
最強のチームビルディング術──性格タイプでつくる心理的安全性
チームがいかに優秀な人材を集めても機能しないのは、個人の能力不足ではなく認知OS(性格タイプ)の偏りによる視界の死角の完全な重複が原因である。補完関係の戦略的設計がチームビルディングの核心だ。
各部署からエース級の人間をこれ以上ないほど緻密に選抜して、このメンバーなら絶対に上手くいくはずだと会社も誰もが確信して作ったドリームチームが、なぜかたった3ヶ月後には内部で空中分解してプロジェクトが停止しているのを、この世界で何度見てきたことか。
個々のプレイヤーの能力や実績は申し分ないんです。去年の全社営業成績トップで実行力のあるAと、緻密な戦略立案が得意で数々の修羅場をくぐってきたBを組ませて社運を賭けた新規プロジェクトを立ち上げたのに、なぜか全く進まない。お互いに陰で文句ばかり言っていて、チームの空気が殺伐として最悪の状況なんです──
企業のマネジメント層や経営陣、そして人事担当者から受けるSOSの相談の中でこれ以上に頻繁に起こり、そして最も現場を悩ませているのがこの光景です。24年間のHRと組織コンサルの経験の中で、優秀でIQの高い個人の集合体がチームという形になった途端に激しい機能不全に陥るのを数え切れないほど見てきました。なぜ優秀な人たちを集めれば集めるほど組織は謎の停滞を起こすのか。
それはマネジメントの手法が古いからでも、メンバーのやる気やモチベーションが足りないからでもありません。単にチームを構成する人間の認知OS(性格タイプ)のバランスが、根本的なところで崩壊しているからです。弊社Aqshが実施した組織診断の実効データでも、メンバーのタイプ偏差、つまり特定の思考パターンへの偏り度が異常に高いチームほど、プロジェクトの頓挫率と離職率が約1.8倍も高いという傾向が客観的な数値として明確に出ています。
話が早い快適なチームの脆さ
多くのリーダーが無意識にやってしまう最大の罠でありミスは、自分と同じ考え方をし、同じ速度で物事を処理する人間ばかりを集めてしまうことです。これを私は長年、エコーチェンバー採用と呼んで警鐘を鳴らし続けています。
例えばですが、目標達成への強烈な執着が強く、スピード感と実行力を最優先するTe(外向論理)やSe(外向感覚)が異常に強いメンバーばかりでチームを固めたとしましょう。ソシオニクスでいうENTjやESTpのような、いわゆる戦闘力の高いエースの集まりです。
この手のチームは、立ち上げの瞬間はアドレナリンが出て最高に気持ちがいいはずです。あれを明後日までにリサーチしといてと言えば、了解すぐやりますと即答が返ってくる阿吽の呼吸。余計なプロセスの説明やお気持ち表明をしてブレーキをかける人間が一人もおらず、エクセル上の数字とKPIだけが恐ろしいスピードで高速回転していく。リーダーは自分と同質の人間たちが作り出すこの快適な状況を見て、ついに最高の理想のチームを作ったと確信するでしょう。
しかし、この同質性の異常な高さと居心地の良さこそが、チームが持つ最も脆い急所であり致命的なバグなのです。
3ヶ月後に現場で何が起きるか。誰も気づかないうちに既存顧客の手厚いフォローが完全に抜け落ちて他社に乗り換えられ大クレームに発展したり、黙々と作業をしていたメンバーの一人が誰にも相談できずに静かにバーンアウトして急に出社しなくなったりする。なぜなら彼らの認知OSの中には、細やかなリスクの検知機能(Si)や、メンバーの微細な感情やチーム全体の空気のケア(Fe/Fi)という命綱のような機能が最初からインストールされていないからです。
話が早くて快適であるというのは、要するに単にチーム全体の視界の死角が全く同じ形をしていて、誰も別の方向を見ていないという恐ろしい事実に過ぎません。前だけを見てフルアクセルを踏み続けるチームは、少しでも思わぬ障害物に足を取られた瞬間に、全員で全く同じ方向に派手に横転して即死するのです。
私自身、過去のマネージャー時代に自分と似たようなタイプであるTe優位のゴリゴリ実行型だけでHR系の新規事業チームを組んだ痛い経験があります。最初の3ヶ月は面白いように成果が出まくって社内表彰までされたのですが、半年後にクライアントから御社は対応は異常に速いですが血が通っていなくて冷たいと大量の離反を食らい、売上が半減しました。あの時の心底凍りつくような冷や汗は今でも夢に見ます。同質の心地よさは長期的には確実に最大のリスクなのだと、骨の髄まで染みた経験です。
異物が強いチームを創り出す
では、同質性の罠を避けて本当に強いチームを作るためには、リーダーとしてどうすればいいのか。
本当に強いチーム、予測不能なトラブルに対処できるレジリエンスの高い組織を作るために不可欠なのは、リーダーであるあなたにとって最も話が通じず、行動が遅くてイライラする人間を、あえてチームのコアに配置する度量です。
先ほどの超攻撃型チーム(Te/Se優位)に絶対に必要なのは、どんなに地味で退屈でも日々のタスクを完璧にルーティン化し、絶対にミスを出さないISFjやISTjのような守りの要の人材です。彼らはリーダーの思いつきの新しい提案には必ず難色を示し、リスクを列挙してスピードを落とそうとするため、最初はリーダーを猛烈にいら立たせるかもしれない。しかしその粘り強いブレーキこそが、チームが崖から落ちずに長期的に生き残るための唯一の命綱になります。
