
塾講師に向いてる性格の真実──認知機能で見える教える才能の構造
塾講師に向いている性格はコミュニケーション力が高い人──とよく言われるけれど、その説明では何も解像度が上がっていない。実際には、認知機能の種類によって教え方の得意パターンがまるで違う。
教え方が合わないと生徒も講師も壊れる
塾講師のバイトをしたことがある人なら、こんな経験がないだろうか。自分では丁寧に教えているつもりなのに、生徒の目がどんどん死んでいく。逆に、適当に雑談しながら教えた回の方がなぜか生徒のテストの点が上がった。
頑張って準備した授業がスベった日の帰り道は本当にしんどい。何が悪かったのか反省するけれど、いくら考えてもわからない。同期の講師は特に何も考えてなさそうなのに生徒に大人気で、自分の方が教科の知識は深いはずなのにと、劣等感でおかしくなりそうになることもある。
これは教え方のスキルの問題ではなくて、自分の認知機能と生徒の受け取り回路が噛み合っているかどうかの問題だったりする。
ある塾経営者に聞いた話では、講師の適性が教科の得意不得意より教え方のスタイルで決まるということに、現場では10年前くらいに気づいていたという。でもそれを性格理論で体系化できていなかったから、結局はベテラン講師の感覚頼みが続いている。講師研修をやっても、全員に同じ教え方を教えるだけだから、合わない人にとっては苦痛が増えだけで終わる。
文部科学省の調査でも、教育現場では教員の個性に合った指導法の開発が課題として挙げられている。塾業界はそれがもっと顕著で、講師の個性を指導スタイルに活かすノウハウがほとんど共有されていない。
認知機能別の教え方適性
Fe型は共感で引っ張る講師
Fe(外向的感情)がメインのタイプ──ESFjやENFjは、生徒の感情に寄り添いながら教えるスタイルが圧倒的に得意だ。
生徒が問題を間違えたとき、Fe型講師はまず生徒の表情を見る。悔しそうなのか、全然わかっていないのか、あきらめているのか。その感情状態を正確にキャッチしてから、声のかけ方を変える。悔しそうならここまで合ってたよと前向きに、あきらめているならちょっと簡単な問題で成功体験を作ってから戻す。この瞬間的な判断がFe型の武器だ。
弊社の診断でFe型と判定された塾講師へのヒアリングでは、生徒が笑顔になった瞬間が一番嬉しいという声がほぼ全員から出た。成績が上がったことより、わかったと目を輝かせた瞬間の方が記憶に残るという。逆に言えば、成績が上がっても生徒の反応が薄いとやりがいを感じにくいということでもある。
Fe型講師の弱点は、保護者対応で消耗しやすいことだ。モンスターペアレントに理不尽なことを言われても、相手の気持ちが理解できてしまうから反論しにくい。成績が上がらないのは講師のせいだと面と向かって言われたとき、Fe型は自分でもそうかもしれないと思ってしまう。ここは教師のバーンアウト構造と共通する課題だ。
もう一つ、Fe型講師は複数の生徒を同時に担当していると、一人ひとりの感情を受け取りすぎて疲弊する。受験直前の生徒を5人同時に見ていると、5人分の不安を背負っている状態になる。これは感情労働の過負荷そのものだ。
Te型は体系で理解させる講師
Te(外向的思考)型──ENTjやESTjは、教え方が論理的で構造的。曖昧さを嫌うから、まず全体像を提示して、そこから各論に降りていく。
数学でいえば、公式を暗記させるのではなく、なぜその公式が成立するのかを理屈から説明する。二次方程式の解の公式なら、平方完成からの導出過程をちゃんと見せて、だからこういう形になるよねと理解させる。面白おかしくはないけれど、理解の深度が違う。成績上位層を伸ばすのが得意で、受験対策の進学塾との相性が抜群にいい。
ただし、基礎が抜けている生徒への対応は苦手な場合がある。何回説明してもわからない生徒に対してイラッとしてしまうことがあるのは、Teが効率を重視する機能だからだ。同じことを3回説明する時間があったら、次の単元に進みたいと体が訴えている。
Te型講師がよくハマる罠は、頭のいい生徒だけに注力してしまうことだ。モチベーションの高い生徒とは相性が良いから授業も楽しいし成果も出る。一方で、やる気のない生徒を前にすると、なぜ勉強しないのかという苛立ちが顔に出てしまう。この温度差に気づけるかどうかがTe型講師の分岐点だと思う。
Ne型は好奇心に火をつける講師
Ne(外向的直観)型──ENFpやENTpは、脱線の天才だ。授業中に関連する雑学やエピソードをどんどん入れてくるから、生徒は飽きない。
世界史の授業で教科書通りに教えるのではなく、この戦争って実はInstagramのバズりみたいな構造でね、と現代の文脈に翻訳してみせる。化学の周期表をポケモンの属性で例える。数学の関数をYouTubeのアルゴリズムに例える。こういう予測不能な展開がNe型の武器で、勉強嫌いな生徒の興味を引き出す力は全タイプ中トップだと思う。
ある塾の教室長が話してくれた。Ne型の講師が〜だけじゃなくて〜もできそうじゃんと生徒の興味を広げて、実際に勉強が楽しくなったと言う生徒がいた。でもテストの点数は上がらなかった。保護者からは講師を変えてくれと言われた──と。Ne型の強みである知的好奇心の刺激と、保護者が求める成績向上のギャップ。これはNe型講師が最も苦しむジレンマだ。
個別と集団で求められる機能が違う
塾講師の適性を考えるときに見落としがちなのが、個別指導と集団指導で求められる認知機能がまるで違うという点だ。
