
介護士を辞めたい本音の構造──性格が合わない現場で何が壊れるのか
介護士を辞めたい理由のほとんどは、根性や覚悟の問題ではなく、あなたの性格OSと現場のOSが噛み合っていないことに起因している。
もう続けられないが甘えなのか
朝5時半に起きて、利用者さんの排泄介助をして、認知症の方に30分おきに同じ説明をして、ナースコールが鳴り止まない夜勤を終えて帰宅する。シャワーを浴びながら涙が出た、という人がいる。
公益財団法人介護労働安定センターの2024年度調査によると、介護職の離職理由の第1位は職場の人間関係で、全体の27.5%を占めている。給与でも身体的負担でもなく、人との関わり方が最大のストレス源になっているということだ。
ちなみに最新の厚労省データでは、介護職全体の離職率は12.4%で過去最低を更新している。全産業平均の14.2%より低い。数字だけ見れば改善傾向にあるように見える。でも同時に、65.2%の介護事業所が人材不足を訴えているという矛盾したデータもある。辞める人は減ったが、新しく入る人がもっと減った。残っている人の負荷はむしろ上がっている可能性がある。
この数字だけ見ても、あまりピンとこないかもしれない。同じ職場で同じ仕事をしているのに、平気で10年続けられる人と、半年で心身がぼろぼろになる人がいる。あの人は平気そうなのに、なんで自分だけこんなにきついんだろう。その差は能力でも忍耐力でもない。
答えは、性格タイプごとに壊れるポイントが全然違う、ということだ。
介護の現場は密度の高い感情労働の連続だから、認知機能の使い方によって消耗速度がまるで違う。同じ笑顔で同じケアをしていても、内側で起きている情報処理はタイプごとに別の仕事をしているようなものだ。
ある介護福祉士の女性がこう話してくれた。私のチームには、利用者さんとの会話を心から楽しんでいる人と、業務として正確にこなしている人がいる。どちらも仕事はできるけど、疲れ方が全然違う。前者は感情の電池が切れて辞めたくなるし、後者は仕組みの非合理さに耐えられなくなって辞めたくなる。
この観察は認知機能の違いそのものだ。
認知機能で見る消耗の構造
Fe型が最初に削られる理由
Fe(外向的感情)が主機能や補助機能に来るタイプ──ESFj、ENFj、ISFp、INFpあたりは、介護の現場でものすごく評価される。利用者さんの表情をよく見ているし、家族対応も丁寧だし、チームの空気を整えるのもうまい。
だからこそ壊れる。
弊社の診断データによると、Fe型の人は介護職への適性スコア自体は高い傾向がある。ただし離職意向も同時に高く、特に入職2年目以降の共感疲労スコアが跳ね上がる。つまり向いているからこそ、自分を削りすぎるのだ。
認知症の利用者さんから怒鳴られても笑顔で対応できてしまう。夜勤明けの引き継ぎで後輩が泣いていたら自分の睡眠を削って話を聞いてしまう。家族からの理不尽なクレームにも、相手の気持ちがわかるから反論できない。それどころか、クレームを受けた直後に自分の対応のどこが悪かったんだろうと反芻して、さらに自分を追い込んでいく。
Feは場の感情を自分ごとのように処理する機能だから、職場にいるだけで他人の怒り、悲しみ、不満が全部自分の中に入ってくる。これは感情のフィルターが壊れている状態に近い。
ある介護福祉士の女性が話してくれたことがある。担当していた利用者さんが亡くなった翌日、別の利用者さんの食事介助中に突然涙が止まらなくなった。周りには何でもないフリをしたけれど、それ以来、夜勤のたびに動悸がするようになったという。
知恵袋には、利用者さんに暴言を吐かれても全然平気なフリをしている自分が怖い、感情を殺すのが上手になりすぎて、プライベートでも何も感じなくなったという投稿がある。これはFe型が感情処理の過負荷で自己防衛モードに入った状態だ。
