直面する最大の壁はプレイヤーからの意識転換であることが指摘されている。自分でやった方が早い、部下に任せると品質が落ちる──このループから抜けられない。
パーソル総合研究所の調査では、中間管理職の約6割がプレイヤー業務とマネジメント業務の両立に苦しんでいるという結果も出ている。プレイングマネージャーという名の責任だけ2倍になっている人が本当に多い。
これを根性論で何とかしようとしてもどうにもならない。認知機能によって、プレイヤーモードからマネジメントモードへの切替難易度がまるで違うからだ。プレイヤーとして優秀であればあるほど、切替が難しい。なぜなら、脳が成功体験を蓄積しすぎていて、そのやり方を手放すことに本能的な抵抗が生じるから。
タイプ別のマネジメントの壁
Ti型は自分でやった方が早い病
Ti(内向的思考)が強いタイプ──ISTpやINTpは、マネジメントで最も苦労する組のひとつだ。
Tiは内部の論理整合性に異常にこだわる。自分の中に正解の基準があって、それを外に委ねることができない。部下がやった仕事を見て、自分ならこうはしないと思った瞬間に、手を出してしまう。修正するつもりが結局全部やり直しているということが頻繁に起きる。
弊社の診断でTi型と判定された管理職にヒアリングしたところ、部下の仕事を全部やり直してしまい、結局自分が一番忙しくなるというパターンが目立った。部下は任されていないと感じてモチベーションが下がる。管理職は自分だけが忙しいと感じてイライラする。その結果、仕事が増えるのにチームの成果は増えないという最悪のサイクルに入る。
Ti型がマネジメントで成功するには、60点で合格にするという基準を明確に設定する必要がある。自分の100点基準を他人に求めたら、永遠に任せられない。
ある製造業の部長がTi型で、最初は全く部下に仕事を任せられなかった。転期になったのは、自分が入院して2週間不在にしたとき、部下が60点の出来で回してくれたことだった。60点でも回るんだ、という体験がTi型の完璧主義を崩す第一歩になったそうだ。
Ti型の管理職には、あえて不在の時間を作ることを勧めたい。いなくても回る仕組みを作るのがマネジメントの本質で、それはTi型が最も得意な仕組み化の延長線上にある。自分がいなくても回るチームを作ること自体が、Ti型にとって最高のパズルになるはずだ。
Fi型は評価面談で死ぬ
Fi(内向的感情)型──INFpやISFpが管理職になると、一番しんどいのが部下の評価だ。
Fiは自分の内側の価値体系を深く大事にする機能で、他人を外から点数で評価することと根本的に相性が悪い。人に点をつけるという行為そのものに抵抗を感じる。A評価とB評価の間にある差なんて、人間の価値を測れるものじゃないだろうという気持ちが常にある。
評価面談で厳しいフィードバックを伝えなければならないとき、Fi型管理職は自分が傷つくような感覚になる。相手を傷つけることが自分にとっても痛みだから、結果的に当たり障りのない評価をつけてしまう。あなたの強みはここで、もう少し伸ばしていきましょう──と、全員にほぼ同じことを言う。
ある企業の人事部長に聞いた話では、Fi型の管理職は評価点が全員ほぼ同じになる傾向があると言っていた。差をつけると誰かを否定している気になるのだろうと。結果的にチーム内で不公平感が生まれて、頑張っている人ほど離れていく。真面目に成果を出した人がオールBで、のんびりやっている人もオールBなら、モチベーションが壊れるのは当然だ。
Fi型がマネジメントでうまくやるには、評価を人格の評価と業務の評価に完全に分離する技術がいる。あなたという人間は素晴らしい、でもこの業務では目標に対してこれだけ未達だったという事実の分離。これができるようになると、Fi型は逆に最も誠実な評価者になれる可能性がある。
Fi型が管理職として輝くパターンもある。メンター型マネジメントだ。部下一人ずつの価値観や想いに深く向き合う力はFi型の専売特許だ。数値で全員を管理するより、一人ひとりのストーリーに寄り添って成長を支える──このスタイルならFi型は自然体でできるし、部下からの信頼も厚くなる。
Se型の放置マネジメント
Se(外向的感覚)型──ESTpやESFpは、管理職としての初動は速い。問題が起きればすぐ対応するし、決断力もある。会議で揉めている案件を一刀両断に決めてしまうスピード感はSe型ならでは。
でもSe型の弱点は、問題が起きていない平時の管理が苦手なことだ。
部下の長期的な育成計画を立てたり、チームの目標を四半期ごとに設計したりする地道な作業が退屈でたまらない。目の前に火がないときは何をすればいいのかわからず、結果的に部下を放置してしまう。席にいても部下の状況を能動的に確認しに行かない。
Se型管理職のチームは、危機対応は強いけれど平時の生産性が安定しない。部下からすると、いるときはものすごく頼りになるけど、いないときは何の指示も出ないという印象になりがちだ。良くも悪くも、上司のテンションに振り回される感覚を部下が持つことが多い。
