
保育士の人間関係ストレスは性格で変わる──壊れ方と逃げ方の構造
保育士の人間関係ストレスは、性格タイプによって壊れるポイントが全然違う。同じ職場で同じ仕事をしていても、何がしんどいかは人によって正反対だったりする。
離職理由の1位が人間関係という異常
東京都福祉保健局の調査によると、保育士のストレス原因で最も多いのは人間関係だ。身体的な疲労でも給与の低さでもなく、人との関わり方が一番きつい。全国保育協議会の調査でも、保育士が仕事を辞めたい理由の上位に常に人間関係が入っている。
保育園という職場は構造的に閉鎖的だ。同じメンバーで毎日顔を合わせ、子どもの前では常に笑顔でいなければならない。裏で陰口が飛び交っていても、表では仲良くやっているフリをする。この二重構造が精神をじわじわと削る。子どもの前では絶対に私情を出してはいけないという暗黙のルールが、感情の出口を塞いでいる。
しかも女性が多い職場特有の派閥問題がある。ベテランと若手の対立、正規と非正規の壁、園長の方針に対する賛否──どこにも属さないで静かに仕事をしたい人にとっては、それ自体がストレス源になる。
ある保育士がnoteにこう書いていた。休憩室に入った瞬間に自分の話をしていたのがわかるあの空気、もう何年経っても慣れない──。この感覚は保育業界のあるあるとして広く共感を集めている。
子どもが好きだから保育士になったのに、大人の人間関係で辞めることになる。この矛盾が保育業界の最大の構造的問題だと思う。
タイプ別の壊れ方
Fe型は空気を読みすぎて消耗する
Fe(外向的感情)型の保育士は、職場で一番頼りにされているケースが多い。対人ストレスでエネルギーを消耗するが、同時に対人関係でエネルギーを得る。問題は、職場の人間関係がエネルギーを消耗するだけで補充されない状態になったときだ。
Fe型保育士に特有の問題がある。笑顔の仮面だ。
子どもの前では笑顔でいなければならない。保護者の前でも笑顔でいなければならない。同僚の前でも笑顔でいなければいけない。Fe型は場の空気を壊さないように常に笑顔を作り続ける。でもその笑顔の下で、感情はどんどん磨り減っていく。
ある保育士がこう言っていた。子どもの前で目一杯笑っていたのに、帰りの電車の中で急に涙が出てきた。なぜ泣いているのか自分でもわからなかった──と。これはFe型の感情枯渇の典型的な初期症状だ。このサインが出たら、環境を変えることを真剣に考えた方がいい。
先輩と後輩の間に立って調整し、保護者からのクレームにも柔軟に対応できる。園のイベント運営でも中心的な役割を担うことが多い。
でもFe型の問題は、場の空気を自動的に読んでしまうことだ。職員室に入った瞬間に、今日は先輩のAさんの機嫌が悪いなと察知して、自分の振る舞いを無意識に調整する。Aさんに話しかけるタイミング、声のトーン、話題の選び方──全部を瞬時に計算している。毎日がそれの連続だから、帰宅したときには何もする気力が残っていない。休みの日も何も楽しめなくなる。
弊社の診断でFe型と判定された保育士にヒアリングしたところ、子どもと過ごす時間は楽しいのに、大人の人間関係だけで辞めたくなるという声がとても多かった。子どもが好きだから続けているけれど、職員間のストレスがそれを帳消しにしてしまう。この天秤がFe型の中で常に揺れている。
ある保育士がSNSで書いていた。派閥のどちらにも愛想よくしていたら、両方から信用されなくなった。八方美人と言われて、それが一番つらかった──これはFe型の典型的な行き止まりパターンだ。Fe型はどちらの味方でもいたいから中立を保とうとするのだけど、派閥が激しい職場では中立こそが最も危険なポジションになる。
Fe型のもう一つのリスクは、保護者への過剰適応だ。お迎えのときに保護者の表情が曇っていると、今日何かあったのかなと気になってしまう。子どもの怪我の報告は特に神経をすり減らす。保護者の不安を受け止めて、安心してもらおうとして、帰宅後も反芻する。この感情処理の連鎖がFe型を消耗させていく。
Ti型は保育観の違いに窒息する
Ti(内向的思考)型の保育士は、自分の中に明確な保育方針がある。子どもにはこう接するべきだ、こういう環境を整えるべきだ、という論理的な信念を持っている。発達心理学の本を自主的に読んで、科学的根拠に基づいた保育を実践したいと思っている人が多い。
問題は、その信念が職場の方針や他の保育士のやり方と噛み合わないときに起きる。
Ti型は論理的に正しいと思うことを曲げるのが苦痛だ。でも声に出して主張すれば面倒な人扱いされる。黙って従えば自分の保育観を殺すことになる。このジレンマが慢性的なストレスになる。
知恵袋にこんな投稿があった。3歳児のケンカの対処で先輩と意見が割れたとき、理由を説明しようとしたらうちのやり方はこうだからとシャットアウトされた。それ以来、何も提案できなくなった──まさにTi型が窒息する瞬間だ。
Ti型保育士の離職パターンは、ある日突然辞めるというケースが多い。表面上は何事もなく仕事をしていたのに、突然退職届を出す。周りは驚くけれど、Ti型の中では何ヶ月も前から論理的に結論が出ていた。感情の蓄積で辞めるのではなく、論理的な判断として辞める。だから引き止めても心が変わることはほとんどない。
Fi型は派閥に巻き込まれて壊れる
Fi(内向的感情)型──INFpやISFpは、自分の中の価値観を大切にしながら静かに仕事をしたいタイプだ。子ども一人ひとりの個性を尊重して、丁寧に関わりたいという想いが強い。
Fi型にとって最もきついのは、派閥に巻き込まれることだ。どちらの味方かを迫られる場面が、Fi型の内面を破壊する。自分はどちらの肩も持ちたくないのに、中立でいることが許されない空気。