Fe型の場合、壊れるサインは涙ではなく無感情になることだったりする。泣けるうちはまだ大丈夫で、何も感じなくなったときが本当の限界だ。
Ti型が窒息する理由
Ti(内向的思考)が強いタイプ──ISTp、INTp、ESTj周辺は、逆のパターンで消耗する。
介護現場の非効率さに耐えられなくなるのだ。
記録の書式がバラバラ。申し送りの内容が毎回曖昧で、何を引き継いだのか正確にわからない。ケアプランと実際のオペレーションが乖離している。業務改善を提案しようと手順書を作ったら、そんなことやらなくていいから早く現場に入ってと言われる。
Ti型にとって、論理的な整合性のない環境で働き続けることは、慢性的な認知不協和を引き起こす。本人は人間関係のストレスと表現するかもしれないが、根っこにあるのは仕組みの不合理さへの苛立ちだったりする。
知恵袋でこんな投稿を見かけた。介護の仕事自体は嫌いじゃないけれど、やり方を改善しようと提案すると煙たがられる、だったら黙って従うしかないけどそれがしんどい──これはまさにTi型の典型的な消耗パターンだ。
Ti型のもう一つの特徴は、感情的な対応を求められる場面での消耗だ。利用者さんがつらそうにしているとき、Ti型は原因を特定して合理的に対処したいと考える。でも現場で求められるのは、まず感情に寄り添うことだ。この順番の違いが、毎日少しずつTi型のエネルギーを奪っていく。
弊社のデータでも、Ti型は入職1年以内の技術的なスキル習得は速いが、2年目以降に突然モチベーションが急落するパターンが見られる。仕事を覚え切った後に残るのが、改善できない非効率さだけだからだ。
Se型が飽きる構造
Se(外向的感覚)が強いタイプ──ESTp、ESFpあたりは、介護の日常的なルーティンに刺激が足りなくなる。
入職直後は新鮮だった仕事が、半年もすると同じことの繰り返しに見えてくる。身体介護の技術的な部分は早めにマスターしてしまうし、レクリエーションの企画も何周かすればネタが尽きる。比較的自由度が高い施設でも、基本的な業務フローは毎日同じだ。
Se型は今この瞬間の体験に意味を見出すタイプだから、変化の少ない環境では活力そのものが枯れていく。本人もなぜこんなにやる気が出ないのかわからず、自分は介護に向いていないんだと結論づけてしまう。
でも実際には、向き不向きの問題ではなく、刺激の供給源が不足しているだけだったりする。
Se型の介護士でうまくいっている人は、意識的にポジションを変えている。訪問介護を半年やったらデイサービスに移る。あるいはイベント企画の担当を兼務するなど、同じ介護でもバリエーションを作ることで刺激を維持している。
Ni型が見えない天井にぶつかる
Ni(内向的直観)が強いタイプ──INFjやINTjは、介護の現場で別の種類の壁にぶつかる。
Ni型は長期ビジョンを持つ人間だ。3年後、5年後の自分がどうなっているかを描きながら働きたい。でも介護の現場におけるキャリアパスは、正直なところ描きにくい。介護福祉士の資格を取っても劇的に給与が上がるわけではないし、ケアマネジャーに進む道はあるけれど、試験の合格率は低いし、合格したとしても現場との距離が開く。
Ni型は将来像が描けないと現在の努力に意味を見出しにくくなる。毎日の業務を黙々とこなすことは得意ではないのだ。人手不足で目の前の業務に忙殺されていると、長期的な展望を考える余裕がなくなって、ある日突然、このまま5年後も同じことをしているのかと絶望する。
弊社の診断でNi型と判定された元介護士に聞いたところ、介護の仕事は嫌いじゃなかったけれど、このまま続けた先の景色が見えなくなった瞬間に辞めることを決めたと話していた。Fe型のように感情で壊れるのではなく、Ni型は意味の枯渇で離脱する。
壊れる前にできること
自分の消耗パターンを知る
まず最初にやるべきは、自分がどのパターンで消耗しているのか特定することだ。