上司と部下がなぜか噛み合わないという記事の原因も、そのほとんどがこの認知機能の決定的な相違によるものです。あなたにとって最も不愉快で扱いづらく感じる部下こそが、実は今あなたの組織から抜け落ちている最大の死角を全身で埋めてくれている可能性が高いのです。
あるいは、空想ばかりしていて企画書一つまともに現実的な粒度で書けないINFpのような極端なメンバーがいるとしましょう。数字重視のマネージャーからは真っ先に使えないと評価され、リストラの対象になるタイプです。しかし、誰も思いつかないような突拍子もない遠い未来のアイデア(Ne)や、時代がまだ言語化できていない見えない価値(Ni)を嗅ぎ取る能力は、競合との価格競争で危機に陥ったチームの打開策として、常識を覆すブレイクスルーを生み出します。
ある大手IT企業のプロジェクトマネージャーは、かつての私との面談で当時の奇跡的な逆転劇をこう振り返ってくれました。
一番評価が低くていつも窓の外をぼーっと見ている変人のデザイナーの女の子がいたんです。彼女をチームの生産性を下げるという理由で外そうとしたんですが、なんとなく彼女の視点の異様さが気になって残した。プロジェクトが致命的に暗礁に乗り上げて全員の空気が殺伐としていた夜、彼女がぽつりと、もっとこのボタンの動き、丸くて優しい感じに呼吸させなきゃいけない気がする、数字じゃなくて生き物みたいにと言って。最初は全員ポカンとしたんですが、そこから全く違うUIのアプローチが見えて、結果的にそのアプリが何百万ダウンロードの大ヒットになりました──と。
これこそが、ソシオニクスの双対関係や非対称な関係性を、組織という利益追求の場にあえて応用する最大の意味です。
意見の対立を許容する安全性
近年バズワードのように持て囃されている心理的安全性ですが、これは決してメンバーみんなで仲良く和気あいあいとヌルく仕事をすることではありません。自分とは全く違う認知OSで動いている人間の理解不能な言動を、自己への攻撃や能力不足という無能の評価軸から完全に排除し、システム上の重要なエラー検知リソースとして活用できるドライで成熟した状態のことです。
もし今あなたのチームが上手く回らず、メンバー同士が疑心暗鬼になっているなら。あいつはモチベーションが低い、あいつは空気が読めない、あいつは威圧的だという表面的な行動の道徳的評価から、まずリーダーであるあなたが一歩降りてみてください。
そして、このチームの集団には16種類の心理機能のうち何が過剰に溢れて火を起こしており、何が決定的に欠けていて水漏れを起こしているのかという、冷徹なシステム構築の視点を必ず持ってみてください。
アイデアばかりポンポン出て誰も最後まで実行しないなら、ISTpやESTjのような最後まできっちり完了させるシステム(Si/Te)が決定的に必要です。実行力はあるがチームがギスギスして退職者が出そうなら、ESFjやENFjのような場の感情を手当する潤滑油(Fe)が必要です。全員が石橋を叩きすぎて慎重になり新しいことに全く踏み出せない停滞期なら、ENTpやENFpのような無責任に嵐を呼ぶ可能性探索者(Ne)が必要です。
弊社の追跡データでは、上記のOSによる機能補完を意識的に行ったチーム、組織診断を導入した企業のうち追跡できた32チームの平均では、高い目標のプロジェクト達成率が導入前比で約1.4倍に改善しています。明日劇的に魔法のように変わるのではなく、じわじわと組織の地力が底上げされ、気づけば崩れない強固な城になっているイメージです。
あなたにとって最も理解できず、最も遠くにいて、いつも会議でイライラさせられるその部下こそが、実はあなたの組織が次のステージに行くために絶対に失ってはいけない最後のキーパーツなのかもしれません。
チームビルディングとは同じ色の綺麗なパズルを集める単純な作業ではない。全く形が違って一見すると隣り合わないような歪なピース同士を、どうやって美しくはめ込んで強固なシステムにするかという、極めて構造的でそして人間臭いアートなのです。リーダーシップスタイルを性格タイプ別に把握したい方はこちら、タイプ別の1on1の深いやり方についてはこちらも実践の参考にしてみてください。
部下との噛み合わなさに一人で悩む前に、まずはあなた自身の認知の強烈な癖とチームにぽっかり空いている死角を、客観的な診断ツールで可視化することから始めてみませんか。それが最強のチームを作るための、最も泥臭く最も近道な第一歩です。
※本記事は性格理論を用いた組織フレームワークであり、組織マネジメントの絶対的な正解を保証するものではありません。
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上司や部下、同僚との関係に悩んでいるなら、タイプ別の相性パターンがヒントになるかもしれません。
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この記事を書いた人
塚田 崇博
Aqsh株式会社 代表取締役
人材業界23年、累計1万人超の面談経験を持つ。ソシオニクス・エニアグラム・ソーシャルスタイル等の性格類型学に精通し、採用・育成・定着を一気通貫で支援。
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