
フリーランスに向いてる性格の正体──認知機能で読む独立適性の地図
フリーランスエンジニアに向いている性格は一つではない。ただし、向いていない性格は割とはっきりしている。そこを見誤ると独立してから地獄を見る。
独立して後悔する人の共通点
エンジニアとして3年、5年と経験を積むと、独立という選択肢が視界に入ってくる。フリーランスの年収は会社員時代の1.5倍なんて情報がネットにあふれているし、時間も場所も自由に選べるという触れ込みも魅力的だ。最近はフリーランスエージェントが乱立していて、登録するだけで案件が飛んでくるから、独立のハードルは体感的にどんどん下がっている。でも独立が容易になったのと、独立がうまくいくのは全く別の話だ。
ただ、独立して1年以内に会社員に戻るエンジニアは実はかなりの数いる。中小企業庁のデータでは個人事業主の廃業率は1年で約3割というものもある。エンジニアに限った統計ではないけれど、独立の甘くない現実を示す数字だ。
理由は技術力不足ではない。フリーランスという働き方と、自分の認知機能が致命的に合わなかったケースがほとんどだ。
noteであるフリーランスエンジニアがこう書いていた。技術は好きだし案件もある、でも見積もり作って請求書出して確定申告して、一人の時間が長すぎて正気を保てなくなった──。このタイプは技術力の問題ではなく、孤独耐性の限界に達している。
別のエンジニアのブログには、会社員時代は周りに合わせるのがストレスだったのに、いざ独立してみたら何時に起きても何を食べても自由すぎて逆に不安になった、生活の型がないと自分が溶けていく感覚がある──と書かれていた。自由が合わない性格の人には、自由は監獄にもなり得るということだ。
認知機能別の独立スタイル
Te-Ni型は計画的に独立して勝つ
Te(外向的思考)とNi(内向的直観)が上位のタイプ──ENTjやINTjは、フリーランスに最も構造的に向いている。
Teは外の世界を効率的に組織化する能力だから、営業・見積もり・契約・請求といったビジネスオペレーションを仕組みとして淡々と回せる。経理作業もストレスではなく、ビジネスの一部として処理する。Niは長期ビジョンを持つ機能だから、3年後にこうなりたいという目標からの逆算で今日の行動を決められる。
この組み合わせは独立の全工程と相性がいい。案件の選定も戦略的で、単価交渉もロジカル。感情で安売りしない。会社員時代に上司に不満を持ちやすいタイプでもあるから、独立が精神的にフィットすることが多い。自分の意思決定で動ける環境が、Te-Ni型のパフォーマンスを最大化する。
弊社の診断でTe-Ni型のフリーランスエンジニアにヒアリングしたところ、独立後の満足度は一貫して高い傾向があった。ただし人間関係の構築が雑になりがちで、リピートクライアントの維持に苦労するケースはある。効率を追求するあまり、関係性のメンテナンスを怠ってしまうのだ。技術的な提供価値は高いのに、なんとなく冷たい印象を持たれてリピートされないのは、Te-Ni型フリーランスあるあるだ。
対策としては、案件完了後に1通だけ花を添えるメールを送る、定期的に近況報告を入れるなど、Fe的な行動をルーティン化するといい。Te-Ni型はルーティン化さえできれば守れるから。
Se-Ti型は現場案件で無双する
Se(外向的感覚)とTi──ESTpタイプは、SES型のフリーランスで力を発揮する。
常駐案件で客先に入り、現場の空気を読みながら即戦力として動く。Se型は新しい環境への適応が速いし、Ti型は技術的な問題を即座に分解して処理できる。現場が変わるたびに新鮮な刺激があるから、飽きにくい。チームに溶け込むスピードも速いので、クライアントからの評価が高くなりやすい。
ただし、完全リモートの受託開発とは相性が悪い。Seは物理的な環境や人との直接的なやり取りからエネルギーを得る機能だから、自宅で一人でコードを書く生活が続くと活力が枯渇してしまう。リモートワーク全盛の時代だけど、Se-Ti型にとっては出社できる現場の方がパフォーマンスが出る。
弊社の診断でSe-Ti型だったフリーランスエンジニアに聞いたところ、コロナ禍でリモートに切り替わったときが一番きつかった、出社が復活してから元気になったという声があった。
リモートワークと認知機能の相性は、フリーランスの働き方を考える上で見落としがちなポイントだ。フリーランス=リモートというイメージが強いけれど、Se型やFe型のように外の世界からエネルギーを得るタイプにとって、完全リモートはエネルギーの供給源を断つことになる。逆にTi型やNi型はリモートの方が集中できて生産性が上がることが多い。
独立する前に、自分がリモート向きか現場向きかを認知機能で判断しておくこと。それだけで案件の選び方が変わる。
Ne-Fi型は複数案件の並列ワーカー
Ne(外向的直観)とFi(内向的感情)──ENFp、INFpタイプは、一つの案件に集中するより、複数の小さなプロジェクトを同時に走らせるスタイルが合う。
Neは可能性を広く拾うから、一つのことだけをやっていると窒息する。技術顧問、コードレビュー、個人開発、技術記事の執筆、オンラインメンタリング──こういう複数の収入源を持つポートフォリオ型フリーランスが、Ne型の理想形だ。
Fiは自分の価値観に沿わない仕事に拒否反応を示すから、受ける案件を選べるフリーランスの方が会社員より精神衛生がいい。社内政治に巻き込まれない、納得できない仕事を断れるという自由は、Fi型にとって年収以上の価値がある。
