
薬剤師に向いてる性格は几帳面だけじゃない──認知機能で読む適性の全体像
薬剤師に向いている性格は几帳面な人──これは嘘ではないけれど、あまりに雑な答えだ。几帳面な人が全員薬剤師で幸せになれるわけがない。
几帳面だけでは説明がつかない
ISTj型は薬剤師に最も多い性格タイプだと言われている。確かに、正確な計量、厳密な手順の遵守、法的なルールへの忠実さ──ISTjの認知機能スタック(Si-Te-Fi-Ne)はこれらの要件と相性がいい。
でも薬剤師の仕事は調剤だけではない。
患者さんへの服薬指導では対話力がいる。医師への疑義照会では論理的な主張力がいる。ドラッグストアではカウンセリング販売がいる。製薬企業のMRなら営業力がいる。在宅医療に関わる薬剤師なら、患者さんの生活環境を踏まえた柔軟な対応力も必要になる。
つまり薬剤師のどの職域に行くかによって、求められる認知機能はまるで違う。几帳面さは調剤の基本スキルとしては必要だけれど、それだけでキャリア全体の適性を語ることはできない。
厚生労働省の薬剤師需給推計でも、今後は対人業務の比重が増すと予測されている。調剤業務のAI化が進む中で、薬剤師に残るのは人対人のコミュニケーション部分だ。つまり、今後はますます認知機能の種類によって活きる職域が分かれてくる。
ある薬剤師のブログにこんな投稿があった。調剤薬局3年、ドラッグストア2年、病院1年と転々としたけれど、どこも何かが合わない気がしていた。性格診断を受けてみたら、自分がTi-Ne型だとわかって、今は製薬企業のメディカルライターとして落ち着いている──と。居場所を見つけるまでに6年かかっている。これは最初から認知機能を把握していれば避けられた回り道だったかもしれない。
職域別の認知機能適性
調剤薬局はSi-Te型の独壇場
Si(内向的感覚)とTe(外向的思考)が上位のタイプ──ISTjやESTjは、調剤薬局の仕事に過不足なくフィットする。
Siは過去の処方パターンや副作用情報を正確に記憶している。おととい来た患者さんの薬歴を見なくても覚えていたりする。この薬とこの薬の飲み合わせで前に問題があった、という経験則が蓄積されていて、それが安全の生命線になっている。Teは手順を効率的にこなす能力だから、忙しい門前薬局でもテンポよく処方箋をさばける。
弊社の診断データでも、Si-Te型の薬剤師は調剤業務の満足度が全タイプ中で最も高かった。ただし同じ作業の繰り返しに飽きないかと聞くと、飽きるという感覚がわからないと答えた人が多い。Siの安定志向が反復業務を苦にしないのだ。むしろ同じ手順を毎回正確に再現すること自体に充実感を覚えるという。
Si-Te型が苦手なのは、急な処方変更や想定外のトラブルへの対応だ。普段と違う状況に置かれるとパフォーマンスが落ちることがある。ただしこの弱点は経験年数で補えるから、長く続けるほど穴がなくなっていく。
ある調剤薬局の管理薬剤師が話してくれた。新人の頃は処方ミスが怖くて、何度も確認してから投薬していた。でもその慷重さが10年経った今、あの薬剤師がいれば大丈夫という信頼につながっている──と。Si-Te型の慈重さは、時間をかけて信頼に変換される。
病院薬剤師はFe-Si型が輝く
Fe(外向的感情)とSi──ISFjやESFjは、病院薬剤師として特に力を発揮する。
病院では患者さんとの直接的なコミュニケーションが多い。入院中の患者さんのベッドサイドで服薬指導を行い、不安を抱える患者さんに丁寧に説明する。Feの共感力が、患者さんの安心感を生む。この薬を飲むのが怖いという患者さんに対して、Fe型は言葉だけでなく表情や声のトーンで安心を伝えることができる。これは医療コミュニケーションの核心部分だ。
同時にSiが処方歴を正確に把握しているから、医師が出した処方に違和感があれば即座に疑義照会できる。ただ、Fe型は医師に対して強く意見を言うのが苦手な場合がある。特に年配の医師や権威的な態度の医師に対しては、正しいことがわかっていても言い出せない。ここは意識的な訓練が必要だ。
ある病院薬剤師がこう言っていた。疑義照会で医師に電話するたびに胃が痛かったけれど、患者さんの顔を思い浮かべるとできるようになった──と。Fe型は誰のためかが明確なとき、普段は出せない強さを発揮することがある。
ちなみに、Fe-Si型の病院薬剤師が疑義照会のスキルを上げる最短ルートは、処方の根拠をデータで準備してから電話することだ。Siが正確にデータを把握しているから、この患者さんは過去にこの薬で副作用が出ていますと言えれば、医師も耳を傾ける。感情ではなく事実で話す技術を身につければ、Fe型の弱点である対権威コミュニケーションはかなり改善される。
看護師のチームとの連携でもFe型は評価が高い。多職種チームの中で薬剤師は孤立しがちだけど、Fe型はチームの中に自然に溶け込める。NST(栄養サポートチーム)や感染制御チームなど、多職種連携が求められる場面でFe型の調整力はかなりの武器になる。
もうひとつ、最近伸びている領域として在宅医療薬剤師がある。患者さんの自宅を訪問して服薬管理を行うこの役割は、Fe-Se型にかなり合う。現場で患者さんの生活環境を目で見て、その場で対応方針を決める──Se的な現場対応力とFe的な対人スキルの両方が求められる。調剤薬局で向こう側の患者さんとだけ向き合うのと違って、生活の場に入り込むから、より深い信頼関係を築ける。これがFe型にとって大きなやりがいになる。