個別指導では、生徒一人ひとりの理解度に合わせながら教えるFi-Si型の丁寧さが活きる。生徒の表情を読み取り、理解できていない瞬間を見逃さない。これは集団指導では難しい。
集団指導では、場をコントロールするFeやSeの力が重要になる。30人の生徒の注意を同時に引きつけ続けるのは、Ti型には消耗が大きい。でもFe型には自然にできる。集団の空気を作ること自体がエネルギー源だから。
自分が個別向きなのか集団向きなのか、認知機能で判断してから塾を選ぶだけで、ストレスの大半は消える。
問題は、体系的なカリキュラムを最後まで消化する忍耐力がやや弱いこと。面白い方向に授業が流れすぎて、試験範囲が終わらないというリスクは常にある。Ne型の講師には、タイムキーパー的な存在が別に必要だ。教室長がしっかり進捗管理してくれる塾との相性が良い。
Si型は反復で定着させる講師
Si(内向的感覚)型──ISFjやISTjは、地味だが確実な指導ができる。
前回やった内容を覚えていて、今回との接続を丁寧に作る。小テストの結果をきちんと記録して、弱い単元を何度も繰り返す。この地道な積み上げが、特に中学生の定期テスト対策で効果を発揮する。Si型講師のノートは生徒ごとのカルテのように細かくて、半年前にどこでつまずいたかまで記録されている。
派手さはない。授業後に生徒から面白かったと言われるタイプではない。でも半年、1年と続けたとき、生徒の成績が着実に上がっている。保護者からの信頼もSi型が一番厚い傾向がある。安定した指導力と、前回からの変化を細かくフィードバックしてくれるSi型講師は、保護者にとって安心材料そのものだ。
Si型の弱点は、イレギュラーへの対応だ。急に教科を変えてくれと言われたり、新しい指導法を導入されたりすると、ストレスを感じやすい。自分のペースとルーティンが守られる環境であれば、Si型は長期的に最も安定した成績向上を叩き出せる。
燃え尽きない講師キャリアの選び方
指導形態と認知機能を合わせる
集団授業に向いているのはFe型とNe型。一対一の個別指導に向いているのはTe型とSi型。この原則を知っているだけで、配属のミスマッチがかなり防げる。
Fe型が個別指導だと、場の空気を作る対象が1人しかいないから物足りなくなる。Fe型の共感力は集団の中でこそ輝く。逆にSi型が30人の集団授業を持たされると、生徒ごとの進捗管理ができないストレスが溜まる。一人ひとりの弱点を丁寧に潰していくSi型の強みが、集団授業では活かしきれない。
教科選びにも性格が出る
意外と見落とされがちだけど、教科の選び方にも認知機能の相性がある。
Ti型は数学や物理との相性がいい。論理構造を分解して教えるのが得意だから。Fe-Ne型は国語や英語が合う。文脈を読み取り、行間の意味を生徒と一緒に探索する授業スタイルが活きる。
Te型は社会科や理科の体系的な説明に強い。膨大な情報を構造化して提示する能力がそのまま授業力になる。Si型はどの教科でも対応できるけれど、暗記科目の反復サポートで特に力を発揮する。
自分の思考のクセを把握してから教科と指導形態を選ぶと、講師としての寿命がかなり延びる。
編集部の見解を書いておく。塾講師の燃え尽きの最大の原因は、給与の低さでも労働時間の長さでもなく、自分の教え方が通じない生徒を担当し続けることだと思う。Fe型が全く反応のない生徒を前にする苦痛、Te型が何度説明しても理解しない生徒への苔立ち、Ne型が同じカリキュラムを何周も繰り返す退屈さ──これらは全部、認知機能の不一致が生んでいるストレスだ。
塾の運営側がこの認知機能の相性を意識して担当割り当てをすれば、講師の満足度も生徒の成績も同時に上がる。でもそれをやっている塾はほとんどない。だから講師側が自分で自分の適性を理解して、合う環境を選ぶしかないのが現状だ。
もうひとつ。塾講師は教育职でありながら、同時にサービス業でもある。生徒の成績を上げることと、生徒と保護者の満足度を上げることは、必ずしもイコールではない。Fe型講師は満足度が高いのに成績が上がりきらないことがあるし、Te型講師は成績は上げるのに評判が悪いことがある。Te型にとって放課後の保護者対応が最大のストレス源になることがある。成績を上げても保護者から子どもが怖がっていると言われる──これはTe型講師のあるあるだ。成果を出しているのに評価されないフラストレーションが、Te型の燃え尽きを加速させる。
逆に、Te型講師の強みが活きる場面もある。保護者が子どもの成績を心配しているとき、具体的な数値と改善計画を示せるのはTe型の得意技だ。今月はここが弱いので、来月はこの問題集をやります、そうすればテストでこのくらいは取れます──こういうロジカルな対応ができる保護者は安心する。Fe型が気持ちで安心させるのとは、また別の種類の信頼だ。このギャップを自覦できているかどうかが、長く続けられる塾講師とそうでない塾講師の分かれ道だと思う。
※本記事は自己分析のフレームワークであり、医療的アドバイスではありません。
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この記事を書いた人
塚田 崇博
Aqsh株式会社 代表取締役
人材業界23年、累計1万人超の面談経験を持つ。ソシオニクス・エニアグラム・ソーシャルスタイル等の性格類型学に精通し、採用・育成・定着を一気通貫で支援。
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