
営業成績は性格で決まるのか──認知機能で読むトップセールスの4パターン
営業成績は性格で決まるのか。結論から言えば、半分は決まる。ただし、外向的な人が有利という単純な話ではない。
外向的じゃなくても売れる人がいる
営業に向いている性格はコミュニケーション力が高い人。明るくて社交的な人。ガッツがある人。──こういう説明を聞くたびに、じゃあ内向的な人は全員不利なのかと思ってしまう。この手の適性論は解像度が低すぎる。
でも現実には、静かな営業マンがチーム内トップの成績をたたき出していたりする。逆に、飲み会ではいつも中心にいるムードメーカーが、営業成績は中の下だったりする。忘年会のスター選手が必ずしも数字のスター選手ではないことは、営業を3年もやれば全員気づく。
アダム・グラント教授(ペンシルバニア大学ウォートン校)の研究では、最も営業成績が高いのは両向型(ambivert)──外向と内向の中間に位置する人だという結果が出ている。極端に外向的な人は、話しすぎて顧客の話を聞けないことがあるし、極端に内向的な人は、関係構築に時間がかかりすぎる。
ビッグファイブ性格特性の研究でも、外向性と営業成績の相関はそこまで高くないという結果が出ている。むしろ誠実性や情動安定性の方が成績との関連が強い。
つまり性格と営業成績の関係は、外向・内向の軸ではなく、認知機能の使い方の軸で見た方が正確だということだ。
4パターンのトップセールス
Se-Fe型のハンター営業
Se(外向的感覚)とFe(外向的感情)──ESFpやESFjは、新規開拓の飛び込み営業やテレアポで最強のパフォーマンスを発揮する。
Seは今この瞬間の空気を読む機能で、相手の表情や声のトーンの変化を瞬時にキャッチする。電話口で相手がちょっとだけ興味を示した瞬間を逃さない。Feは相手の感情に合わせた対応ができるから、初対面の相手の警戒心を溶かすのがうまい。いきなり売り込むのではなく、相手が受け入れやすい空気を先に作ってしまう。
このタイプは断られてもあまりダメージを受けない。Seが次の刺激を求めて前に進むし、Feは場が変われば気持ちも切り替わる。打たれ強いように見えるのは、打たれていないのではなく、回復が速いだけだったりする。10件連続で断られても、11件目の電話が鳴った瞬間にリセットされる。このレジリエンスの速度がSe-Fe型の最大の武器だ。
弊社の診断でSe-Fe型の営業職にヒアリングしたところ、テレアポが苦じゃないどころか楽しいと答える人が多かった。知らない人と話すこと自体がエネルギー源になっているのだ。
Se-Fe型のリスクは、関係の浅いまま次に行ってしまうことだ。新規は取れるけどリピートが弱い、という営業マンにSe-Fe型が多いのはこのためだ。ハンター型としては最強だけど、ファーマー型の動きは別の認知機能が必要になる。Se-Fe型がリピート率を上げるには、成約後のフォローをカレンダーにルーティン化するといい。戟りの興奮が逞めたら、意識的にフォローの型を作ることでリピートの弱さを補える。
Ni-Te型の戦略営業
Ni(内向的直観)とTe(外向的思考)──ENTjやINTjは、法人営業の大型案件で力を発揮する。
Niは相手が本当に必要としているものを直観的に見抜く。まだ言語化されていない課題を先回りして提案できる。クライアントの経営計画書を読み込んで、そこから3年後の課題を予測して、今の提案書に落とし込む。Teはそれを論理的な提案書にまとめ、意思決定者を説得する力がある。
このタイプの営業スタイルは、量ではなく質で勝負する。100件のテレアポより、1件の戦略的な提案に全力を注ぐ。だから新規開拓の飛び込みをやらせると成績が伸びない。でもアカウント営業やコンサルティング営業では無双する。
ある人材会社のトップセールスの話を聞いたことがある。月にアポは5件しか取らない。でもそのうち4件は成約する。事前のリサーチで相手の意思決定構造を完全に把握してから提案するから、打率が異常に高い。これがNi-Te型の勝ちパターンだ。上司からアポ数を増やせと言われて苦しむNi-Te型は多いけれど、彼らの強みは量ではなく精度にある。
Ni-Te型の弱点は、雑談や世間話が苦手なこと。ゴルフや飲み会で関係を深める日本的な営業スタイルとは合わない場合がある。弊社でもNi-Te型の営業職から、接待がしんどいという声はよく聞く。
Ni-Te型が雑談を乗り切るコツはある。相手の業界の最新ニュースを事前にインプットしておくことだ。Niが先読みした話題をTeが構造化して出す──これなら雑談ではなく情報提供として成立するから、Ni-Te型にも苦ではない。
Si-Fe型の深耕営業
Si(内向的感覚)とFe──ISFjやESFjは、既存顧客のフォロー営業やルート営業で最も安定した成績を出す。
Siは過去の取引履歴や顧客の嗜好を正確に記憶している。前回の打ち合わせで言っていたお嬢さんの受験、その後どうですか?──こういう一言が、相手の信頼を決定的にする。Feは相手の気持ちに寄り添ったフォローができるから、長期的な関係構築に強い。
新規案件をガンガン取るタイプではないけれど、一度担当した顧客からの契約更新率やアップセル率が高い。地味だけど安定した売上を積み上げるのがSi-Fe型の強みだ。こういうタイプの営業マンは、会社を辞めたときに顧客が一緒についてくることがある。人ではなく会社と取引しているはずなのに、Si-Fe型の営業と話したいから契約していたという顧客が実は多い。