Fe型なら、感情の境界線が溶けていないか。帰宅後も利用者さんのことを考え続けていないか。他人の感情を自分の感情と混同していないか。休みの日に仕事のことが頭から離れないのは、Feの過負荷サインだ。
Ti型なら、仕組みへの不満を人間関係の問題とすり替えていないか。あの先輩が嫌いと思っていることの本当の原因が、先輩のやり方が非合理だからだった、というケースは多い。
Se型なら、ルーティンの退屈さを職業適性の問題と誤認していないか。仕事内容を変えるだけで活力が戻った事例は山ほどある。
消耗パターンがわかるだけで、辞めたいの正体がかなりクリアになる。辞めるべきなのか、配置を変えるべきなのか、休むべきなのかの判断が変わってくるからだ。
環境の方を動かす
性格を変えることはほぼ不可能だけれど、環境は動かせる場合がある。
Fe型であれば、夜勤の頻度を減らす交渉や、感情労働の負荷が比較的低いデイサービスへの異動を検討する価値はある。Fe型にとって在宅介護はクライアントと一対一の関係になりやすく、感情の逃げ場がないから、チーム介護の方が適している場合も多い。
Ti型なら、記録システムの改善プロジェクトを自分から提案するのも一つの手だ。改善提案が通らない職場なら、それ自体がその職場の限界を示している。IT化が進んでいる大手法人や、業務改善に積極的な新興の介護事業所に転職する選択肢もある。
Se型の場合、訪問介護やデイサービス、リハビリ特化型施設、救急対応系のポジションなど、日々の変化が大きい介護の形態を探してみるのがいい。同じ介護でも、場所と役割を変えるだけで刺激量はまるで違う。
辞めていい基準
24年間人事に関わってきた編集部の見解として、こう思う。
動悸がする、眠れない、出勤前に吐き気がある──これはもう性格の問題ではなく、心身が限界のサインを出している。このレベルに達しているなら、辞める辞めないの前に、まずは医療機関に相談してほしい。
逆に、まだ体力的には大丈夫だけど何となくモチベーションが上がらないという段階であれば、まず自分の認知機能パターンを正確に把握してから動いた方がいい。性格と仕事の構造的ミスマッチを理解した上で環境を変えても改善しないなら、それは合わない職場だったということだ。
介護の仕事そのものが合わないのか、その職場が合わないのかは、切り分けて考えた方がいい。この切り分けをしないまま辞めると、次の職場でも同じ問題にぶつかることがある。逆に、認知機能のパターンを理解した上で職場環境を選び直せば、介護の仕事をまったく違う気持ちで続けられるようになったケースを何件も見てきた。
正直に言えば、介護業界は恒常的な人手不足で、働く側が選べる立場にある。離職率が過去最低でも採用率も過去最低なのだから、需給バランスは働く側に傾いている。合わない環境を我慢し続ける必要はない。ただし、どこへ行っても同じだからと感じるのであれば、それは環境ではなく自分の消耗パターンの特定が先だ。
介護の現場には、あなたの認知機能が活きる場所が必ずある。ただしそれは今いる場所とは限らない。
自分の思考のクセや感情の処理パターンを特定しておくこと。それが、次の一歩を間違えないための最低条件だと思っている。
※本記事は自己分析のフレームワークであり、医療的アドバイスではありません。強い抑うつ、不眠、希死念慮等がある場合は医療機関や公的相談窓口への相談を優先してください。
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この記事を書いた人
塚田 崇博
Aqsh株式会社 代表取締役
人材業界23年、累計1万人超の面談経験を持つ。ソシオニクス・エニアグラム・ソーシャルスタイル等の性格類型学に精通し、採用・育成・定着を一気通貫で支援。
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