ただし確定申告や経理作業があまりに苦手で、そこで躓くことが多い。freeeやマネーフォワードに丸投げするか、税理士を早い段階で雇ってしまった方がいい。Ne-Fi型が経理作業に意志力を消耗するのは、本来クリエイティブな出力に使うべきリソースの無駄遣いだ。
Ne-Fi型がフリーランスで一番ハマるのは、実は技術以外の活動が収入源になるときだ。技術ブログの広告収入、オンラインメンタリング、技術書の執筆──こういった副収入があると、一つの案件が切れたときの接突感が消える。Ne型は一本足よりポートフォリオ型の方が精神的に安定する。
副業からの段階的独立もある
一気に独立するのが怖いなら、副業から始めるという選択肢もある。これは認知機能の観点からも理にかなっている。
Si型やFe型のように安定を求めるタイプは、会社員を続けながら土日や平日夜に副業で案件をこなす。収入の安定を保ちながらフリーランスの働き方が自分に合うかどうかを検証できる。半年やってみて、孤独が平気なら独立向き、孤独がきつかったら会社員向きだとわかる。
Te-Ni型やNe-Fi型は副業の段階を飛ばしてもうまくいくことが多い。でもSe-Ti型やFe-Si型は、副業というクッションを置いた方が安全だ。認知機能によって独立の最適タイミングも違うのだ。
会社員の方が活きるタイプもいる
Fe-Si型は正直に独立しない方がいい
Fe(外向的感情)とSi(内向的感覚)──ISFjやESFjは、フリーランスとの相性があまりよくない。正直に言ってしまう方がいいと思う。
Feは周囲との関係性の中で自分の立ち位置を確認する機能だ。チームがあって、同僚がいて、感謝される場面があることで安定する。フリーランスの孤独な環境では、自分が役に立っている実感を得にくい。クライアントからの感謝はあるけれど、それは取引関係の中での感謝であって、チームの一員として存在を認められる体験とは質が違う。
Siは安定した環境でルーティンを守ることでパフォーマンスを発揮する機能だから、案件が変わるたびに環境が激変するフリーランスの不安定さがストレスになる。来月の仕事があるかどうかわからないという不確実性は、Si型にとって慢性的な不安の種になる。
もちろんFe-Si型でもフリーランスとして成功している人はいる。ただ、その多くは意識的にコミュニティに参加したり、常駐型の長期案件を選んだり、同業者との定期的な勉強会を主催したりして、孤独を回避する工夫をしている。気合いでなんとかしているというよりは、明確な対策を打っているのだ。
Fe-Si型が独立するなら、最初からコワーキングスペースの契約をする、フリーランスのコミュニティに入る、最低週一回は誰かと対面で会う予定を入れる──この3つを独立初日から実行した方がいい。孤独は放置すると加速度的にきつくなるから、予防が先だ。
Ti-Ne型は独立のタイミングを間違えがち
Ti(内向的思考)とNe──INTpタイプは、技術力は十分あるのに独立のタイミングを間違えやすい。
Neが可能性を広げすぎて営業の方向性が定まらない。フロントもバックもインフラも機械学習もやりたいと言ってしまうから、何の専門家なのか外から見えない。Tiが細部にこだわりすぎてポートフォリオが未完成のまま放置される。準備を100%にしてから独立しようとして、永遠に準備が終わらない。
このタイプは、ある程度見切り発車で飛び込んだ方がうまくいく場合が多い。完璧主義のTiを封印して、Neの好奇心に任せて最初の案件を取ってしまう方が、結果的に軌道に乗りやすい。最初の案件が完璧でなくても、走りながら調整する能力はTi-Ne型にはある。
弊社で診断を受けたTi-Ne型のフリーランスエンジニアの中に、準備に2年かけて結局独立できなかった人がいる。ポートフォリオを完璧にしてからと思い続けて、永遠に完璧にならなかった。過去形で書いているのは、その後、知人の紹介で小さな案件を受けてみたら、そのまま軌道に乗ったからだ。ポートフォリオは今も未完成のままだけれど、案件は回っている。
自分の認知機能のスタックを正確に把握しておくことが、独立の成否を分ける最初のステップになる。性格を変える必要はない。性格に合った独立の形を選べばいいだけだ。
編集部の見解として、一つ追加しておきたい。フリーランスの最大のリスクは、収入が不安定になることではなく、自分の働き方を自分で設計しなければならないことそのものだ。会社員のときは、工程もスケジュールも会社が決めてくれた。フリーランスはその全部を自分でやる。この「全部自分」が合う認知機能と合わない認知機能がある。
独立して失敗したエンジニアの中には、一度会社員に戻ってから再独立してうまくいった人もいる。違いは、最初は自分の性格を理解せずに飛び込み、二度目は自分の認知パターンを把握した上で独立の形を設計したことだ。英語でいうknow yourself。古代ギリシャの時代から言われていることを、フリーランスエンジニアの文脈で実感せざるを得なかった、という話。
※本記事は自己分析のフレームワークであり、医療的アドバイスではありません。
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この記事を書いた人
塚田 崇博
Aqsh株式会社 代表取締役
人材業界23年、累計1万人超の面談経験を持つ。ソシオニクス・エニアグラム・ソーシャルスタイル等の性格類型学に精通し、採用・育成・定着を一気通貫で支援。
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