
教員に向いていない──真面目な人ほど辞めたくなるストレスの正体
教員に向いてないと感じる理由は子どもへの愛情不足ではなく、認知機能と教育現場の要求のミスマッチであることが大半だ。
子どもは好きなのに辛い
2024年度、精神疾患で休職した公立学校の教職員は過去最多の7,119人。そしてその約2割がそのまま退職している。文部科学省の調査だから、数字に嘘はない。
元小学校教師がteacher-happiness.onlineに書いていた体験談を読んだ。忙しすぎて対応しきれない。勤務時間が長すぎる。体調不良でも休めない。子どもたちのために教壇に立ったはずなのに、気づけば自分の心と体が壊れていく。5年と持たなかった、とあった。
note.comでは、ある教師が失敗した際に管理職から感情的に指導された経験を綴っていた。安心して働けないと感じた、と。この一言に凝縮されている問題は深い。心理的安全性がない職場で、教師は教えることに集中できるわけがない。
文科省の調査では、仕事で強いストレスを感じる内容として保護者・PTA対応を挙げた教員が小学校で34.3%、中学校で36.7%にのぼる。個人の携帯電話への連絡や人格否定に近い言葉を浴びせられるケースもあり、精神的に追い詰められる教師は少なくない。
2025年のkyoiku.suntory.co.jpの調査では、若手教員の3割以上が「3年以内に辞めたい」と回答したデータも出ている。ベテランよりも若手の方が辞めたいと感じている現実がある。求人サイトのデータでは、教員からの転職希望登録が年々増加しており、特に20代後半からの登録が目立つ。倍率の高い採用試験を突破してせっかく教壇に立ったのに、数年で燃え尽きる。この構造は個人の資質の問題ではない。
問題は、この仕事がつらいのは自分の努力が足りないからだと自分を追い込んでしまう教員が多いこと。真面目な人ほどそうなる。でも辛さの正体は認知機能のOSと教育現場が要求する仕事の不一致かもしれない。
教室で壊れるOSの構造
教員に求められるスキルは多岐にわたるが、大きく分けるとFe(対人共感)、Te(効率的な運営)、Se(即応的な対処)の3つが同時に要求される。問題は、この3つすべてが得意な人間はほぼ存在しないということだ。
Fe型が燃え尽きるまで
Fe(外向的感情)主導のタイプは、生徒一人ひとりの感情を受信する能力が高い。教壇に立てば子どもたちの微妙な表情の変化に気づくし、保護者の不安も感知できる。
ところが30人のクラスを担任すると、30人分の感情が毎朝流れ込んでくる。いじめの兆候、家庭の問題、友人関係のもつれ。全部拾ってしまうのがFe型の仕様で、それを止めることはできない。
senseiteatime.comの記事では、HSP気質の教員は完璧主義と生徒への過度な感情移入で消耗しやすいと指摘されている。これはFe型のOSが過負荷を起こしている状態にほかならない。
弊社の診断データでは、教職経験者の約6割がFe/Fi主導タイプ。共感力が高い分、壊れやすい構造にあることが見えてくる。Fe型の教員に話を聞くと、共通しているのは生徒のことが気になって帰宅後も考え続けてしまうという症状。物理的に学校を出ても、心が教室に残っている。オフのスイッチが入らないのだ。
Fe型の教員が保護者対応で潰れる構造も見逃せない。Fe型は相手の感情を受信する能力が高いから、保護者の不満や怒りをダイレクトに受け止めてしまう。Te型の教員なら事実確認と対策に切り替えられる場面でも、Fe型は相手の感情に引きずり込まれて精神的に消耗する。保護者との電話が終わった後、手が震えていたというFe型の教員の話を聞いたことがある。相手の感情が自分の体に流れ込む感覚があると。それはFeの仕様であって、精神力で制御できるものではない。
Te型が非効率に絶望する
Te(外向的思考)主導のタイプは、効率的にシステムを回すことに長ける。組織を改善し、ムダを省き、結果を出す。ビジネスの現場なら重宝される能力。
でも教育現場にはIT化の遅れ、前例踏襲の文化、意味の見えない書類仕事が山積みになっている。stanby.comの記事でも、教員の業務負担はICT導入の遅れによる非効率が一因だと指摘されている。
この会議、メールで済むのに。この書類、誰が読むんだ──こう感じたことがある教員は、おそらくTe主導タイプ。非効率は我慢すればいい問題ではなく、Teの認知機能を直接攻撃するストレッサーなのだ。Te型の教員が最も辛いと感じるのは、改善提案をしても「前例がないから」と却下されること。何度か提案して何度か却下されると、Te型は静かに離脱を決断する。
Fi型の理想と現実の乖離
Fi(内向的感情)主導のタイプは、一人ひとりに寄り添う教育を理想とする。教員を目指した動機も「この子の成長を見守りたい」「教育で社会を変えたい」といった信念であることが多い。