このタイプが新規開拓だけの営業チームに配属されると、持ち味が完全に死ぬ。配置のミスが成績に直結する典型パターンだ。
Si-Fe型の最大の強みは、顕客の人生のイベントに対応できることだ。お子さんの入学、住宅購入、定年──そのたびにニーズが変わることをSiが記憶していて、そのタイミングで提案を入れる。これを意図的にやっているのではなく、自然に覚えているのがSi型の恐ろしさでがある。CRMに情報を入力する前に、頭の中にもう入っている。
Ne-Ti型のソリューション営業
Ne(外向的直観)とTi(内向的思考)──ENTpやINTpは、複雑な課題解決型の営業で輝く。
Neは顧客の課題を聞きながら、その場で複数の解決策を思いつく。Tiがそれを論理的にフィルタリングして、最も筋のいい提案を瞬時に組み立てる。従来のパッケージ商品では解決できない課題に対して、カスタマイズされた提案をその場で出せるのがこのタイプの武器だ。
ITソリューション営業、コンサルティング営業、広告代理店の企画営業──こういう既成品を売るのではなく解決策を設計して売る営業でNe-Ti型は活きる。
ただNe-Ti型は、ルーティンの既存顧客フォローが苦手だ。同じ相手に同じ話をするのが退屈でたまらない。新しい課題がない顧客への定期訪問は意味がないと感じてしまい、フォローが雑になりがちだ。既存顧客からのクレームでようやく電話するという最悪のパターンに陥るNe-Ti型営業は少なくない。
Ne-Ti型がフォローを改善するコツは、既存顧客への訪問を情報収集の場として捉え直すことだ。お客さんの業界の最新動向を聞く、競合の情報を拾う、新しい課題を探る──Neが楽しめる入力があれば、定期訪問も苦ではなくなる。営業をフィールドワークだと思えば、Ne-Ti型は意外とハマる。
自分に合った売り方を選ぶ
営業の型と認知機能を合わせる
営業が向いていないと感じているあなたへ。もしかしたら営業が向いていないのではなく、今やっている営業の型が向いていないだけかもしれない。
Se-Fe型なのに企画提案書中心の戦略営業をやらされていたり、Ni-Te型なのにテレアポ1日100件を要求されていたり、Si-Fe型なのに新規開拓だけの部署にいたり──営業の型と認知機能のミスマッチが成績を潰しているケースは想像以上に多い。
ある企業で営業部の配置を認知機能ベースで見直したことがある。テレアポ部隊にSe-Fe型を集め、アカウント営業にNi-Te型とSi-Fe型を配置し、ソリューション提案チームにNe-Ti型を入れた。結果、半年で営業部全体の売上が23%上がった。やったことは人を動かしただけだ。新しいスキルは教えていない。研修もしていない。配置を変えただけで、同じ人間の出力が変わった。
内向型の営業は本当に不利か
内向型営業への偏見は本当に根深い。営業会議で声が大きい人が評価され、静かに成果を出している人は見落とされる。
でも実はINTj型やINFj型の営業が法人営業で長期的に安定した成績を出すケースは多い。彼らは初動こそ遅いけれど、一度信頼関係を構築すると相手が離れない。提案の深度が違うから、競合にひっくり返されにくい。これはNiの長期的視野とTe/Feの対人能力が組み合わさった結果だ。
ある保険の営業マンがこう話していた。飲み会は行かない、ゴルフもやらない、でもお客さんのライフプランを丁寧に聞いて、そこから逆算した提案をする。それだけで紹介が途切れない──と。この人の成績はチーム内トップだったらしい。外向的な同僚が接待を繰り返している間に、内向型は提案の質で勝っていた。
転職で営業の型を変える
今の営業スタイルが合わないと気づいたとき、社内異動で解決できるなら最善だけれど、営業部が一つしかない会社ではそうもいかない。その場合は転職という選択肢がある。
転職エージェントに相談するとき、営業経験ありますかとは聞かれるけれど、どんなタイプの営業が得意ですかとは聞かれないことが多い。でも本当に重要なのは後者だ。新規開拓型なのかアカウント型なのかソリューション型なのか。自分の認知機能に合った営業の型を明確にしてから転職活動をした方が、ミスマッチが激減する。
Se-Fe型が新規開拓の多い広告代理店の営業に転職したら水を得た魚のように活き始めた話もあれば、Ni-Te型がコンサルファームのアカウント営業に移って初めて営業が楽しいと感じた話もある。営業という大きなカテゴリの中に無数のスタイルがあることを、もっと多くの人が知った方がいい。
営業が向いていないと感じる本当の理由を認知機能から見直してみると、意外と簡単に答えが見つかるかもしれない。
24年間人事をやってきて確信しているのは、営業成績の差の半分は才能でも努力でもなく配置の問題だということだ。売り方を変えれば、同じ人間が別人のように成績を出す。性格を変える必要はない。性格に合った売り場を見つけるための最初のステップが、自分の認知機能パターンの診断だと思っている。
※本記事は自己分析のフレームワークであり、医療的アドバイスではありません。
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この記事を書いた人
塚田 崇博
Aqsh株式会社 代表取締役
人材業界23年、累計1万人超の面談経験を持つ。ソシオニクス・エニアグラム・ソーシャルスタイル等の性格類型学に精通し、採用・育成・定着を一気通貫で支援。
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