弊社の診断でSe型と判定された管理職に聞いたところ、マネジメント研修で計画書を作らされるのが地獄だったと言っていた。3か月後の目標なんてそのとき考えればいいでしょ、という感覚はSe型そのものだ。でもその分、火事場での決断力は他のタイプの追随を許さない。その使い分けを自覚できるかどうかが、Se型管理職の明暗を分ける。
Ni型のビジョン先行型の落とし穴
Ni(内向的直観)型の管理職──INTjやINFjは、ビジョンを描くのは得意だけれど、5年後の理想を見せるのに今日何をするかを具体的に指示できないことがある。部下からすると、言っていることはかっこいいけど結局何をすればいいのかわからないという状態になる。
Ni型の管理職がうまくいくためには、Te的な実行力のある右腕を探すことだ。ビジョンを描くのはNi型の仕事、それをタスクに分解して部下に展開するのはTe型の仕事。この役割分担ができれば、Ni型は非常に優れたリーダーになれる。
プレイヤーに戻る選択肢もある
マネジメントをやらない管理職
24年間の人事経験で言えることがある。全員が管理職に向いているわけがない。
Ti型が品質の番人としてスペシャリスト職に就いた方が、組織へのインパクトが大きいケースは山ほどある。Fi型がメンター的な1on1で若手を育てる方が、評価面談で全員を平均点にしてしまうより組織のためになる。Se型がトラブルシューター兼プレイングマネージャーとして現場に近いポジションにいる方が、デスクに座って計画書を書くより100倍の価値を生む。
パーソル総合研究所の調査では、中間管理職の約6割がプレイヤー業務とマネジメント業務の両立に苦しんでいるという結果がある。6割だ。過半数が苦しんでいるということは、この構造自体に問題があるということだ。
最近は管理職とスペシャリストのデュアルラダー制度を導入する企業も増えている。自分がマネジメントに向いていないと感じたら、その感覚は正しい可能性が高い。むしろその自己認識ができていること自体が貴重で、向いていないのに気づかずに部下を潰し続ける管理職より何倍もマシだ。
管理職を断る勇気を持つことも、時には必要だ。日本の組織では管理職を断る=出世を諫めるという空気が今だにあるのだけれど、向いていない仕事を無理に続けて心身を壊す方が、よほどキャリアにとって致命的だ。
どうしてもマネジメントするなら
それでも組織の都合でマネジメントを続けなければならない場合もある。そのときは自分の認知機能の弱点を補う仕組みを先に作ること。
Ti型なら、部下へのフィードバック基準を数値化してチェックリストにする。感覚で見ると100点を求めてしまうから、チェックリストが60点を超えていれば合格と決めてしまう。チェックリストを作ること自体はTi型の得意技だから、仕組み化の能力をマネジメントに転用するのだ。
Fi型なら、評価の根拠を事実ベースで記録する習慣をつける。月に一度、部下の業務成果をファクトとして記録する。感情で評価しないのではなく、感情のあとに事実を添えることで、本人にとっても納得しやすいフィードバックになる。
Se型なら、週次の1on1を機械的にスケジュールに入れてしまう。問題が起きていなくても話す。火のない平時の型を作ることで、放置マネジメントを構造的に防ぐ。カレンダーに入っている予定を消すのはSe型でもハードルが高いから、先にブロックしてしまえばサボりにくくなる。
自分の思考のクセと管理スタイルを先に理解してから対策を打つのが、遠回りに見えて一番の近道だ。
編集部の見解を書かせてほしい。マネジメントが苦手だという相談を受けたとき、まず確認するのは能力の問題なのか、それとも認知機能の問題なのかという切り分けだ。
能力の問題なら研修で補える。でも認知機能の問題なら、研修で変えるのは難しい。Ti型に「部下に任せる優しさ」を研修で教えても、元の認知機能が変わらないかぎり、ストレスを解消せずにマスクを被せているだけになる。
反対に、Te型──ENTjやESTjはマネジメントとの相性が良い。Teは外の世界を効率的に組織化する機能だから、チームの目標設定、業務配分、進捗管理が自然にできる。ただしTe型にも弱点はあって、部下の感情面のケアが手薄になりがちだ。タスクは完璀に管理するのにメンバーが疲弊していることに気づかない、というパターンはTe型管理職の定番だ。
人事をやっていると、組織はマネジメントの形を一つに統一したがる。でも認知機能が違えば、マネジメントの形も違って当然だ。Ti型は仕組み化で管理すればいいし、Fi型は1on1で一人ひとりに向き合えばいいし、Se型は危機対応型の現場監督でいい。全員に同じ型をはめるのは、全員に同じ靴を履かせるようなものだ。合わない靴では、走れるわけがない。
※本記事は自己分析のフレームワークであり、医療的アドバイスではありません。
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この記事を書いた人
塚田 崇博
Aqsh株式会社 代表取締役
人材業界23年、累計1万人超の面談経験を持つ。ソシオニクス・エニアグラム・ソーシャルスタイル等の性格類型学に精通し、採用・育成・定着を一気通貫で支援。
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