しかし現実は40人学級で保護者のクレーム処理。理想の教師像と現実の自分の乖離に、Fi型は静かに壊れていく。e-aidem.comの記事では「無条件に子どもを可愛いと思えない自分は教師に向いていないのか」という悩みも紹介されていた。
Fi型にとって辛いのは、忙しさそのものではなく、自分が大切にしている価値観が踏みにじられること。教育とは何かを考えている暇もなく書類を処理し、テスト結果で評価される日々が、Fiを枘らす。
Fi型の元教員に話を聞いたとき、印象的だったのは「教育が嫌いになったわけではない」という言葉。「この環境では、自分が信じる教育ができない」──それが離職の本当の理由だった。Fi型は仕事を辞めるのではなく、理想を辞めさせられることに耐えられない。
Ni型が学校を見限る瞬間
Ni(内向的直観)主導のタイプは、長期的なビジョンから逆算する。教育現場の未来が見えないと判断したとき、静かに離脱を決める。表面的には一生懸命に見えるが、心の中ではすでにここに長くいるつもりはないと決断していることが多い。Ni型の教員はEdTech企業やカリキュラム設計の分野に転身するケースが見られる。教育への情熱がなくなったのではなく、教壇の上では実現できないビジョンを追いかけ始めたのだ。
Se型が教室で窒息する
Se主導のタイプは体を動かしながら即応することに長けるが、時間割に縛られた教室空間はSeの行動力を封じ込める。部活動の指導だけは楽しい──そう感じている教員はSe型の可能性が高い。体育教師のSe型には天職だと言う人がいる一方で、教室での座学指導は「自分が生徒より退屈している」と苦笑する人もいた。Se型の教員は、アウトドア教育や体験学習型の授業に配置されると、見違えるように活き活きする。
自分がどのパターンに近いか気になった人は1分タイプチェックで分かる。
教壇を降りる前に知ること
教員を辞めたいと思ったとき、多くの人は教育をあきらめるのかと自分を責めてしまう。でも教育への貢献は教壇の上だけに限らない。
教育の外にも貢献の場がある
教育コンテンツ制作、EdTech企業、企業研修講師、キャリアカウンセラー──教員のスキルが活きる場は教壇の外にもある。thecareer.jpでも教員からの転職先として、教育に関わり続けられる選択肢が紹介されている。
特にFe型は、そのコミュニケーション能力を人事や福祉領域で活かせることが多い。Te型は教育行政や学校経営コンサルタントとして力を発揮できる可能性がある。Fi型は少人数制の塾やフリースクールのように、一人ひとりに向き合える環境に移ることでFiが再点火するケースもある。
弊社でキャリア相談を受けた元教員の中には、企業の人材育成部門に転職して「教える喜びは同じだが、保護者対応と行事運営がない分、純粋に教育に集中できる」と話していた人がいた。教育への情熱を活かしつつ、OSに合う環境を探す。それは逃げではなく、戟略だ。
辞めさせないことが正解とは限らない
nekomalu-sensei.comの記事では、教員が特に辞めたくなる時期として4月(スタートの重圧)、9月(夏休み明けのギャップ)、12月(行事ラッシュの疲弊)が挙がっている。でも辞めたいと感じること自体は、脳がこのままでは壊れると警告を出しているサインでもある。
まずは休むこと。それから自分のOSを知ること。自分が何に向いていて、何に向いていないのかを認知機能の視点で理解することが、次の一歩を踏み出す土台になる。あなたのタイプの同僚との相性を見ることで、職場環境の合う・合わないの判断材料も手に入る。
教員を24年間見てきて思うのは、辞めること自体を悪いことだと思わないでほしい、ということだ。教壇を降りても教育に関わる方法はいくらでもある。Se型の元教員がアウトドア教育の会社を立ち上げた例もあるし、Ni型の元教員がEdTech企業でカリキュラムを設計して文部科学省の事例に取り上げられた話も聞いた。教壇を降りたからといって、教育を止める必要はない。
※本記事は自己分析のフレームワークであり、医療的アドバイスではありません。強い抑うつ、不眠、希死念慮等がある場合は医療機関や公的相談窓口への相談を優先してください。
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この記事を書いた人
塚田 崇博
Aqsh株式会社 代表取締役
人材業界23年、累計1万人超の面談経験を持つ。ソシオニクス・エニアグラム・ソーシャルスタイル等の性格類型学に精通し、採用・育成・定着を一気通貫で支援。
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