Fi型は表面上おとなしいから、派閥の人間から格好の取り込み対象にされやすい。あなたもAさんのこと、ちょっとおかしいと思うでしょ?──こういう同意の強制がFi型を追い詰める。同意すれば自分の価値観に反するし、否定すれば自分がターゲットになるかもしれない。どちらを選んでも自分の一部が壊れる。
保育士の離職ストーリーの中で、直接的ないじめではなくて暗黙の空気に耐えられなくなったという話がとても多い。これはFi型が最もダメージを受けるパターンだ。
弊社の診断でFi型と判定された保育士に聞いたところ、職場の人間関係がきつくなってくると、子どもの前で笑えなくなるのが怖いと答えた人がいた。子どもの前だけは本当の自分でいたいのに、大人の世界のストレスがそれを侵食してくる。この恐怖がFi型を離職に追い込む。
園選びが人生を左右する
同じ保育士でも、園の文化によってストレスの度合いは天と地ほど変わる。Fe型の保育士が、風通しの良い園に転職したら別人のように元気になったという話は珍しくない。
園選びのためのチェックポイントを挙げておく。解見学で職員室の空気感を見る。休憩時間に職員が自然に話しているか、それとも沈黙しているか。園長が職員の意見を聞く姿勢があるか。過去の離職率を聞けるなら聞いてみる。
これらのポイントを認知機能の見地から評価すると、自分に合う園の判別精度が上がる。Fe型なら風通しの良い園、Ti型なら保育方針を議論できる園、Fi型なら派閥がない小規模園を優先的に探すといい。
壊されないための防御策
Fe型はスイッチの切り方を覚える
Fe型の保育士に最も必要なのは、職場を出たら空気読みスイッチを強制切断する訓練だ。
帰宅後にあの先輩は何であんな態度だったのだろうと反芻するのをやめる。具体的には、職場を出た瞬間にイヤホンをつけて音楽を聴く、帰り道で必ず寄り道をするなど、物理的なリセット行動を型にする。同じルートで同じ行動をすることで、ここから先は職場の空気を持ち込まないというスイッチが自動化される。
Fe型は他人の感情をシャワーのように浴び続けるから、意識的に遮断しないと感情の過労死を起こす。これは大げさな表現ではなく、燃え尽き症候群の入口そのものだ。
Ti型は戦う場所を選ぶ
Ti型が保育観の違いで全戦全勝しようとするのは無理だし、やるべきでもない。
戦略的に選ぶ。子どもの安全に関わること、発達に悪影響を与える可能性があること──この2点だけは論理的に主張する。それ以外は相手のやり方に合わせる。
全部気になるのはTiの特性だから仕方ない。でも全部主張したら職場で孤立するだけだ。主張のエネルギーを最も重要なポイントに集中させることが、Ti型保育士の生存戦略になる。
ある元保育士でTi型の人が話してくれたのは、転職先の園では園長が保育方針を科学的に議論する文化を作っていて、それだけで天国だったということだ。職場の文化とTi型の思考スタイルが合えば、何のストレスもなくなる。つまり問題はTi型の性格ではなく、環境の側にあることも多い。
Fi型は物理的な距離を作る
Fi型が派閥から身を守る最善策は、物理的に距離を取ることだ。休憩時間をずらす、昼食の場所を変える、帰り道を変えるなど、接触頻度を下げるだけで巻き込まれるリスクは激減する。
もし派閥に同意を求められたら、私はよくわからないので──とだけ返す。肯定も否定もしない。つまらない返事だと思われるかもしれないけれど、それが一番安全だ。
保育の仕事が好きなのに大人の人間関係で辞めるのはもったいない。自分の感情処理パターンを知っておくだけで、消耗の半分は防げると思っている。
編集部の見解を追加する。保育士の離職問題が深刻なのは、保育士不足が社会問題になっているのに、離職の構造的原因に向き合う園があまりに少ないからだ。処遇改善も大事だけれど、人間関係が離職理由の1位であるかぎり、給料を上げても人間関係が変わらなければ離職率は改善しない。
保育園の人間関係の問題は、個人の性格の問題というより、構造的な問題だ。閉鎖的な環境、少人数の固定メンバー、感情を押し殺して笑顔でいなければならない業務構造──これらは個人の努力だけでは変えられない。だからこそ、自分がどのパターンで消耗しているかを理解した上で、環境の方を動かす判断が必要になる。
その判断を情でやるのか、論理でやるのかもタイプによる。Fe型は感情が先に動くから、辞めたいと感じてもその場の空気で踏みとどまってしまう。Ti型は論理的に決めたら翻さないから、発表した経緯が「急に辞めた」と周囲に感じられる。Fi型は一人で抑え込んだ末に限界を超えて、体調を崩す形で際んでくることが多い。
どのパターンであれ、最後は同じだ。自分の性格を知り、それに合った対処法を持っておくこと。それが保育士として長く働くための、最も地味だけれど最も効果的な投資だと編集部は考えている。
※本記事は自己分析のフレームワークであり、医療的アドバイスではありません。強い抑うつ、不眠、希死念慮等がある場合は医療機関や公的相談窓口への相談を優先してください。
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この記事を書いた人
塚田 崇博
Aqsh株式会社 代表取締役
人材業界23年、累計1万人超の面談経験を持つ。ソシオニクス・エニアグラム・ソーシャルスタイル等の性格類型学に精通し、採用・育成・定着を一気通貫で支援。
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