在宅医療の現場では、時に予定外の状況に出くわすこともある。患者さんの体調が急変していたり、家族から急な相談を受けたり。Si型にはストレスのかかる場面だけど、Se型にはむしろ刺激になる。この違いも認知機能で説明がつく。
ドラッグストアはFe-Se型の天下
Fe(外向的感情)とSe(外向的感覚)──ESFpやESFjは、ドラッグストアのOTC販売で無双する。
Seは目の前のお客さんの状態を瞬時にキャッチする。顔色が悪い、咳をしている、何を探しているか迷っている──そういう視覚情報をリアルタイムで処理して、適切な声かけをする。Feは相手の気持ちに沿った提案ができるから、お客さんに信頼されやすい。
このタイプは接客が好きで、人と話すことからエネルギーを得るから、対面販売がメインのドラッグストアは性格との相性がいい。ただし調剤併設のドラッグストアで裏方の調剤業務ばかりやらされると、ストレスが溜まる。売場に出たいのに処方箋が積み上がっていくという板挟みは、Fe-Se型にとって地味にきつい。
ある大手ドラッグストアの薬剤師に聞いた話では、OTCカウンセリング販売の成績上位者は不思議とFe-Se型が多いという。商品知識よりも、お客さんの話を聞いて、一緒に考えて、最後に背中を押す──この流れが自然にできるのはFe-Se型の強みだそうだ。
ちなみに、ドラッグストア業界では薬剤師の確保が年々難しくなっている。エリアによっては薬剤師不足で調剤併設店の運営ができないという状況もあるらしい。つまり薬剤師の側が職場を選べる立場にある。自分の認知機能に合わない職場を我慢し続ける必要はないのだ。
製薬企業・研究職はTi-Ne型の避難所
Ti(内向的思考)とNe(外向的直観)──INTpタイプは、調剤や対面の服薬指導よりも、知識を深掘りする方向にキャリアを伸ばした方が幸せになれる可能性が高い。
製薬企業の学術部門、メディカルライター、治験コーディネーター(CRC)、さらには大学院に戻って研究職──Ti-Ne型が活きる薬剤師のキャリアパスは、実は調剤薬局の外にたくさんある。
Tiは論理の整合性に強くこだわるから、論文の読み込みやデータ分析が苦にならない。むしろ楽しい。Neは新しい可能性を探求するから、常に最新の薬学知識をアップデートし続けることが自然にできる。新薬の臨床データを読むのが趣味みたいな人がTi-Ne型には多い。
弊社の診断でTi-Ne型だった薬剤師にヒアリングしたところ、調剤薬局時代は常に窮屈だったが、製薬企業に転職してから初めて薬剤師という資格を活かせていると感じたという声があった。毎日同じ処方箋を見るより、新しい薬の可能性を探る方がTi-Ne型にはフィットする。
Ti-Ne型が調剤薬局を辞めたいと思うとき、その理由は対人ストレスではなく知的刺激の枯渇であることが多い。これは周囲から理解されにくいから、本人も何が不満なのかうまく言語化できずに悶々とするケースが少なくない。
弊社の診断でTi-Ne型だった薬剤師が、転職前にこう話していた。調剤薬局で働いていたとき、患者さんには感謝されるし、給料にも不満はなかった。でも毎日同じことの繰り返しで、脑が餓えている感覚が常にあった。製薬企業の学術部門に移った途端、その飢餓感が消えた──と。
適性を間違えると何年もロスする
職域選びは性格選びでもある
薬剤師の国家試験に受かった時点で、全員が同じスタートラインに立っている。でもそこからどの職域に行くかで、認知機能との相性は天と地ほど変わる。
Si-Te型が製薬企業の営業(MR)に行くと、コミュニケーション量の多さに疲弊する。Fe-Se型が調剤薬局の裏方に回されると、刺激不足で飽きてしまう。Ti-Ne型がドラッグストアの店頭に立つと、知的好奇心の行き場がなくなる。
先に挙げた6年間転々とした薬剤師のように、居場所が見つかるまでに時間を費やすのはもったいない。
自分の認知機能を先に特定しておくことで、ファーストキャリアの選択精度が上がる。薬剤師免許はどの職域でも使える万能チケットだけど、どの席に座るかは自分の認知パターンで決めた方がいい。
編集部の見解を追加する。AI調剤が本格化するこれからの数年で、薬剤師の仕事は大きく変わる。調剤の自動化が進めば、Si-Te型の武器である正確な計量と手順の微守の価値は相対的に下がる。代わりに重要になるのは、対人業務だ。服薬指導、患者とのコミュニケーション、多職種連携──すべてFe型がstrengthを発揮する領域だ。
つまり、AIの浸透によって薬剤師業界内での認知機能的な有利不利が変わる可能性がある。今までSi-Te型が王道だった調剤薬局で、Fe型やNe型の薬剤師が活躍するシーンが増えるかもしれない。
もうひとつ。薬剤師の適性を考えるとき、性格だけでなく生活スタイルとの相性も重要だ。調剤薬局は勤務時間が比較的規則的だが、病院薬剤師は当直がある。ドラッグストアは土日勤務が基本だ。製薬企業は出張が多い。性格だけで聯を決めるのではなく、ライフスタイル全体との整合性も考えた方が、後悔のないキャリア選択ができる。そのための最初の一歩が、自分の認知機能を知ることだと思っている。
※本記事は自己分析のフレームワークであり、医療的アドバイスではありません。
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この記事を書いた人
塚田 崇博
Aqsh株式会社 代表取締役
人材業界23年、累計1万人超の面談経験を持つ。ソシオニクス・エニアグラム・ソーシャルスタイル等の性格類型学に精通し、採用・育成・定着を一気通貫で支援。
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